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第三話 恐怖のシナリオー6

 それから、数秒が経過した……

 すると、漸くマハザエルが姿を現す。

「けけけっ、ガブリエルともあろう者が他愛無いけえ」と言って、倒れ込んだ彼女の位置から数メートル離れた場所で、その顔に微笑みを浮かべながら緑色の醜い体を曝けだしたのだ。

 だが、これで満足した訳ではなかった。止めを刺す必要がある、と決意していたからだ。

 そこでマハザエルは、鋭く尖った大きな鈎爪を立てて、すぐにギャビーの元へと近づいていった。この指先の凶器を使って、彼女の急所であるへそを切り裂こうという魂胆なのだ。

 ただ、そうは言っても……多少の警戒心も持たないといけない状況か?

 何故なら、ふっと前世のことを思い返したなら、確かガブリエルは他に武器を持っていたような気がしたからだ。とはいえ、それは遠い昔の記憶なのではっきりしない。加えて、己の爬虫類脳はごちゃごちゃ考えるのが苦手で、細かいことを気にする性質たちではなかった。そのため、いつの間にやら警戒心も薄いまま、彼女の側へ真っ直ぐに近寄っていた。つまるところ、マハザエルの思考は、もうギャビーを仕留めること以外、受け付けられなくなっていたということだ。

 よって後は、決行あるのみよ! 緑色の魔物は覚悟を決めた。彼女に向かって、大きく腕を振り上げたなら――哀れギャビーも、これで最後かッ!――己の鋭利な鈎爪を、突き刺したのだァー?

――甲高い金属音が鳴り響いた!――ところが、「ごげッ!」何と、失敗した? マハザエルの爪が翼のエッジで受け止められたではないか! そう、やはり危惧した通り、ギャビーは特殊能力を隠し持っていたのだ。

 そして、それを目の当たりにしたことで、「げげ、まずい! そうじゃ、そうじゃった」緑色の魔物も漸く思い出す。〝彼女の翼が超合金並の強度があり、しかも縁は刀のような切れ味だったことを〟

 となれば、これ以上の攻めは危険極まりない。すぐさまマハザエルは、退くことを決断した。……と言いたいところだが、「げげげッ?」駄目だ! 時すでに遅し、一瞬で体を翻され、「ぎやーー! チ、チクショウゥゥー」まさしく、手痛い反撃を受ける羽目に……。マハザエルの尻尾が根元から一刀両断、切り取られてしまったかァー!

 こうなると、当然ながら緑色の魔物も焦った。尾を失くし、全身のバランスが崩れたせいで前のめりに転びそうな醜態を曝け出そうとも、必死に逃げようとした。

 するとそこに、「馬鹿なカメレオン男。あんたの貧相なモノで、あたしが降参するわけないでしょ」という罵声を彼女から浴びせられたうえに、マハザエルにとっては分身のような尾を――胴体から切り離されても、まだ不気味にうごめいていたが――まるで生ごみでも扱うかのように、荒っぽく投げ捨てられてしまう。

 まさしく、侮辱的な扱いを受けたのだ。

 とはいえ、今は憤慨している暇はない、退散することが先決。故に、もう一度、姿を消そうと試みる。……が、その瞬間、はっと気づく。どうやら今度は無理そうだと。何故なら、尾を斬られては――切断面だけは虹色素胞がないため、その部分が背景に溶け込まない――完全なる擬態はできなかったからだ。

 弱った! これは全くの想定外だ。マハザエルは慌てて思案した。

 そして、考え抜いた末に、

「ギギッ、エギン。おいらを助けに来い!」と叫んだ。頼りの従者を呼び戻し、逃げ出そうという策を選んだのだ。

 そうすると、ただちに大コウモリが宙を滑空して姿を現したか?

 これでどうにか、逃げおおせる、と緑色の魔物は踏んだ。

 ところが……それも、甘い見通しだったような? おつむの弱い爬虫類でも、そう簡単にいかないかもしれないと懸念し始める。というのも、ギャビーがその逃走を阻もうと、今にも飛び上がろうとする体勢で待ち構えていたからだ。そのうえここで、大コウモリの様子までも、おかしいことに気づく。何かが、絡みついているかのような飛び方をしていた。

 それなら、もう一度よーく覗き込んでみると、「……げげっ!」何と、別の白い翼が、大コウモリの背後で重なっていたという。

 まさしく、あれはレイフか? 彼もまた、エギンと空中で戦っている最中だったのだ。

 こうなると、明らかに四面楚歌だ!

「ギギッ、弱ったけえ。あいつがいては無理だベ」結局は、到底逃げ切れないと悟らされただけだった……

 マハザエルは、消沈した。

 しかし、実を言うと……まだ諦めるには早かった? マハザエルには、この現状を打破する最強手段とも呼べる方法が残されていたのだ。ただし、それは奴にとって寿命を縮めるほどの大変な荒技だったため、慎重にならざるを得ず、今の今まで温存していたという訳だ。とはいえ……こうなっては選択の余地はない。緑色の魔物は決意を固めた。

「気が進まねえが、おいらのとっておきを出すしかねえけ!」と呟いた後、しゃがみ込んで地面に拳をつける。とうとう、その魔力が解放される時が来たようだ。

 すると、その様子にギャビーの方も気づいたか? マハザエルの跪く姿に危険を察知したみたいで、すぐさま大声で警告していた。

「レイフ、気をつけて! 大地震……」と。

 だが、そう叫んだところで、後の祭りだった。魔界のエナジーは、既に放出された後だったのだァー!




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