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有梨純一と木ノ下勉の小学生の思い出、勉には殺人事件という恐ろしい光景を目の当たりにする。

 有梨純一 その4

 約束の日がやってきた。教室では静かだった純一が、人が変わったように元気になり、勉より先に目的地に向かった。そして、お決まりの頂上で時間を過ごし、その日は川へは行かず、同じ道を帰ることにした。途中久しぶりに道を外れて昆虫や花を探そうと、それぞれ別々の藪へ入っていった。しばらくして、純一が叫んでいる。

「つとむくーーん、つとむくーーん、はやく、はやく、きて、きてーーっ」

 勉も珍しい花をちょうど見つけたところだったので、

「じゅんいちくーーん、こっちもめずらしいはなをみつけたんだ。こっちにこいよーーっ」

「はななんか、にげていかないじゃないか。こっちはとんでいったらにどとみえなくなるんだ。とにかく、なんでもいいからはやくきてくれーーっ」

 純一のあまりの迫力に圧倒され、勉は仕方なく純一の呼んでいる藪の中へ入っていった。

「うわーーっ、これはハチドリじゃないか。がいこくしかいないのに、どうしてにほんなんかにいるんだよ」勉も驚いて叫んだ。

「そうだ。ぜったいハチドリだよ。よーーくみてごらん。くうちゅうにとまったまま、はなのみつをすってるよ。すごいね」

 二人はしばらく身動きも出来ないままひたすら見つめ、逃げる様子もなく、蜜を吸い続ける不思議な物体にくぎづけになっていた。

「つとむくん。あれーーっ、どこをみてるんだい。そろそろどこかへいってしまうかもしれないのに、つとむくんたら」

 純一は必死に勉の気を引こうと呼び続けたが、勉はその呼び掛けに反応できず、ただ茫然としている。純一からは草が生い茂り、見通しのきかない場所だったが、勉は草の隙間から、すぐ真下に公園のトイレがよく見えた。

 勉は何気なく見下ろすと、ちょうど男にむりやり引き込まれるように、女がトイレの裏側に連れてこられたのである。声は聞こえないが、何かけんかをしているような雰囲気である。

 すると、男はいきなり女を壁に押しつけ、キスをしたかと思うと、女の胸のボタンを引きちぎり、シャツを破いて、乳房に吸い付いた。女は体をねじり逃れようとするが、さらにスカートとパンツが下ろされ、今度は男が自分のズボンを下ろし、勉が見たこともない男と女の関係を見てしまった。

 しばらく男と女は抱き合ったまま、身動きもしないで立っていたが、突然男がスローモーションのようにゆっくりと、ひざから崩れ、そして地面に叩きつけられるように仰向けに倒れた。

 よく見ると女の手が真っ赤に染まり、ナイフを持っている。女は予め用意していたナイフで男の下腹部を刺したのである。

 男は腹を押さえてエビのように体をくねらせていたが、次第に動きが鈍くなり、ついに動かなくなってしまった。

 女はトイレに入り、しばらくすると何事もなかったように、スカートもシャツも元通りに着直し、上からコートを羽生ってチラッとこっちを見上げたような気がした。

 その時勉は驚いた。今年新任の秋田恵美子先生だと、しっかり確認出来たからである。そして倒れている男は服装から間違いなく、勉達の担任、佐藤石太郎先生と確認できた。その男の下半身は露出し、そそり立ったものはまだピクピクしていた。

 勉は顔面蒼白で、純一の呼びかけに気づかないほど、恐ろしい光景に遭遇してしまった。

 純一は、勉が急に体調が悪くなったのではと気遣い、早く家に帰ろうと促して家路を急ぐのだった。

少しずつミステリーに発展する物語が顔を出します。

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