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第三話 恐怖のシナリオ-1

     第三話 恐怖のシナリオ

       1 疑問


――ほんとに世の中はどうなってんだ。何度考えてもおかしいだろう――

 俺は映画のセットの脇で思いを巡らしていた。

〔そもそもどうして、自分が大天使ミカエルなんだ?〕という繰り返しの思考の迷路にはまって早二週間、俺は未だに納得していなかったのだ。それでも、何とか自分の気持ちに折り合いをつけてやっていくしかないと思ってもいた。幸運なことにあれから何も起こっていないが、またいつ何時、堕天使サマエルが攻めてくるかもしれない訳だから。しかも、サマエルは人に寄生するみたいで、その相手すら特定できないというたちの悪さ、防ぐにはかなり困難を要するに違いなかった。それに肝心のことがまだ分かっていない。奴が人間界に現れた目的はいったい何だろうか? たぶん、その企みを阻止するために俺たちは目覚めたはず。俺がちゃんと覚醒してれば解けるんだろうが、意識や目だけはマイケル・ウエイトのまま、五体がミカエルの意思で動かされるという中途半端な出来栄えでは、不安だらけだよ。

……と、そんなことを考えていたら、次にふとギャビーの姿が目に入ってきた。彼女はスタッフと一緒にテレビを眺めていた。撮影の合間の、時間つぶしによく使っている五十インチの液晶だ。

「臨時ニュースをお伝えします。航空宇宙局のバーンズ博士の発表によりますと、小型の彗星が地球に最接近するとのことです」とCNNの少し年増のキャスターが話しているのを、何やら真剣な表情で見ている。

 だけど、言わせてもらえば、彼女だって頼りにならないじゃないか。ギャビーが多少なりとも、平時に覚醒してくれていたら、大天使ガブリエルの貴重な情報が得られた訳で、対策も立て易かった。それなのに、今の彼女ときたらまるっきりただの人……。そうそう、思い出した。あのレイフにも六日前に会ったんだ。最近まで気づかなかったが、彼は大道具担当のボーヤだった。俺たち三人が同じ職場だとは思いも寄らなかった。まあ近くにいる方が、何かと好都合ではあるけれど。

 俺が始めて? 彼を見かけた時、『やあ、レイフ・カネガン。君は大道具係りだったんだね』と話しかけたところ、『マ、マイケルさん。僕の名前を覚えてくれたんですか? いやあ感激だなあ』と言いやがった。そのうえ『僕はずっと以前からあなたに憧れていたんですよ。嬉しいな』とまで言った。

 彼もまたギャビー同様、昼間は何も覚えてないらしい。これでは、サマエルが何を企んでいるか全く分からない。さてさて、どうすべきなのか……俺は思案に暮れた。

「マイケル、次のシーンに入るよ。準備してくれ」そんな中、監督の指示する声が聞こえてきた。

「はい、すぐ行きます」俺は、仕方なく答える。ともあれ、今は仕事だと気持ちを切り替えるしかなかった。




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