純一は勉に臓器移植を受けたことを告白し、メッセージパワーの身に付け方の協力を依頼する。
飛騨高山にて その8
「純一君、えらい急な電話だったそうだけど、何があったんだい」
「勉君、実はすぐ来てくれって一方的な電話だったけど、半信半疑で集合場所の飛騨高山に行って来たんだ。君とはずっと一緒だったし、僕のこと一番分かっていると思うし、これからも大切な友達でいたいから本当のことを話すけどいいかな。そして協力してもらいたいことがあるんだ。二年間学校から姿を消したのは臓器移植手術を受けたんだ。中学一年になって気が付いたんだ。毎日体が疲れるんだよ。みんな元気に走ったりしている時自分も同じ様にできると思って、ずっと無理して合わせてきたけど、だんだん体力がついて行かないことが分かったんだ。そして病院で検査をしてもらったんだ。そしたら心臓が異常に肥大していて、緊急に手術をしなければ助からない状況にまでひどかったらしいんだ。
ところが運よくドナーの人がすぐ見つかって手術を受けたんだよ。入院は半年で充分で経過もものすごく順調で、三年生の時は普通に学校へ通えるくらい回復していたんだけど、大事な体だから無理をしないように養護学級には中学を卒業するまではいさせてと頼んで、結局病院に二年間いだんだ。
勉強はきらいだったけど、体力ではみんなに負けるから、みんなに勝てるものといったら勉強しかないと一生懸命頑張ったんだぜ。
ところがそのドナーだった人が今、全国ニュースで話題になっている梶今五月之介という人で、殺人の容疑を掛けられているんだ。臓器移植を受けた人は僕と共に五人いるんだけど、熊本の病院に入院中の人は来られないので、今回集まったのは四人なんだけど、絶対彼が犯人じゃないと思っているんだ。
その中の一人中学生の女の子がものすごく気の強い子で、梶今さんのメッセージパワーを自分だけ感じているんだけど、他の人はまだそこまでのレベルに達していなくて、もちろん僕も同じさ。だからそれを感じる力をどうしたら身に付くか一緒にやってほしいんだよ」
純一が協力を依頼した。
「そう言うことだったんだ。君も随分苦労したんだね。よし、それなら協力するよ。パソコンの技術に関しては東大生顔負けの男がいるんだ。君もよく知ってる田中一哉さ。そいつも呼んでいいかな」
勉が自分のアパートでやろうと一哉に連絡をした。
「じゃー、僕のいうとおりにやってね。まずテレビの前正座して両手をそれぞれひざの上に乗せてごらん。そして目をつぶって静かに息を吐き出して、とにかく力を抜いて肺の空気を全部出すつもりで、その後思い切り空気を吸うんだよ。そして同時に目と口をガバーッと大きく開けてごらん。まるでビックリする顔をするように、これを何回もやっているうちにテレビの画面に変化が出てくるはずだよ。もちろん頭の中でもイメージして念じなきゃだめだよ。若い人なら割と早く出来ると思うよ」
「しまった。テレビはアナログでないと写らなかったんだよ、この地デジじゃだめだよ」
純一が気がついた。
「そうか、俺さ、まだアナログ対応のテレビゲームしか持ってないんで、ゲームやる時はとなりのアナログテレビでやってるんだよ。よかった。じゃあ持ってくるからね」
勉は一哉に手伝うように言った。
「あっ本当だ。できた、できた。でも画面では五分の一しか写ってないよ。だから五人揃わないと意味がないんだ。勉君、これを言っていいのか分からないけど、君を信じているからもう話すよ。一哉君はあんまり分からないと思うから聞き流してくれ。実は僕の両親が誰か確信はないんだけど、飛弾高山へ行って、今何んとなく佐藤先生と秋田先生じゃないかって思い始めているんだ。きっと若いころに出来た子供なのかもしれないんだ。まだ結婚してなかった頃に、この件については今度くわしく話すよ」
勉はおどろいた。でもあの小学二年生のおぞましい、あの思い出を今言ってしまっては純一が動揺し、今の大切な時間がムダになってしまうので、表情を変えない様に必死にこらえていた。
「一哉君、もし他の人が出来ていなかったとしても、もう一度梶今さん宅に集合した時この方法ならすぐできるのかい」
純一が念を押した。
「少し時間は掛かるけどみんな間違いなく全員できると思うよ」
一哉は自信ありげに答えた。
「じゃー四人はOKとして、五人目の人がかなり重症で体も動かせない人らしいよ。その人高山へ連れてこれないじゃん。そうしたらどうすればいいのさ」
「そんなこと簡単じゃん。連れ出さなくてもネットを使えばすぐできるじゃないか。君達何んにも知らないんだね。ベッドの枕元にパソコンを据えて、その人をカメラで写してその画像をこっちのパソコンに送ってもらって画面に写し出せばいいんだよ]
「じゃー、メッセージパワーはどうするんだよ」純一が心配して言った。
「それは四人のパワーで呼び起こすのさ。僕を一緒に連れて行ってくれたら何でもやってあげるよ。もちろん飛騨高山なら食べ物のおいしい店も連れてってくれるだろ、純一君」 一哉はパソコンでは誰にも負けない自信があるので、何の心配もなく遊び感覚でいる。
「一哉、今人の命や人生が掛かっている大事な時なんだ。だからお前はいつもいい加減に安請け合いするけど、俺達だけの話ならいいけど、集まっているみんなの前で、出来なかったらごめんなさいだけでは済まないんだ。心配だから俺も一緒に行ってやるよ。飛騨高山はいつかは行きたいと思って居たんだ。近くて遠いところ、学生じゃなかなか行けないからな。観光地だから見たいところが一杯あるけど、おいしいものにも興味があるし、絶対俺も行く!」
「なーんだ勉君だっていい加減じゃん]
有梨純一のメッセージパワーは、勉と一哉の協力により身についた。




