初めての彼女は年上美人で〇〇でした。
本作品に興味を持っていただきありがとうございます。
友達のとあるツイートを切っ掛けに急いで書き上げたものとなっております。
かなり久々の読み切り作品ですので、とても不安ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。
「一緒に仕事していて、ずっと凛さんの事が気になっていました!……付き合ってください!」
俺は生まれ初めて告白というものをした。その初めての相手がバイト先の1つ年上の大学の先輩の青海 凛さんである。
見た目はおっとりそうな風貌なのにいざ一緒に働くと、豊満な体からは想像出来ないほどのキビキビした動きや、従業員への細かな気配り。
気付けば俺は凛さんを目で追う事が多くなっていて、そして今日、想いがとうとう溢れてしまい告白していた。
きっと断られるだろうと思いながらも、内心ドキドキしていた。凛さんならきっと彼氏がいてもおかしくなかった。
それでも、期待してしまうくらい凛さんの事が好きなんだと更に気付かされる。
いつもの休憩室のはずなのに、別の空間にいる感覚もしてきた。
(さぁ……!断るならこっぴどくフッてくれ!情けはいらぬ!)
緊張のあまり脳内では謎に武士口調になってきた俺に、凛さんがいよいよ告白の答えを口にした。
「はい……っ!」
まさかの成功だった。
(これで、念願の彼女が……!いやっほぉぉぉぉーーーー!)
心の中ではまさに大歓喜だった。さっきまで武士口調だった脳内とは思えないくらいのはしゃぎっぷりだった。
が、しかしだ。
「……ドッキリとかですか?」
自己肯定感の低い俺の悪い癖が出てしまった。
今まで何人かの女の子に告白されたことはあったが、もれなく全員
「ドッキリでした〜」
「お前なんか誰が好きになるかよ!」
と引っかかった俺を嘲笑ってきた。
もうそんな思いをしたく無いという思いがつい先行してしまい、自分から告白しているのにも関わらずドッキリであるかの是非を聞いてしまった。
(あー……せっかくのチャンスだっていうのに何してんだろ俺)
そしてまた俺は自己肯定感を更に低くする。負の連鎖である。
「安心して、フミヤくん。ドッキリじゃ無いわよ」
慈愛に満ちた表情で俺を見つめる凛さん。
「え……っ?それ……じゃあ?」
「これからよろしくね、フミヤくん」
「は、はい!!」
思っても見なかった現実に俺はタジタジだった。
まさか、ずっと目で追いかけていた先輩が自分の彼女になるなんて……!
そんなことを考えていると凛さんが上機嫌で言葉発する。
「でも、まさかフミヤくんから告白してくるなんて思わなかったなぁ〜」
「えっ、そうですか?」
「だって、わたしから告白しようと思ってたんだもの」
「…………え?」
今日は驚きの連続である。まさか、凛さんが俺のことを好いていてくれてたなんて。
「ねぇ、バイト終わったらさ、時間ある?」
妖艶な雰囲気を醸し出しながら俺にすり寄ってくる凛さん。
「あり、ますけど……」
俺は、ゴクリと生唾を飲み込む。
付き合い始めた初日に……なんてことは無いと頭では分かっているが色々と多感な年頃の俺に、考えるなと言うのは酷だろう。
そんな色々と葛藤している俺に凛さんが放った言葉は……
「私の部屋、来ない?」
そのまさかだった。
「ぜひよろしくお願いします!!」
気付けばお辞儀をしていた俺。
「あはは、何それ〜。それじゃあ、後で家の住所を君のライムに送っとくね」
凛さんは俺の返事がおかしかったからか、言い終わってからも笑っていた。
「あれ?一緒にはいかないんですか?」
凛さんの方が終業時刻俺より一時間早いとはいえ、てっきり待っててくれるものかと思っていたので、つい聞いてしまった。
「女の子にはね、色々と準備が必要なのよ」
凛さんは女の子の事情を可愛い仕草で軽く教えてくれた。最後にウインクされた時は、胸が破裂してしまうかと思うほどとてつもなく可愛かった。
「色々、ですか」
「そうよ〜。それに君だって、色々準備必要でしょ?」
「色々って……例えば?」
彼女がいたことのない俺には、俺がしなきゃいけない準備など検討もつかなかった。
健全な男子ならすぐに思いつく事を、色々と恋愛に臆病になってた俺には出来なかった。
「そこは君が考えなきゃ〜。っと、そろそろ休憩終わりだね」
フッと、軽く微笑むと凛さんは休憩室を後にした
俺もそれに続いて休憩室を後にして残りのバイトに専念しようとしたが、その後のことが気になり過ぎてまともに集中出来なかった。
何度も単純なミスをしつつも最後の方には何とか持ち直すことができ、無事今日のバイトを終えることが出来た。
その際に、同じ時間にバイトを終えた友人のマサルにそれとなく
「女の子の部屋にお呼ばれした時って、どうしたらいいかな?」
と聞いて見ることにした。
彼女が出来たとも、今から女の子の部屋に行くとも言ってなかったのだが、マサルは無言であるものを俺の手に握らせた。
「……あの、これは」
「持っとけ。後は何も言うな。サイズが合ってなくても文句言うなよ?」
「いやそう言うことじゃなくて」
「あと、香水はコンビニでもいいからつけてけ」
一向にこっちの話を聞こうとしないマサルに思わずキレそうになった、その時だった。
「おい?少しは俺の話も……、って何で泣いてんだ?」
唐突にマサルが涙を流し出したのだった。
「いや、色々と……女子たちに騙されてきたフミヤにもとうとういい相手が見つかったんだなぁって思ったら、なんか自分の事の様に嬉しくてさ」
「マサル、お前……」
こんなにも友人に心配されてたとは思わず、感謝の気持ちを伝えようと歩み寄る。
「だからさ、フミヤ。落ち着いたらその彼女の友達紹介してくれな?」
「よし、これ返すわ」
「あーーー!ゴメンて!!冗談だから!!!」
「ったく」
マサルとこんなやり取りをしてる内に気付けば、緊張が解れていた。
「それじゃあ、俺行くわ」
「おーう。頑張れよ」
解れた緊張がまた固まらない内にと俺は別れを簡単に済ませ、急いでコンビニへと駆け込んだ。マサルのアドバイスに従い、今日だけの為に1000円くらいの香水を購入し、店を出るや否やその香水を2、3回ほど吹き付けた。
慣れない匂いで一瞬、ウッときたが次第に慣れていった。
そして、その後は急いで凛さんからのメッセージに書かれていた住所へと向かったのだが
「でっかぁ……」
着いた先は高層マンションだった。見上げても最上階が見えないほどである。
その凛さんが住んでいるであろうマンションを見上げていると
「迷わず来れたみたいね」
「あっ、凛さん……ってその格好で出てきたんですか!?」
「どう?こう言うのは、嫌い?」
バイト先で見るようなキッチリした服ではなく、ピンク色のネグリジェの上に大きめのブランケット軽く羽織っているだけの無防備な姿で凛さんがマンションの入り口に立っていた。
「誰かに襲われたらどうするんですか!」
そう言って俺は、彼女の羽織っているブランケットの上に更にジャケットを被せる。
「ちょうどフミヤくんが来るって分かってたから平気よ。それに一応セキュリティは万全だから」
「そうは言っても」
いくら、万全にセキュリティを強化しても凛さん自身がしっかりしないとダメなのでは。そんなことを考えていると
「でもこうやって無事じゃない。それに……」
「それに、何ですか?」
「そっちは喜んでるみたいだけど?」
ジーーーっといつのまにか肥大化していた俺の股間に凛さんの熱い眼差しが注がれていた。
一体これはなんて言うプレイなんでしょうか?
「ち、違うんです!!」
証拠が目の前にあると言うのに、俺は思わず否定する。
「まあまあ、気にしなくていいの。……それより、早く部屋行かない?私もう我慢できないの」
そう言って、俺の腕に凛さんが抱きついてくる。
いくら羽織るものがいるとは言え、前方は布一枚。
その状態で抱きつかれて理性を保っていられるほど、女性免疫が俺には伴っていなかった。
「凛さん、俺……その……っ!」
何とか彼女を襲いかかりたい衝動を押さえ込みながら、凛さんに訴えかける。
「ふふっ、ゴメンね。それじゃあ、部屋まで案内するから着いてきて」
一通りからかうことが出来て満足したのか、彼女はアッサリと腕から離れた。
俺はホッとしながらも、もっと柔らかな彼女の胸の感触を堪能したかったとガッカリしている俺がいた事に驚いた。
そんな俺は凛さんの後を歩きながら、ポッケの中にある“ゴム”をギュッと握った。
結局、マサルに返し忘れた“ゴム”を……。
「部屋に入れる前に、先に1つ言っておくわね?」
一階にある角部屋の前に着くと、鍵を取り出しながらそんなことを言い出した。
そして一拍して、玄関の鍵を解錠させると同時に力強く言葉を発した。
「今日は……帰さないから……!」
「え、それって……」
まさかマサルが言った通りになるとはと、色々と期待を膨らませながら凛さんの部屋へと入った。
真っ暗で、入った時は何も見えないが甘ったるい香りがして、妙に眠くそれでいて下半身が熱くなっていく感じがした。
何だこの感じは、と違和感を覚え始めた時部屋の電気が点いた。
「……何ですかこれ」
目の前には、俺とよく似たぬいぐるみやキーホルダーが飾られていた。
「何ってそりゃ、フミヤくんグッズだけど?」
「……すいません、急用が」
「帰さないって、言ったわよね?それに、君が準備万端なの知ってるんだから」
「何の、ことですか?」
俺はもう色々と恐ろしかった。
「マサルくんから、ゴムもらったでしょ?」
「んな……!?」
どうしてそんなこと知ってるのかと。
一瞬だけ、マサルが凛さんと手を組んでたという線も考えたが、あの涙が嘘だとは考えたくなかった。
この考えもお見通しだったのか
「マサルくんは悪くないわよ。だって、私はただ盗み聞いただけだもの」
と、ニッコリと笑いながら答える。
「盗み聞いたって、どうやって」
「それは、ヒ・ミ・ツ」
休憩中の時に見せてくれた仕草と同じものだったが、今の俺には恐怖にしか感じなかった。
「それじゃあ、長い長い夜を始めましょうか」
結局、俺には普通の恋愛なんて無理なのかもしれない。
そのことを、今日身をもって知ることが出来た。
最後までお読みいただきありがとうございました。
楽しんで頂けましたでしょうか?それとも物足りなかったでしょうか?
些細なことでも構いません。
ぜひ感想などを残していただければ幸いです。