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 高山警察署の松崎警部補に呼び出された武山は、命に関わる重要な話が有ると聞かされるが、本人は関わりたくないようだ。

 武山裕人 その5

「武山君、高山署の松崎だ。今夜出られるかね。午後七時権現山峠のトンネル入り口で待つ」

「松崎先輩、そんな誰も行かない場所なんて、怖くて行けませんよ」

「だから、この間言ったじゃないか。どこかでこの会話を盗聴されていたりしたら、この計画が無駄になってしまうし、命だって保証されないかもしれないんだ」

「うわーーっ、僕はそんな恐ろしいことには巻き込まれたくはありません」

「何を言ってるんだ。今まで捜し求めていた人に出会ったんだ。それが君なんだよ。万引きして捕まえた知らない人に協力してなんて、こんな大事なことを頼めるかい。君だから、君しかできないから頼んでるんじゃないか。時間がないんだ。絶対に来なさい。そうでなければ逮捕します。あっは、これは冗談、じゃぁ待ってるから」

「ありがとう。来てくれたんだね。ここなら携帯の電波が届かないから大丈夫さ。ところで誰にも後を付けられたなんてことはないだろうな」

「先輩、最初からそんなに恐怖心をそそる話を聞くと、僕は帰りますよ」

「分かった、すまんすまん。あっ誰か来た。こんなとこ通る人がいるんだね。でもこのままトンネルを通ってもすぐ行き止まりになるんだよ。林道になるから。だけど誰だろ」

「武山、お前こんな所に何しに来たんだ」

「杉島君どうしてここに付いてきたの」

「もちろん、お前が心配だったからさ。何か怖いことに巻き込まれそうみたいなことちらっと言ってたじゃないか」

「松崎先輩、すみません。同級生で同じ職場の杉島君です。とても信頼できるいいやつです。心配はありません」

「杉島君、とても大事な話なんだ。君には関係ないから帰ってくれないか。そして、このことは絶対誰にも黙っておいてほしいんだ」

「どうして僕は聞いていけないんですか。ひどく冷たいんじゃないですか。せっかくこんなところまで来たのに、僕は世の中の不合理を正して行きたいと思っているんですよ。でも一人じゃ何にも出来ない。そんなとき武山と出会って分かったんだ。彼とスクラムを組めばどんなことでも立ち向かって行けるって」

「杉島君、君の気持ちは痛いほど分かるけど、武山君が体験したことは君には話せないんだよ。第一武山君だってまだ何にも知らないんだから、表向きは大したことではないかもしれないけれど、これからものすごく重要な展開が待っているんだ。命に関わることは当然、それを覚悟でとてつもない世界に僕たちは引き込まれていくんだ。頼む邪魔しないで帰ってくれ。そしてこの事は何にも無かったものとして忘れてくれ」

「分かりました。絶対武山を安全に帰してください。それだけは約束してください。じゃあ帰ります」

 松崎警部補は杉島が帰った事を確認すると

「武山君、実は後二人いっしょにきているんだ」

「え、それはどういうことです。三対一で僕を拉致しようとしてるんじゃないですよね」

「大丈夫、大丈夫、二人とも君の味方だよ。じゃあ紹介するよ。二人とも出てきてくれないか」

「こんばんわ。僕は梶今五月之介といいますが、移植手術で棚橋孝太郎君のからだを借りています」

「こんばんわ、僕は義理の兄で長谷川真一です」

「梶今さんの場合はまだ純粋の手術だったから何にも関係ないけど、武山君の場合は何らかの影響があるんだよ。

 ところで長谷川さんは市役所の係長だけどまだ君たちは職場が一緒になったことがないから知らないのかな。市役所内部の事ならこの人に聞いて動けば安全だから、頼りにしてるんだ。

 じゃあ時間もないことだし、手短に話すよ。臓器を提供した人には永遠の命が保証され、された人は健康で寿命を全うするというこの件については誰も反対する人はいないように見えるよね。ただ、今問題となっているのが移植手術をされた者の方なんだよ。実は、これには世界を征服しようとする闇の軍団がいると思われるんだ。どうして分ったというと、君は身に覚えのないことで自分がやったことのように、問いつめられるケースがあるんじゃないかな。先日のスピード違反のような、実はそういう人か゛ものすごく増えてきているんだ。だから、今はそんな程度で済んでいるけどそのうち本人の知らないところで恐ろしい犯罪を犯すことになるかもしれないんだ」

「それで、僕に何をさせようとしているんですか。僕にはまだ理解できないことが多すぎるし、やっぱり関わりたくないです。僕帰ります」

「ごめん、ごめん、ちょっとこちらもあせって話を急ぎすぎたよ。今日はこれくらいにして、明日もう一回最初からゆっくり説明するね」

 梶今五月之介が棚橋孝太朗の体を借りて出現する。

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