梶今五月之介は、婚約者のひとみと待ち合わせた赤い橋中橋で、両親に会うかどうか問答の末、決意した二人は、ひとみの兄と共に実家に出向きます。
梶今五月之介 その2
「結婚かあ、いいなあ。もう決まった人がいるんだ。うらやましいなあ。あなたの彼女だったら、きっとかわいい人だろうな。やがて見えるんでしょ。どんな人かちょつと興味もあるけど、一緒にいたらやばいですから僕退散しますね」
「かまいませんよ。あはははーーっ、でもあなたが知ってる子だったらびっくりですけど、そんなことないか」
会話が弾む中、背後から若い女性が走ってきた。
「五月之介さーーん、お待たせしました。あれーーっ、この方はどちら、げーーっ、お兄ちゃんじゃない。どうして五月之介さん、なんでお兄ちゃん知ってるの」
「うそーーっ、お兄さんだったの、僕が早く着きすぎたんで、たまたま通りかかったお兄さんにここで出会って、桜の咲く時期なんかいろいろ聞いていたんだよ。なんか初めてだけど、めっちゃ気が合いそう」
「彼女って妹のことだったの、僕はひとみの兄の長谷川真一です。高山市役所の観光課に勤めております。いつも日曜日は観光名所の古い町並みを散策しながら、行きつけの喫茶店で、モーニングサービスの軽食とコーヒーを楽しんでるんです。ところで、ひとみ、この人と結婚の約束してるんだって?」
「えーーっ、五月之介さんのバカ、もうそんな事しゃべったの。こんな小さい町だからすぐ広まるのよ。あーーぁ,あーーぁ、合う早々心配事増えたじゃない。お兄ちゃん、お父さんやお母さんには絶対言わないでよ」
「ひとみ、俺はこの人を気に入ったよ。さっきからお前の結婚相手なんて知らないでいろいろ話していたけど、ちょっと話しただけでとってもいい人だって分かったよ。せっかくいいチャンスだから、家へ寄って、お父さんやお母さんに顔を見せたらどうだい」
「ダメよ、お父さんなんかまだ早すぎるーーって、絶対反対するわよ。お母さんだって、お父さんの言いなりでしょ。学生の身で何考えてるの。結婚相手は卒業してから、私達がいい人ちゃんと探してあげるからなんていうのがオチよ。そんなこと聞かされたら五月之介さんの立場ないでしょ。だから会わせる訳にはいかないわよ」
「バカだなあ、ひとみ。俺ってお父さんの何歳の時に出来た子供だと思ってんだよ。十九歳って知ってるだろ。お母さんが十八歳で俺を生んだんだ。学生時代に出来ちゃったから、あの頃はそんな二人を常識の無い不謹慎極まりないって、世間から後ろ指を指されて、よほど辛かったみたいだよ。それでも負けないで俺を育ててくれたんだ。だから反対するわけが無いじゃないか、逆に絶対喜ぶと思うよ。こんないい人なら、ひとみが幸せになれるって安心してくれるよ。早く合わせてやりなよ」
「五月之介さん、お兄ちゃんあんなこと言ってるけど、会って見る? 私は構わないわ。でもやっぱり反対されたらどうしょう。 自分達がそんな経験してたら、私にはあんな辛い目に遭わせたくないって言わないかしら。こわいわ」
「ひとみさん、僕たち何も悪い事してる訳じゃないから、僕は今から会いに言っても大丈夫だよ。今度何時来れるかも分からないし、今ご両親と結婚の仮契約しておかないと、ひとみさん若いから、心変わりが心配だし」
「ひどいわ五月之介さん、私のほうが好きになったんだから、大丈夫に決まってるでしょ」
「ひとみ、もうケンカなんかして、これから先そんな事では心配になるじゃないか。こんないい人手放しちゃったらあとどんなに後悔しても、取り返しがつかないんだぞ。
五月之介君、とりあえず近くの駐車場に車を止めていますから、一緒に乗って僕達の実家まで行きましょう」
主人公の梶今五月之介の他、前半のミステリーに登場する5人のうち女性3人は遅れて登場しますので、しばらくは男性3人のエピソードで話が進みます。