いよいよ臓器移植を受けた5人がそろい、テレビの画面に映る景色で、事件の真相に近づいてきた。
飛騨高山にて その9
「みなさん揃いましたかーーぁ。熊本の五反田玲奈さん、主治医の今井淸治先生聞こえますか。これから僕の指示どおりにお願いします。まず梶今さんちにいる四人の方、アナログテレビの前に正座してください。そして念じてみてください。松本の日影さんと平塚の棚橋さんは出来なかったんですね。じゃあ僕の言うとおりにやってください。
まずは正座をし、両手を膝の上に乗せ、深呼吸してください。二~三回やってみてください。あとの二人も合わせてみて」
「私達二人はそんなことしなくてもできるからいいでしょ。あとの二人は本当にできるかやってみてよ。できなかったら何の為にまた集まったか分からないじゃない。頼のみますよ、若くないんだから」
茜の言葉がみんなの心に突き刺さった。
「茜君まだやれないって決った訳じゃないし、やってもいないうちから傷付く言い方やめてくんない」
孝太朗はムッとして言った。
「まあまあその位にして、じゃ真剣にやります。大きく息を吸って、口を細めてできるだけ長く吐き出します。そして肺に空気がなくなるまで全部吐き出してください。ハイというまで続けてください。それから今度は思い切り息を吸い込みます。この時、目、口、鼻、空いているもの全て大きく開いてビックリした顔になるよう、この時に発するエネルギーで起きる電磁波で画面に映像を写し出すのです。若い人はこんなことしなくても体に一杯エネルギーが溜まっているけど、年齢が過ぎると、こうして強制的にやらなければ出来ないんです」
「苦しーーい、ハイって言わないから、息を吐き続けていたら酸欠状態で失神するとこだったよ。たのむよ、続けてやってよ」
孝太朗は真っ赤な顔で言った。
「分かりました。じゃあ続けてやりますよ。先ほど説明したところまでやって、全部息を吐き出したあと思い切り息を吸ってください。超ビックリ顔でね。さあ、何回も続けてやりましょう」
「プーーッ、棚橋さんの顔、あっはははは日影さんの顔もおかしすぎて見てられないよーっ」
茜は腹をかかえて笑っている。
「だめでしょ。真剣にやってよ、プーーッ、ダメ私もおかしすぎて腹もいたいし、あはははは、がまんできないおしっこちびっちゃった」
「おほほほ、おほほほ」「五反田さん笑ってますよ。あれー、脈拍の数値上がっています。どうして正常になったんだろう。五反田さん、気分はどうですか、つらくないですか」
主治医の今井先生は驚いている。
「いいえ、あれーーっ、体が軽くなって随分楽になりました」
五反田が元気になって答えた。
「不思議なことがありますね。皆さんのパワーをいただいて五反田さんの病状が回復しているようです」 今井先生は、首をかしげていた。
「あれーーっ、今まで時々痛かった腎臓の辺りがなぜか軽るくなって元気になったみたい。皆んなもそうじゃない。五反田さんが調子よくなったから私達も治ったんだよ」
茜が両腕を突き上げてやったーーと喜んでいる。
「テレビの画面何か写ってますけど何かバラバラじゃないですか。皆さんの並ぶ順番にルールがあるみたいですね」一哉が言った。
「そんなこと考えなくても簡単だよ。テレビに向かって縦に体の上から臓器の順に並べばいいのさ。どうして大人って分からないのかなぁ」
惣太郎もいつの間にか参加して言った。
「惣太郎君の言葉を信じて、まずは心臓の純一君、次は肺の茜君、そして肝臓の僕、棚橋で、すい臓は日影さん、腎臓は五反田さん、あれ五反田さんは、とりあえず、パソコンの画面を最後に並べます。皆さん驚かないでくださいね。3D映像です。どうですか」
「わーーっ、すごい!立体映像で五反田さんが実際にここにいるみたい」皆んな驚いた。
一哉が心配そうな顔をしてテレビを見た。どこかの景色がきれいに写り出された。すると横から惣太郎がのぞき込んで
「お母さん、これってお父さんと釣りに行ったところだよ」
「じゃーーぁ、あの日のことが今から分かるんだね」孝太朗が期待感を持って話した。
熊本の五反田玲奈は病気の症状から外出が不可能だったが、パソコンによる3Ⅾ映像で参加することが出来た。




