臓器移植で世界征服を企てる闇の軍団、手始めに選んだのどかな町、飛騨高山を舞台に、殺人事件の容疑者となった警察署長の無実を証明する為に繰り広げられる、ミステリーそしてファンタジー
梶今五月之介|⦅かじいまさみのすけ⦆ その1
観光客で賑わう飛騨高山、その市街地を流れる宮川に、朱色の欄干がひと際鮮やかな中橋、こころのふるさと飛騨高山の景色として、この地を離れた市民がまず思い浮かべるのは、この宮川と中橋ではないだろうか。
そして、この四月寒かった長い冬から開放され、水墨画に収められた町並みの見飽きた季節に、少しずつ彩を添えながら、人々が待ち焦がれた春の高山祭りが、やがて繰り広げられようとしていた。
たまたま通りがかった地元と見受けられる若者に、都会のにおいを感じさせる、さわやかな身なりの青年が尋ねた。
「あっ、すみません。飛騨高山に初めて来たんですけど、中橋はこの赤い橋ですよね?」
「はいそうです。この宮川に掛かる橋が中橋で、高山の中心になるんですよ」
「有難うございます。ちょっと時間があるので、少し川べりを歩いてみたんですけど、いろんな魚がたくさん泳いでいますよね。なんか自然がいっぱいって感じ、東京にいると普段忘れてしまっている景色です」
青年はジャケットを脱ぐと、ひょいと右の肩に掛けながら、まるでマドロスのように、欄干に片足を乗せて空を見上げた。
若者も青年のまねをしてジャンパーを脱ぎ、欄干に片足を乗せようとしたが、足が届かず踏み外してよろけそうになった。それでも気付かれないように、空を見上げながら話を続けた。
「やっぱり、東京からお見えだったんですね。垢抜けした感じでそうじゃないかなって思いましたも、そうそう2週間もしたら高山祭りに併せて、地元の市民憲章推進団体や漁業協同組合などが協力して、この川にきれいな色の錦鯉が放流されて、もっと華やかになるんですよ」
「へーーっ、いいなーーぁ、やっぱり高山祭りに併せて休みを取ればよかった。ところでまだ桜のつぼみは固いですよね。こちらの開花予想はいつ頃なんですか?」
「そうですね、やっぱり春の高山祭りのあたりが一番見ごろになります。飛騨地方では梅の花も一緒に咲いて、とてもいい季節なんですよ」
「有難うございます。実はこの赤い橋で彼女と待ち合わせをしているんですけど、僕の方が早く着いちゃったみたいなので、時間を持て余していた所なんです。あなたに会って話をしているうちに約束の時間になりました。もうそろそろ彼女が来てもよさそうなんですけどね」
青年は、キョロキョロっと辺りを見渡し、まだ来ていないことを確かめると続けた。
「彼女も僕に祭を見せたいって言っていましたよ。そしておいしい食べ物もいっぱいあって、特に飛騨牛の『串焼き』や『お寿司』そして『クレープ』も人気で、是非紹介したいって言ってました。
祭りには僕の仕事の調整が付かなかったので、止む無く今日になったけど、おいしいものを食べられるんならそれだけで充分満足です。やっぱり飛騨高山はいいですね。こんな綺麗な町に住んでいる人は幸せだなあ」
青年は寒かったようで、ジャケットを羽織りながら、姿勢を正した。
「意外と住んでいるところの良さは、住んでいる人には分からないものですね。観光でお見えになるお客様は、いい町だと褒めてくれるんですけど、私にはどこが良いのかさっぱり。ところで、彼女も『東京』の方?」
「いえ、彼女は飛騨高山出身なんです。私は去年大学を卒業して就職をしましたけど、同じ大学の後輩で二個年下なので今年四年生です。でも早いかもしれないんですけど、結婚の約束をしているんですよ。
父が言うには、この人はいいと思ったら、それこそタイミングだ、もたもたしてないでどれだけでも早く決めたほうがいいぞって。
彼女も早く結婚を希望しているみたいで、私の実家を見せたいから是非来て欲しいって何度も説得されて、ようやく来ることができました。
でも家族の人たちに会うにはまだ早すぎるので、遠くから気付かれないように、チラッと見るだけにしたいんですけど」
70歳になりましたが、現役で仕事をしています。それでも定期的に入退院を繰り返すので、子供達から気がまぎれる趣味を持ったらと勧められ、過去に書きかけのまま忘れていた小説を改めて書き直しました。
最初は、ミステリーと言いながら、平凡な話からスタートします。また、登場人物も数多く登場しますので、気長に読んでください。
才能の無い者が作った作品ですので、恥ずかしいのですが、『面白い』なんて評価をもらえたら、うれしくて病気も吹っ飛んで寿命も延びそうです。
どうぞよろしくお願いいたします。