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 西園寺茜の母幸子からの連絡で、棚橋孝太朗の臓器提供者は早稲田の同期梶今五月之介と分かり、飛騨高山へ向かった。

 棚橋孝太朗 その7  

「あのーーっ、平塚物産さんですか。そちらに棚橋孝太朗という方がお見えになると思いますが、連絡したいことがあるんですけど」

 西園寺幸子は年齢的に近いのでこちらの連絡を任された。

「はい、確かにおりますが、どちら様でしょうか。まだ退院して間がないので電話に出れるかどうか本人に確かめますのでお待ちください」

 受付の事務員の女性が出て答えた。

「えーっ、そんなに良くないんですか。どんな状態なんですか。実は私の娘も同じ人から臓器移植の手術を受けたんですけど、その事で連絡をしたいことがあるんです。急いでいるのでお願いします」

 幸子は孝太朗が電話に出られないと言って済まされる話ではないので、余計なことまで話してしまった。

「まさか、棚橋専務が臓器移植の手術をしたなんて、全く聞いていません。驚きました。じゃあ代わりますね」

 受付の女性のうろたえている様子が見えるようであった。

「代わりました。棚橋孝太朗です。今聞きましたが、あなたの娘さんも僕と同じ手術をされたんですか。会社には移植手術の件は内緒にしてたもんですからきっと大騒ぎになりそうです。ところで用件は何でしょうか」

「娘は順調に回復しておりますけど、時々腎臟の辺りが痛むらしくて、この時はもう死んでもいいよって感じになるって言っているんです。あなたはどうですか」

「全くその通りで、やっと今その症状で横になって休んでおりました。もう死んでもいいよと思うほどつらいんですけど、五分もするとけろっと直っちゃうんですよ。

 そしてね。何か分からないんですけどテンションが高くなったとき体の中で何かを訴えているような、たとえば自分でない誰かが私に何かのメッセージを伝えたくって、せき立てるような脈動が激しくなる時があるんです。その時は自分でもびっくりするような能力を発揮する事があるんです」

やはり茜と同じ症状で孝太朗は悩んでいた。

「実は臓器を提供してくれたのは、今ニュースで話題になっている飛騨高山の警察署長の梶今五月之介さんなんですけど、娘と調べたいのが、その方が一生懸命何かを伝えたいんじゃないかって思ってるの」

「えーーっ、まさかあいつの臓器をもらったって、あいつとは早稲田の同期で、あんな正義感の強いやつは他にいなかったんですよ。

 だからこの症状が私たちに何かを伝えようとしてるんですね。それでこれから私達はどうすればいいんですか」

「他の方にも連絡を取っているところですけど、急な話ですが早速飛騨高山の梶今さん宅へ来てほしいんです。一人でも揃わないと意味がないんです。だから絶対来てください」

 西園寺幸子は念を押すように言った。

「分かりました。至急準備をして高山に向かいます」

孝太朗は同級生から貰った臓器で生かされていると分かって、自分が中心に動かなければと自覚するのであった。

 平塚物産の専務棚橋孝太朗も梶今五月之介からの臓器移植で、西園寺茜と同じような症状で悩んでおり、早速飛騨高山へ集合することとなった。

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