梶今五月之介はひとみと結婚式を済ませた後希望により岐阜の駐在所勤務となり、地域の愛されるお巡りさんとして活躍する。
梶今五月之介 その5
五月之介とひとみの結婚式は、高山市内にある宮川中橋沿いの高級料亭『津崎』で行った。来賓には警察庁から五月之介の父正之進の同期3名と、高山署から署長以下3名の出席をいただき、総勢20名とこじんまりとした披露宴となったが、役者がそろい、大変盛り上がり、五月之介二人も大変思い出に残るひと時を過ごしたのである。
父の正之進も岐阜に3年の勤務を終え、警察庁に戻ることとなった、逆に五月之介は新婚生活は岐阜で過ごしたいとの希望が叶い、本巣郡池田市にある駐在所に勤務することとなったが、大変のどかなところで、元気な男の子と女の子惚太郎とさとみもいつしか小学3年と1年に成長していた。
五月之介は故郷のない東京に育ったため、幼いころは自然に触れる機会が少なかったせいか、見たことのない蝶や昆虫に魅せられ、巡回の途中でもパトカーを道端に止め、しばらくその正体が分かるまで、身動きもせず観察を続けるのだった。
そして、子供たちが学校から帰ってくるのを待ち、夕飯までの1時間、毎日駐在所横の裏山に登って探検することが楽しみの一つになっていた。いつも日曜日の駐在所は近所の子供たちや大人のたまり場で、にぎやかな笑い声が絶えず、五月之介は地域の皆んなから愛されるおまわりさんになっていた。近所の子供たちはこんな田舎でも時代の流れで、正月のお年玉で買ったテレビゲームに夢中になっていたが、惚太郎とさとみは全く興味がないようで、もっぱら学校の図書館から借りる本や図鑑に夢中になっていた。
しかし、ゲームで遊ぶ子供たちは、新しい商品を次々購入してはすぐに飽きるという繰り返しをしていた。
それを見た親たちが処分するにはもったいないからと不要になったものを、家から次々と駐在所に沢山届けてくれ、今のうちに慣れておかないと仲間外しになるからと、惣太郎やさとみに無理やり押し付ける形となったが、いざやってみると吸収が早いのか、駐在所の中ではいつしかゲームの達人となっていた。
こんな静かな町でも年に数件の事件が起き、時には五月之介が逮捕し連れてきた男が、近所の住人の顔見知りだったりすると、男は終始うつむいたまま黙って何も言おうとしない。近所の住民達もめったにないテレビドラマを見てるようで、ドキドキしながら、誰も帰ろうとしない、本署から警察官が駆け付け、手錠をかけてパトカーに乗せるときには、住民たちはパトカーの周りを取り囲んで、割れんばかりの拍手、「五月之介さーーん。すごーーい」子供たちも皆んなが「ぼくも、わたしも大きくなったらおまわりさんになりたい」と口をそろえて言うのを聞いても、きびしかった東京の話をすると子供たちの夢をこわすことになるので、「成績が良くないと成れないから学校の勉強はしっかりとして準備をしておくといいよ」と答えるようにしていた。
今回もまだ日常の生活が続きます。




