いよいよミステリーとファンタジーらしくなって行きます。高山図書館の新聞保管庫の新聞が異世界へと導きます。
城田英雄 その1
高山市福祉課長である城田英雄は五年前のある事件が気になり、時々その記事の切り抜いたファイルを見て、どうしてだろうと何度も見返して寝るのだった。
それは同期である当時税務係長だった高原達海の起こした事件である。
しかし、なぜかここ数日床に着くと、誰かが隣りにいるような気配を感じ、胸騒ぎで寝つきの悪い日々が続いていた。
やはり今夜も誰かがベットの傍らに立ち、テレビの音で聞き取れないような悲しい声で何かを訴えている。あれだけ楽しみにしていたドラマの最終回だったのに、城田は止む負えずテレビを消し、姿の見えない声の主に耳を傾けることにした。
(ようやく気づいてくれたのね。いつもテレビに夢中だったから、何度声を出してもちっとも分かってくれない。腹が立つほど無視されて、もうあきらめようと思ったけど、高原さんにどんなことがあっても、あなたに伝えてほしいって頼まれたから通い続けたの。やっとのことで思いが通じたわ。私もう疲れちゃった。
私5年前に殺人事件で死亡した清水栄子です。あなたが時々見ている新聞記事を改めて見ていただくと分かると思いますが、私の写真とともに、殺人の容疑者として高原さんの写真が一緒に載ってるでしょ。
新聞って罪なことするなって思ったのよ。だって事件が起きるたび、被害者と一番憎い容疑者の写真が一緒に載るなんて、あれが一番耐えられないのよ)そしてさらに続けた。
(もっともっと沢山話しがあるの。でも眠そうね。だけどもう少し我慢して聞いてね。
実はこれには秘密があって、高山図書館に新聞の保管庫があるでしょ。そこには毎日の新聞を日にち順に積み重ねてあるんだけど、例えばどこかの日付の新聞を広げたとき、ある事件でそこに掲載されている写真の人が、冤罪とかで事実と違う報道がされていた時、その記事に不満の持ってる人は、その記事を見た人だけに訴えることができるの。
先日知らない人が偶然私達のページを開いたまましばらく寝てしまったのよ。その時私と容疑者の高原さんが一緒になってそこから表に出られたの。私は高原さんに殺害されたと思っているから、そばに寄らないでって叫んだの。でも、高原さんが言うには、僕はやってない。はめられたんだと、取り調べの時も、家族が恥ずかしいから外にも出られない、本人に早く死んでほしいって言ってると、そんなことを聞いたら悔しくて悔しくて耐えられなくなって留置場内で自殺したんだ。でも、自殺できるようにロープが準備してあったんだ。おかしいだろって、
どうも警察の内部にこの事件に関わっている人がいるような気がする。でもこの寝てる人まったく協力してくれそうじゃないからどうしょうと話してる時、城田さんあなたが私を呼んだのよ。あなたが事件の記事をファイルに保存してくれてたのよね。そのファイルを机に広げたまま置いていたから私ここへ来られたの。でも、ここまで距離があるためかしら十分に伝えられないの。だからもっと詳しく話したいから図書館の新聞保管庫に来てほしいの。もちろん高原さんも一緒に話をするからね。 私達二人はゴーストみたいに現れるからびっくりしないでね。とにかく5年前の新聞の6月13日付けを開かないと私達出られないから。それだけはよろしくね)
「高原君は市役所の同期だったから分かるけど、殺人や痴漢なんかするやつじゃないと思っていたんだ。だから、時々ファイルを開いて、このもやもやした気持ちは何なのかと、いつも考えていたんだよ。絶対あいつの汚名を晴らしてやるからね。早速明日の朝一番に図書館に出向くよ」
城田はこの事件の糸口がようやく見いだせそうで、わくわくしながら眠りに就くのであった。
五年前の殺人事件には何か陰謀があり、高原達海の冤罪を晴らす為、城田英雄が活躍します。




