棚橋孝太朗は警察内部で組織的に研究が進み、優秀な者だけを選別して永遠に残そうとするプロジェクトがあるのではと想像してみたが?
飛騨高山にて その13
ところで前からずっと疑問に思っていたことがあるんだ。梶今ってさあ。僕たちの体を使って、これからもずっと生き続けようとしてるんじゃないかって、もっと言うと、寄生して生き延びて行くんじゃないかって、例えば、僕たちいつかは寿命でみんな死ぬときが来るでしょ。今の時代は永遠の命なんてもらえるわけでもないし、百五十歳も二百歳も生きた人なんて聞いたことないでしょ。しかし、長く生きられる方法がある訳よ。この中の誰かが死んだとき、この移植された臓器がまた誰かに移植され、ずっと生きていく訳よ。 移植された人は普通に何も知らずに健康になったと感謝しながら、命を全うして満足する訳だから、こちらは何にも問題ないでしょ。
その代わり臓器を提供した人には、永遠の命が保障される権利が与えられるなんて事になったらすごいと思わないかい。
もしかすると、警察内部で組織的に研究が進み、優秀な者だけを選別して永遠に残そうとするプロジェクトか何かに梶今が選ばれたのではと勝手に想像してみたんだ。
移植された臓器は登録してあるので、皆んなが亡くなると分かるとすぐに、また次の人に移植するように準備してあるんだよ。次の人というのはすでに誰って決まっているんだよ。梶今の奥さんは移植のことは聞かされているのですか」
孝太朗は話の途中で梶今ひとみに質問をした。
「実は、今から言うことは皆さんには悪いけど、この家を出るときには記憶から消え去って何にも憶えてないことになるので安心して話すわね。孝太朗さんが話していることはほぼ正しいのよ。よく推理できたと感心しています。
私の主人とはいつか体は違っても再会できるように保障されているの。私も誰かの体に移植されるよう登録されています」
「やっぱりそうでしたか。ひとみさんがいつも平然としていて、連れ合いを亡くした人とは思えない気丈な人と初めは思っていたのですが、失望感が全く伝わってこなかったのでもしやと思い想像してしまいました。とにかく移植された人は優秀でなくてもいいし、短命でもかまわない。だから僕たちのような平凡な者に移植されたって訳、やっぱり梶今って優秀なやつだったんだなぁ」
ピーポー、ピーポー、ピーポー
「救急車が家の前に止まっているよ。」惣太郞が外で叫んでいる。
「うっ、くるしいーぃ」
「 どうしたんですか、棚橋さーん。しっかりしてください」一哉や勉が駆け寄った。
「どうも、想像していたことが本当のようです。私は知りすぎたみたいです。皆さんはもうこれ以上深入りしない方が」孝太朗は死んだようにぐったりした。
「大丈夫よ。孝太朗さんがあまりにも知りすぎているので、病院に運んで記憶を確実に消すために救急車で運ぶだけだから。心配しないですぐ帰って見えるわ。皆さんの知らないところで時代は進んでいるのよ」ひとみは落ち着いてもっと飲みましょうと促した。
勉と一哉と純一達は秋田先生の事件で、何となく想像していた件が現実に行われていると実感したのだった。
まだ闇の軍団が企てる陰謀は明らかにされていない。




