高原は殺人者のはずが一変して栄子を助けた英雄となっていた。しかも二人はこの出会いを縁に交際すると言っている。
城田英雄 その4
「城田さんちょうどよかったわ。私達8時00時発の特急で事件が起きるからって聞いていたから、二人で相談して6時30分の始発で乗ることにしたんだけど、本当にもう少しのところで二人死ぬところだったの。まだ心臓がドキドキして冷静にいられないけど城田さんのいうとおりだったわ。どれだけ感謝しても足りないわ。でも、その時何か不審に思うことがあるのよ。また落ち着いたら聞いてもらいたいけど、どこかで話せるチャンスってあるのかなあ。でもその騒動が防げたから電車を遅らせてこうして安心して乗ってるのよ。せっかく席が空いたから一緒にいても大丈夫、今は高原さんと一緒に居たいの。もう二人でこれを縁にお付き合いをしたいと思ってるの」
「僕だって、一人通路に立っているなんて、恥ずかしくて耐えられなかったよ。あーーあ助かった。栄子さんはとってもやさしい人だよ」
(元々知らない者同志だったのに、君たちは恥ずかしもなくこの状況で堂々と言えるよ。でも、よくお似合いだよ。栄子さん若くてきれいだし良かったなあ。
僕は始発電車で何が起こったのか、全然把握していないから、あの場所へ戻って確認してくるよ)シュワーーっつ 瞬間移動でその場所に戻っていた。
駅の構内がたくさんの人でざわついている。城田はこの乗客には存在すら分からないので、状況を聞く術がなかった。
その時、乗客から大きな拍手が起こった。高原が皆んなから称賛を浴びながら、新聞記者の写真に収まっていた。
栄子はその横でかすり傷のひじを撫でながら、自分は主人公ではないと少しづつ後ずさりをしながらその場所から逃れようとしていた。
城田はそれを察して栄子にその詳細を訪ねた。栄子の話によると、
「高原さんと待ち合わせをして3号車入り口の階段を私は一番に登り、高原さんが続いていたの。だから普通にスムーズに乗れたはずだったの」
(栄子さん、はずだったってどういうこと。何で高原君が祝福されているの。訳わからないよ)
「私もわからないけど、どうも私が階段から足を滑らせて落ちるところを高原さんが受け止めてくれて、一緒に倒れたんだけど、不思議と怪我をしてないのよ。普通だったらあの高さから落ちたら、私は頭を打って死んでいたってみんなが言ってるの。高原さんも大けがをして今頃救急車で運ばれて、入院しているはずなのに、二人とも全然痛くなかったの。高原さんが上手く倒れたから」
(でも。そのひじかすり傷がついてるじゃないか)
「これは傷に見えるけど、どこかに触って汚れたみたいで全く痛くないの。高原さんに助けてもらったから、怪我をしたふりをして大げさに振舞っているのよ。こうしないと折角助けてくれた高原さんのの値打ちがなくなるでしょ。
高原さんは相当痛かったみたいだけど、若いうちから柔道を習っていたおかげで、私をかかえるようにして倒れたから怪我が少なく済んだみたい」
急に栄子が何かを城田に伝えたいらしく、ここではいやと言う素振りをするので、売店横の物陰に隠れ、話しを聞くことにした。新聞記者達は高原の取材が済み。今度は栄子に向かおうとしたが当人がいないので、ざわついているのが分かった。
「実は電車に乗り込んだ時、すでに駅長が入口に立ってて、私を突き飛ばしたの、ちょうど後ろに高原さんがいて、受け止めてくれたから私助かったのよ。でも、駅長はこの男が私の上着を引っ張って引きづりおろしたって、大声で叫んだの。私は誰にも引っ張られていないと訴えて、後ろの人も高原さんがペットボトルを落としながらも私を助けた姿を皆んな見ていたので、誰も高原さんを犯人扱いはしなかったの。それでも状況の知らない鉄道警察隊の警察官が駅長の話を鵜呑みにして、高原さんに手錠を掛けて連れて行こうとしたんだけど、みんながこの人は悪くない。むしろ彼女を助けたと言ってくれて、殺人犯から一変して一躍英雄になったのよ」
栄子はそこまで話すと、新聞記者のいる人ごみに戻っていった。
城田はこの殺人事件を回避したことで、過去は変えられることが分かった。




