西園寺茜は養護学校から普通学級に転校してきたが、手術をして経過も順調でクラスのリーダーに成長した。
西園寺茜 その1
「先生、どうして茜がまたこの教室に来てるんですか。去年の春、二週間いただけでもみんな迷惑したでしょ。授業も集中できなかったし、私は絶対この人とは一緒にいたくないし、大事な受験の邪魔されたくないわ」
奥村綾香は何でもすぐ口に出す性格で、今まで多くの人が傷付けられてきた。
「奥村、お前はいつも、人の気持を考えずに発言することが多いが、みんなお前の言動に傷付いているんだ。
今の西園寺のこともまだ先生が説明していないうちから、早とちりしてダメじゃないか。 いいか西園寺は確かに去年の春は二週間しかいなかったし、みんなも多少気を使ったりして、授業にも影響があったかもしれない。
本人も体調がよくならず、残念だったけど、元の養護学校に戻ってしまった。
しかし今手術をして経過も順調で病院の先生も、いつでも普通の学校への編入はオーケイと太鼓判を押してくれたんだ。
まだとても走ったり、重いものを持てないとは思うけど徐々に馴れて、やがてみんなと変わらない生活が出来るはずだ。だからしばらくはみんなで支えてやってくれ。
その経験が人を思いやるという大切さを知る、お前達にとってこれから社会に出た時必要な、大事な勉強のひとつになると思う。奥村お前も頼むぞ」
川上先生は手術の内容は両親から聞いていたが、本人には内緒にしてほしいと聞いていたので公表はしなかった。
茜は人数の少ない養護学校の、元気なんて無縁の世界から、活発な中学生の教室に突然放り込まれた感じと、以前いた二週間はあまり居心地が良くなかったことなど、戸惑うことばかり、ましてや養護学校の授業は治療に専念していたので、皆んなから遅れを取っていた。
しかし茜は保育園、小学校時代は男の子に引けを取らない活発な女の子で、よく綾香と衝突することがあった。
綾香は、茜が休日になるといつも両親と一緒に車でドライブをしたり、買物に出掛けたりする姿をしばしば見、それに比べて自分の父親は仕事に追われ、母親もスナックを経営しているので、家族で出掛けるなんて夢の話。夜はいつも、一人で過ごすことが多く、その為、茜に対する嫉妬がエスカレートして、今はいじめの標的にしようとしているのだった。
国語の時間になると、教科書を順番に読む授業では、茜はいつも一文字づつたどたどしく読むので、クラスのみんなが正直いらついたのも事実であった。
しかし茜は努力した。そして日に日に体も順調に回復し、何故か別人のように知的な顔になり、綾香はかわいいと評されていたが、それを遥かに上回る女優のような風貌になり、みんなが驚いたのは、英語を聞くことも話すことも知らない世界にいる人間が、まるでアメリカ人そのままで、流暢に話せるようになったこと、声が透き通るような美声で、いつしかクラスのみんなのリーダーとして成長していくのである。
いよいよ女性の登場です。手術をして経過も順調、さてどんな手術を受けただろうか?




