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 高山市役所高年福祉課で勤務する、武山裕人と杉島達也によるストーリーが展開します。

 武山裕人 その1 

「すまん、すまん、武山も一緒に食事いけばよかったのに、めずらしく課長がおごってくれたんだぞ。道挟んでチョット行ったところに、知らないうちにラーメン屋さんが出来ててさあ、帰り道と俺の家反対だから気がつかなかったけど、結構上手かったぞ。今度は一緒に行こうな。

 さーーてとパソコンの続きをやって早く片づけよーーっと。ところで、武山は都市計画課の後、支所に三年行ってたじゃないか。役所入ってから仕事がよく出来るやつだって聞いてたし、都市計画課ではものすごい評判で、さすがおまえだなと思っていたけど、清見支所に行ってから何にも活躍が伝わってこなかったけど、何やってたんだよ」

 福祉事務所の高年者福祉を担当する杉島達也は、春の人事異動で一緒になった武山裕人があまりにも覇気のない男になっていたのに不審に思い聞いてみた。しかし武山が答えないうちに課長の赤坂が帰ってきた。

「ただいま、あれーーっ、杉島君トイレに行きたいって言ってたから、先に行って待っていたのに、行かなくてよかったのかい。日曜日だってのに仕事させてすまないね」

「課長さん、ちょっと、武山と二人だけで話しておきたいことがあったので、すみません」

「武山君も食事一緒に行けばよかったなあ。何か元気ないみたいだし、腹でも調子悪かったのかな」

 やはり赤坂課長の目にも武山の様子が気になったようだった。

「いいえ、仕事で出てるんじゃないですから、僕のことは気にしないでください。昨日前任者の安田君と仕事の引き継ぎで色々説明して貰ったんですけど、福祉ってこんなに大変な仕事だということを、始めて知りました。よく安田君一人でやってたもんだと感心したんですけど、僕はまだ何にも分からないことばかりなのに、平気でこの土、日を休んでいたら月曜から大変になるような気がしたので、とにかく仕事をやり易くするために、勝手に机の整理をやってるだけなんです、だから心配しないでください」

 武山は本当は誰もいないところで、安田から引き継ぎで必死に書き留めたメモの内容を、忘れないうちに確認しながら整理しておくつもりだったが、課長と杉島が出勤していたので、内心不快な思いをしながら、もう帰った方が良さそうだとタイミングを待っていた。しかし、課長がそばにやって来て、机に両腕をつきながら言った。

「武山君、異動で代わった人は、誰もが最初から全部なんて覚えられるはずないじゃないか。どんなに前の職場で優秀でも、新しい職場では一年生なんだよ。そんなに焦らなくてものんびり無理しないでやったらどうだい。ところで、武山君は大変な手術したって聞いているんだけど、今は身体の方は大丈夫なのかい?」

「ええっ、課長さん、どうして知っているんですか。そのことは絶対みんなに内緒にしておいたはずなんですけど、おかしいな。僕は病気を理由にみんなに甘えたくないし、普通に仕事をしたいんで、どんなことがあっても、これ以上聞かないって約束してもらえませんか。そして、杉島君、君も頼むよ。いいだろ」

「武山、分かった。だけどお前とは同級生で成績ではライバルだったけど、あの頃はいろんなこと結構話したじゃないか。俺は家の都合で大学は行けなかった分、お前より早く市の職員になったけど、お前は早稲田の文学部、そんな学歴の者他にいないだろ。悔しいけどそれは仕方ないことだから今更言うことではないけど、絶対お前の時代が来ると思うんだ。だから無理をせず、俺だけには隠し立てせずに何でも相談できるようにしてくれよ」

「ありがとう、杉島君。同級生って有り難いね。でもこのことだけはやっぱり触れてほしくないんだよ。悪いね」

「よーーし、分かったよ。絶対に言わないことにするから。課長さん武山を守ってやってくれますか。学生時代は誰も近づけないほど優秀で威厳があったんです。この福祉でも何かやってくれるはずです]

 武山裕人も大きな手術を経験しており、臓器移植が関係してきます。

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