勉と一哉は警察学校の研修でパトカーに乗車中交通事故に会い、純一の体に臓器を移植された。
純一、勉、一哉の三位一体 その1
「わーーっ、真っ暗だ。俺はどうなったんだろう。今どこにいるんだ。おーーい、一哉どこにいるんだよーーぉ」勉が叫んでいる。
「勉君ーー、真っ暗で何にも見えないけど、ここにいるよーーっ。僕たちどこに迷い込んだんだろう」一哉も意識が戻り、勉を捜している。
「俺たち、確か二人は、福井県の警察官になって、警察学校の研修でパトカーに乗って市内を巡回中だったじゃないか。まさかと思ったけど、俺たちの横をバイクで併走するやつがいてさぁ。それが純一って分かって、お互い手を振って合図をしただろ。そうしたら後ろからものすごいスピードで、黒い車が俺たちのパトカーを追い抜いて行きやがったんだ。 そのときパトカーを運転していた教官が、純一を避けようとして急ハンドルを切ったんだよ。そしてそのまま歩道のガードレールに激突して、俺たち二人はその拍子に車から外に放り出されたんだ。
その後激痛でものすごく苦しかったけど、そこまでは何とか記憶にあるんだ。でもだんだん意識がなくなって、その後のことは何にも憶えてないんだよ」
勉の説明で一哉も納得したようだったが、この真っ暗な世界にいることがまだ理解できていなく、
「でも僕たち何でこんなところにいるんだよ。まさか死んだんじゃないよね」一哉は不安を募らせそして、純一のことが気になり呼んでみた。
「純一くーーん、純一くーーん、君はどうしてるんだよーーっ」まったく返事がなかった。
「あれーーっ、何も見えないけど、大きな拍手とか、ざわめきとか聞こえない? 何か演劇やってるみたいに」一哉が勉に聞いた。
「あれーーっ、俺たち以外にもう一人誰かの声が聞こえる。まるで刑事が犯人に職務質問をしているような会話してる。そして声が純一君みたいじゃないか。まさか俺たち純一君の体の中にいる何てことはないよな」勉が自分たちの状況にようやく気付き始めた。そして続けた。
「ということは、俺たち事故で死んじまったんだ。そして純一君の体に移植されたんだよ。俺たちはいずれ梶今さんのように、プロジェクトのメンバーに選ばれて移植の対象になり、そしてその代償として、永遠の命が与えられると秘密裏に聞かされたじゃないか。
それがもっと何年も先になるはずだったのに、予期せぬ事故で、こんなに早くなったんだよ。俺たち優秀だったから選ばれたんだよ。三人とも東大卒で、俺は理三の一位、純一君と一哉は文一の一位と二位だったろ。その東大のベスト3が今一つの体の中で合体しているんだ。すごいことじゃないか」
「でも、こんな真っ暗なとこじゃいやだよ」一哉は不安そうに言った。
「これから、訓練していけば純一君が見たり聞いたりするものが、俺たちにも見えてくるんだよ。そんなに焦るなって。演劇ぽいって分かったのは、とりあえず、音だけは知らないうちに分かるようになったからだよ。大丈夫すぐに映像も見えてくるって。
そして、一哉、俺は棚橋さんが移植手術を受けて、ただよかったって思うのじゃなく、その事に対して疑問を持ったり、研究をする姿勢が大切じゃないかって教えてくれたような気がするんだ。
純一の体に臓器を移植された勉と一哉、この三人は最強の人間となって今後三位一体として活躍する。




