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日影直美は手術により出産出来るまで、体力が回復してきた。

 日影直美 その2 

 日影幹男の優しさに支えられ、どうにか四十歳まで頑張ってきた直美であったが、身体的な悩みを除けば二人にとって、こんなにも長生きできたことに感謝しながら、毎日幸せな日々を過ごしてきたのだった。

 ある日直美に転機が訪れ、彼女は手術によって今まで知らなかった、健康な者しか味わうことの出来ない世界を体験することになるのである。

「おとうさん、話したいことがあるんだけど聞いてくれる」直美はかしこまって幹男に話し掛けた。

「なんだよ急に、どうかしたのかい、分かった。いいから話してみろよ」

 幹男は直美の手術は命がけで挑戦したので、今後何か異常があっても仕方ないと覚悟はしていたが、かしこまって言われると、もしそうであったとしたら、一人では耐えられるかどうかドキドキしていた。

「実はね、私、妊娠したみたいなの。この間から吐き気がするので母に相談して受診してみたの。そしたら間違いないって、もう三ヶ月に入ってるって」

「えーーっ、お前それはものすごくうれしいけど、体力的に無理に決っているよ。子供はあきらめるんだな。もしも、お前に何かあったら今まで何のために働いて来たんだよ」

「だけど、おとうさん、お腹の子供は自分を幸せにしてくれる親を選んで生まれてくるってお医者さんが言ってた。四十歳は高齢出産かもしれないけど、先生が全面的にバックアップするから心配しないでって。だから私は産みたいの。いや絶対産むわよ。だって体めっちゃくちゃ調子よくなってるの。ほら、ジャンプだって」

「バカ! 流産しちゃうじゃないか。分かったよ、無理なことはやめてくれ。まだ時間はあるだろ。二人でもう少し考えてみようよ。でもあの日ちょっとお前をまたいだだけなのになぁ」

「それにしてもお前さあ、どうしてそんなにブスになったんだ。俺は確か世界中で一番きれいな女を嫁にしたんだけど、ちょっとガッカリ!」

「おとうさん、それはないと思うよ。もしあのままきれいでいたらとっくに死んでいたかもしれないのに。自分でも鏡を見るたび、汚い顔してるし、ぼてーーっとして格好悪くなった。それは認めるけど両親の顔みたら期待する方がおかしいんじゃない。とにかく子供は産ませていただきます」

「直美、お前強い女になったなぁ」


日影直美も移植手術を受けた一人である。

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