第五話 最終話ー3
と、そんな中、今度は急に彼がそわそわし始めたか?
「おい、後でお前が銃を持った写真を送れ。いいか、必ずだぞ。必ず送れよ!」と言った途端、すぐに駆けだした。遠くの方で大学のホールへと歩いている女生徒が見える。どうやらその彼女がお目当てのようだ。彼は、「ち、ちょっと待ってくれ! セイラ、セイラちゃ~ん」と叫んでいた。
やれやれ、付き合いきれないねぇー。僕は本心から呆れた。そのため、もうゲイブのことを考える気もしなくなり、目の前に落ちている拳銃だけでも片づけようと思って、ゆっくりと手を伸ばした。
ところが、その時だ。「痛っ!」その馬鹿でかい筒を持った瞬間、異変が起こった。何故か電気のような刺激が全身を駆け巡ったのだ!
僕は驚いて銃を放り投げた。そうして暫く間、まじまじと眺め、何だったんだろうかと思案した。だが、変調はそれだけではなかったことに気づく。その後、自分の心の中にも、不思議な感覚が芽生えてきたのだった。
甚だ理解に苦しむのだが、別の意識が心の底から湧き上がってくるような、否、もっと激しい変化かもしれない。今までの人格を全否定されたのち、新たなものへと上書きされる――まるでこの時こそが、真の自分が生まれ出でた瞬間だと思えるほどの――そんな精神の激変を体感するに至ったのだ!
つまり、これは……〝覚醒?〟どうやら僕は、目覚めたようだ!
「ふっふっふっ、なるほど、これがそうなるべき宿命だったという訳か?」
僕はすっくと立ち上がった。それから、手を広げてまじまじと自分の体を眺めた。そして大いに確信する。もうこの場にひ弱な少年などいないということを!
するとその直後、無意識のうちに思いも寄らないことを口走っていた!
そう、何故なら僕は……
「ミカエルめ! 次に会う機会を楽しみに待っておれ、必ず八つ裂きにしてくれるわ」
――その名もキヴァ、サマエルの息子だったのだァー!――




