第五話 最終話ー1
最終話(第二章プロローグ) 新たな聖人たち……
《今日も日差しが眩しい麗らかな一日だった》
「さあて、昼飯でも食べようかな」
僕は大学のキャンパス内にある、芝生が敷き詰められた庭に腰を落とし、のんびりとした気分で携帯式転送調理器具を作動させた。
「ええと、メニューは何かな?」
それから、器具が食べ物を形作り始めたところで、お昼の献立が気になったので前面の液晶モニターを垣間見た。
すると、『チキンのフライに温野菜のサラダ』という文字が表示された。
僕は思った。(いつもの健康的な食事ですね)と。
そしてその後、あっという間にビームの照射が完了し、食べ物として実体化されてプレート上に現れたので、僕は無心になってチキンを頬張った。この瞬間こそが至福の時間だ、と感じながら……
ところが、その時だ。「よっ、ビースティ、今日も元気そうじゃねえか」と言って前触れもなく大きな影が覆い被さってきた?
おっと、また現れたようですね。しかも、「ほう、いいもの食ってんな」と言うなり、僕のランチを奪い取るという傍若無人さを見せつけたじゃないですか!
ほんと、いつもいつも鬱陶しい……
僕はすぐに、「勘弁してくださいよ。ゲイブ先輩」と文句をつけた。
けれど、自分より一つ先輩――かなり大柄で、どちらかと言えば霊長類顔の〝やさしい人〟――ゲイブ・ミラーは、やはり一筋縄ではいかなかったみたいで、逆に横柄な口ぶりで言い返されてしまう。
「いいじゃねえか。もう一度、調理器を始動させれば済むだろ」と。
(うううっ、うっ? 確かに、そうですが)
……と思ったが、いやいや、違うでしょ。[おっと、危なく納得しそうになる]それだと、また僕が使用料を払う羽目になる訳で、僕が損するじゃないですか。だったら、(それが常識ですから)そのお金をくださいよ! と大声で言ってやりたかったが、結局は話しても通じる相手ではないので飲み込むことにした。
(――全く、何て人だ!――)
僕は仕方ないと諦めて、二度目のインプットをした。これでどうにか、彼とのごたごたは終われそうだと考えながら……
だが、そうはいかなかった? まだ何か用があったみたいで、彼はがつがつと食べながら、
「むぐむぐ、うっく……それでな、雑貨市場でお前に似合いそうな物を買っておいてやったぞ」と言って少し大きめな箱をカバンから出し、それを僕に手渡した。結構重い、ちょうどB4サイズ位の大きさで厚みのある化粧箱だ。
(また変なことを企んでいるな)僕は直感した。
そこで、「これが、どう似合うんですか?」と尋ねてみた。……が、何故か、はぐらかして「いいから開けてみろ」とだけ答えた。
気乗りはしないが、ここは早く終わらせるためにも、ちょっと付き合うしかないようだ。僕はそう思い、一先ず蓋を開けてみることにした。
そうすると……あっ! 一瞬驚いた。そこにあったのは、何とも大きな拳銃だ! それも銃身がかなり長く、そうだな、全長で自分の握った拳から肘ほどまで、三十センチはゆうに超える代物が、ちょうど箱内の凹凸に合わせて上手い具合に納まっていたのだ。
「どうだ。お前にぴったたりだろう? ええっ、でもよ、高かったんだぞ。五十ドルもしたんだ、五十ドルも!」
「何言ってるんですか、五十ドルって、昔の物価じゃないんですから。今食べてるランチと同じじゃないですか。それにこんな拳銃を買って……。どうせひ弱な僕に、全然似つかわしくない物を持たせて、またからかうつもりなんでしょ」
やはり、そういうことだろう。すぐに彼の意図を見抜きましたよ。そして、その抗議を聞いた彼の方も、「ごめいさん」と素直に認めたのだった。




