5人目は熊本城南病院に入院中の女性と分かったが、状態がよくないため外出は無理、しかし、全員がそろわなければ意味がないので、何か手立てを考えなければならない。
飛騨高山にて その7
「そういえば、今熊本市と交流が深まりつつあるんですよ。実は加藤清正公と高山がとても深い縁があるんです。孫の光正公という方がおりまして、江戸城で事件を起こして改易の罪で高山に流されてきたのです。熊本市ではこの加藤清正公のNHK大河ドラマ実現のための署名運動を行っていますが、高山も光正公のことを取り上げてほしいと市民の方々が署名活動を一生懸命やっているんですよ。
そう言えば、そのこともあって光正公の顕彰会ができて、その会長に梶今五月之介さんがなっていたんです。とても一生懸命に取り組んで見えましたよ。
光正公と一緒に高山に流された時に同行した家来の子孫は奥様と聞いていましたけど、署名活動に力を入れてましたね。あんなことになって、本当に気の毒でした。
私も彼とはつい先日、全国交通安全週間のキャンペーンで、ご一緒させていただきましたが、とても誠実な方で、あんな事件を起こすなんてとても考えられません」
「市長さーーん、大変です。議会の始まる時間がとっくに過ぎて議員さん達が騒いでいますよ」
「あっしまった、怒られるぞーーっ。えらいこっちゃ、えらいこっちゃ申し訳ない。今日はこのくらいでよろしく」市長はあわてて議事堂へと走っていった。
「ねえ、事務の方、市長さんに高山の姉妹友好都市のこと聞いたんだけど、もう一ヶ所、日本のうちで高山市と親しい都市を上げるとしたらどこなの」茜が聞いた。
「私が個人的に上げるとしたら、うーーん皆さんのところに子供会ありますか。中学生までの子供達を対象に交流を図る目的で、それぞれの町内にあっていろんな活動しているんだけど、私の小さい時からずっと愛知県の刈谷市と交流が続いているのは知っているけど、それぐらいであとは分からないです」
「うーん、刈谷市か、それも候補のひとつね」茜がつぶやいた。
「ここでずっと話している訳にはいかないよ。職員の方にも、お客様が見えた時迷惑になるから一旦外に出て、どこか喫茶店にでも入って話そうか」
孝太朗は解決の糸口に少しづつ近づくのが、嬉しくなって来た。
西園寺幸子は奥村忠志に携帯で連絡を取り、熊本市と刈谷市に移植された人がいるのではないか早急に調べるよう連絡した。
「あっ、携帯、だれかしら、奥村忠志さんからだわ。何か分かったのかしら。はい西園寺です」
「幸子さん所在が分かりました。あなた達の熱意でほぼ完ぺきに正解でしたよ。五人目の人というのは五反田正男といって実はやっぱり僕と早稲田時代の同級生で、愛知県の刈谷市で大きな事業を営んでいたそうですが、奥さんの移植手術後交通事故にあって亡くなったそうです。そのため奥さんの実家で治療することになって、熊本城南病院に入院中ということが分かりました。でもあまりよくない状況なので外出は無理らしいですよ」
「でもその奥さんも、五人の一人として加わっていただかないと、とにかく全員が揃わないとダメって茜が言ってるのよ。何かいい方法ないかしら」
「それはとてもむずかしい話です。本人を連れ出す訳にはいかないし」
これで移植を受けた全員の所在が分かった。




