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 西園寺茜は、県立越前西高等学校の生徒、有梨純一に期末テストの最中に、大至急飛騨高山に集合するよう、連絡する。

有梨純一 その7 

 リーン、リーン、けたたましく職員室の電話が鳴った。

「はい、こちら県立越前西高等学校です」

 職員室の留守番を預かる教頭の脇淵昭夫が受話器を取り電話に出た。

「そちらに生徒の有梨純一君いますか? 」

 若い女性の声だったが、教頭は

「はい、おりますが、期末テストの最中なので、呼ぶことはできません」

と断ると、さらに女性のきつい声で、

「いるんなら早く呼びなさい。大事な話があるの。早くして! 」

 教頭の話には一切聞く耳を持たず女性は焦っている。

「でも、テストを棄権したら、志望校の受験が出来なくなっちゃうのに」

 教頭も純一にとってこのテストの重要性を知っているので、本人を呼ばずとも今が大切と伝えたかったのである。

「そんなことよりもっと大切なことなの。とにかく早くしてよ! 」

 女性はさらに焦っている。

「えらく強引な人ですね、じゃぁ分かりました。呼びますから」

 教頭も何か訳が有ると悟り、純一を電話口まで呼んだ。

「あなた、有梨君? 時々おなか痛まない? 」

 知らない女性から突然の質問に純一は戸惑いながら

「時々って、この頃頻繁に痛むようになってきたけど、どうしてあなたはそれを? あっイタタタタ」

 この痛みのことは純一がずっと気にして来たが、病院で検査してもいつも異常なしで、担当医師から理由が分からないと言われていた。

「こっちも同じよ。あっイタタタタ。でしょ、分かった。だから大至急飛弾高山まで来て」  女性の一方的な命令に、どうしてそんなところへ出向く必要があるのか純一には全く理解出来なかったし、このテストには自信を持って挑戦をしていたので、

「えーーっ、今、期末テスト中なんですよ。これを受けなかったら大学受験に影響するじゃないですか」

 純一はもういい加減にしてとでも言いたげに話を打ち切ろうとしていた。

 「へーっ、じゃーあ、あなたの命より試験の方が大事なんだ」

 女性の脅しとも取れる言葉に純一は早くこの場から逃れたいと思いつつ、

「何のことか分かりませんよ。会ったこともない人から。急にそんなこと言われても」

 純一は女性の焦りに比べ、気持ちも冷静さを取り戻していたが、女性はさらに命令口調で、

「とにかく、時間がないの。大至急飛騨高山駅に来なさい。電車でも何でもいいから。分かったら返事は? 」余りの強引さにに純一は負けて、

「はい。はい。行けばいいんでしょ。行けば」

「はい。はいって何よ。返事は一回、はい。だけでいいの。これから気を付けなさい。じゃあ待ってるから絶対来るのよ」 

 純一は一人で電車に乗る機会は今までなかったし、まして、もしこのまま信じたらもっと大変なことに巻き込まれるのかもしれないと心配を抱きながら、教頭に断り電車に乗るのだった。

 臓器の移植受けた人は西園寺茜と同じように体の異変を感じていることが分かり、臓器提供者からの何かのメッセージではないかと強引に飛騨高山へ集合するよう連絡する。

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