西園寺茜は同級生の奥村綾香から臓器の提供を受けたのは、殺人の疑いを掛けられている高山警察署長からだと脅されるが、茜本人はまだ真実を知らない。
西園寺茜 その2
「茜、ふふふふ。あなたのすーごい秘密知っちゃったの。これをみんなにばらしたら、どんなふうになるのかなぁ。ふふふふ」
「何よ、気持ちの悪い笑い方して。そんなのよしてよ」
「あなたは何にも知らないから、そんな風に平然としていられるけど、この事実を知ったらショックで立ち直れないわ絶対に。うふふふふ」
「じれったいわね。何よ早く言いなさいよ。どうせ大した事ないくせに、もったいぶったりして」
「あーーあ。そこまで言うんだったら言ってやるよ。顔も見たくないほど嫌いだから、もう一度養護学級へでも何処へでも行きゃいいのよ。そしたら私はそれで充分満足なの」綾香は続けた。
「こないだの連休で家族そろって飛騨高山へ行ってきたのよ。電車で高山駅に着いたらちょうどお昼で、道中ずっと寝てたくせに、弟がおなかが空いたって大きな声で騒ぐのよ。
パパもママも私もずっと座り放しで疲れて、食事はもっと後でいいと思っていたけど、仕方なく駅の近くに出来た新しいホテルのレストランを見つけて、とりあえず中に入って何を食べようかみんなでメニューを真剣になって見てたのよ。
そしたらテレビのニュースで高山の殺人事件ってやってたのよ。私はこんな人の良さそうな人たちばかりの高山でも事件があるんだって、気になって見てたの。そしたらパパが急にえーーって大きな声で叫んだから、他のお客さんもびっくりして、私もパパどうしたのと聞くと、殺人の容疑者となっているのは現職の警察署長で大学の同級生だって、でもすでに亡くなっている人なんだって。
そして話はここからよ。この人は事件の現場で意識不明の状態で発見されたけど、救急車で病院に運ばれても意識は回復しないで、約一ヶ月後に脳死と判定されたの。本人は生前臓器移植に関心が有って、家族も本人の意思を尊重したいと臓器の提供を承諾したの。 ここが大事なとこよ。
臓器は全国の五つの病院に移送され、それを待っていた五人の患者にすでに移植手術が行われたけど、右の肺が山形県の上山市立市民病院で若い女性の患者に移植されたの。パパはその病院の事務長をしてるから何でも分かるのよ。
何を言いたいか分かる。パパがまさかあんたと私が同級生なんて知らずに身内だからって安心してしゃべったって訳よ。つまり若い女性ってあんたの事だったのよ。あんたの体には殺人犯の血が流れがれてるの。これで分かったでしょ。誰にもばらされたくなかったらこれからは私の言うことを聞くことね。うふふふふ」茜がショックで休学するだろうとほくそ笑んだ。
「何言ってるの。私移植の手術なんて受けてないもん。肺に人工の管を入れたから今こうして元気にいられるってお母さんが言ってたし、根も葉もないことを言うのは止めてよ」
「まあ見てなさい。これが事実だったら、私の仲間の前で土下座して、何でも聞きますと宣言するのよ。当然養護学校逆戻りってことよ。すぐ実現する話ね。早くママに確認しなさい」
手術の後まだ回復が遅れており、クラスの中ではいじめの対象となっています。




