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隣に引っ越してきた幼馴染が手料理を毎日お裾分けにくるラブコメ  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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新生活準備中【中編】


 バスは二駅ほどで町中に着く。

 利用者が降りるとプシュ、という空気音とともに扉が閉じる。

 学校から送られてきた住所とスマホの地図アプリを見比べて、方向を確認。

 今更だが、この町……『峰山市』は町の西の方に峰山という、ど直球に名前の山がある。

 と言っても全然高くない。

 地図によると標高は400M程度で、だいたい徒歩十分で登れる。……と、ある。

 山頂には峰山神社という由緒正しい神社があり、夏はそこで夏祭りが行われる。……らしい。


「!」


 な、なんだと?

 しかも峰山神社の縁結びのお守りは『縁結びお守り百選』にも選ばれ、実際そこでお守りを買うと一年以内に恋人、もしくは結婚……!?

 マジか! 姉さんこれ知ってるのかな!?

 あ、いや、俺は別に……そ、そう、俺より姉さんの方が絶対必要っていうか、うん?


「コウくん、これからどっちに行くの?」

「え! あ、ああぁっ、ちょ、ちょっと待って」

「あ、う、うん。ごめんね、方向音痴のくせに声かけて!」

「い、いや、うん、大丈夫!」


 こほん。気を取り直して。

 ともかく、その峰山から見下ろされるように広がるこの町は学区も東西南北に分かれている。


 東の学区が東雲学院。

 俺が通う共学校で、一般科と私立学科、芸能科がある。

 私立で年長学部から小学部、中学部、高等部、大学部までエスカレーター式だが、一般科はその括りではなく校舎が違うだけで公立並の学費で通う事が出来る。

 それだけでなく、一般科の生徒には希望すれば食堂つきの寮や学費援助、返済不要の奨学金制度もあり、俺のような金のない子どもにも手厚い制度がたくさんあるのだ。

 その分人気で、受かったのはマジでただ運が良かったような気もする。

 ちなみに面接が一番点数が高かった。

 本当に良心的な学校だと思う。


 次に南の学区が南雲学園。

 共学校ではあるが全寮制のスポーツ特化型の学校。

 俺は運動そこまで得意ではないので、最初から受けていない。

 なお、偏差値は一番低い模様。


 次に西区の西雲男子学園。

 名の通り男子校。

 偏差値が最も高く、文武両道。

 ……偏差値も学費も高いので、俺には無理だった。


 最後がせりなちゃんの通う事になる北区の北雲女学院。

 女子校で、いわゆるお嬢様学校。

 さすがに男の俺は詳しく知らない。

 でも、確か送迎バスつきだったはず。

 ……なるほど、地理に自信がなさそうなせりなちゃんだが、送迎バスなら通学は安心だな。

 公共バスと違って満員のぎゅうぎゅう詰めや痴漢被害にも遭わない。


「……という事は……こっちだ」

「はい! ついていく!」


 そして、それぞれの高校の位置を確認すると……制服を売っている店は町の中央区。

 今時少し珍しい、商店街の中だった。

 バス停から降りて直進すると、左右に道路を跨いだ大きなアーケードが見えてくる。

 スマホを確認すると、右のようだ。


「こっち」

「はい!」

「平日の昼だし、人少ないね」

「そうだね〜」


 意外とたくさんの店がある。

 服屋、飲食店、雑貨屋、チェーン店、眼鏡、靴屋……次々と店のジャンルが変わり、ちょっとワクワクする。

 その中で何軒か、『制服取扱店』の看板がかかっている店を見かけた。

 その制服は『東雲中学部、南雲中学、西雲中学、北雲中学部』とあり、残念ながら俺とせりなちゃんが探す高校の制服ではなかったけれど……。


「あ! ケーキ屋さん!」

「はあ、おしゃれだねってどこ行くの」

「え、あ、ちょっと覗いてみるだけでも……」

「あ、あとにしよう? 絶対食べたくなっちゃうから」

「そ、そうだよね」


 俺も甘いものは好きだし、店に入ってせりなちゃんと一緒にケーキ食べてみたいけど……結構財布の中身がギリギリなんだよな。

 まず必要なものを買ってから考えよう。うん。


「あ! クレープ屋さん!」

「せりなちゃん、クレープ屋さんはあとで寄ろう」

「あう」


 気持ちは分かる。とても分かる。

 だが、俺はこのあとケトルや炊飯器とかも見たい!

 制服やジャージの値段は書いてるけど、ネクタイなどの小物がいくらかは書いてない。

 どのくらいかかるのか分からないから、無駄使いはしたくないんだ〜。


「あ、飴細工屋さんだって! 珍しくない!?  あ、その隣はタピオカミルクティーだって! あれが噂のタピオカミルクティー! わたし、まだ飲んだ事ないんだ!」

「あ、それは俺も……じゃ、なくて! ……あ、ほら、制服売ってるお店あったよ!」

「え?」


 なんとなく、せりなちゃんが迷子になる理由を察してきた頃、ようやく『高等部、高校制服取扱店』の看板を見つけた。

 好奇心が旺盛な一面が普通にかわいいけど、迷子にさせるわけにはいかない。

 昨日と今朝のお裾分けのお礼に道案内をすると言ったので、しっかり彼女を送り届けなければならないだろう。

 いや、お金が余れば俺だってケーキでもクレープでもタピオカミルクティーでも……!

 

「すごい! ちゃんとお店にたどり着けた! コウくんすごい!」


 残念ながら普通だよ!


「いらっしゃいませ」

「あの、東雲学院と北雲女学院の制服を買いにきたんですけど……」

「はい、新入生ね。こちらへどうぞ」


 店員さんはなんと着物。

 奥へと案内され、俺とせりなちゃんはまず、試着を勧められる。

 人によってはズボンのサイズや上着のサイズが上下で異なる場合もあるらしい。

 それに、男子は高校に入って一気に成長するので大きめのサイズを買っておくべき、とか。

 でも、ズボンは多分買い換える事になるだろう、とか。

 そんなに伸びるだろうか? 背。

 伸びたらいいな、と思わないでもないけど。


「足が大きいから、きっと卒業までに十センチくらい余裕で伸びるんじゃないかしら?」

「え、そんなに?」

「男の子って自分や周りが思うより大きくなるの。買い替えが大変だと思うし、二サイズくらい大きい方がいいかもしれませんね。どうなさいますか?」

「え、え……」


 そう言われてもな。

 今は165センチ。

 十センチっていったら、175くらい?

 あれ、もっと伸びてもいいんじゃないか俺の身長。

 でも、そうなると確かに二サイズくらいは……上の方がいいのかな?


「女の子はそうでもないんですけど……どうですか? 制服、入りましたか?」

「は、はい」


 店員さんが隣の試着室へ声をかける。


「…………」


 あれ? 待てよ?

 隣の試着室って、今……せりなちゃんが──……。


「わっ、わっ……コウくん、それが東雲学院の制服?」

「…………」

「コウくん?」

「…………、……あ! うん!」


 か わ い い !


 試着室から出てきたせりなちゃんは、少しだけ大きめのセーラーのワンピース。

 これがお嬢様学校の北雲女学院の制服!

 かわいい、かわいすぎる!

 体のラインが分かるし、意外とスカートが短い。

 結構直視出来ないぞ、かわいいけど! な、なんかえっちだ!


「か……かっこいい、よ……」

「…………。……え? な、なにか、言った?」

「! な、なんでもない! あ、いやあの、わ、わたし……も、制服着てみたんだけど、あの、ど、どうかな? 変じゃない? スカート、ちょっと短すぎる気がするんでけど……」

「そっ! そ、そうだね、なんか、お嬢様学校っていうから、もっと長いの想像してたけど……! いや、あの! か、か、かわいいと思うよ……う、うん、に、似合ってる……よ!」

「! ほ、ほ、ほんと? …………っ!」


 思わず目を背けてしまった。

 だって、だって……膝上丈のワンピースで、前の裾を引っ張るせりなちゃんは……少し前屈みになるから……今度は襟元からむ、胸が!

 ダメだと分かっていても見てしまう!

 くそぅ、どうして俺はこんなに最低なんだ!


「こちらは冬服ですね。スカート丈はすぐ慣れますよ」

「あ、あの、本当にこのスカート丈が基準なんですか?」

「長いとスケバンみたいになるんですよ、その制服」

「すけばん……?」

「あ、通じない世代でしたね。すみません。長いと変になってしまうんです。大丈夫ですよ、その下にホットパンツ履くと可愛くなるんです」

「ホットパンツ!?」


 ホットパンツ!?


「ズボンもありますよ。パンツタイプと言います。上着はこちら」

「なんかカッコいい!?」

「北雲女学院、一番制服の種類が多いんです。パンツタイプを着ている女生徒は『お姉さま』と呼ばれてそれはもう、宝塚の男役みたいに人気になるんです。そういうのをお好みな方でしたら、全力でお勧めしておりますわ」

「ふ、普通でいいですぅ……」


 じょ、女子校なんかすごい。


「あとはリボンが紐、リボン、スカーフ、お色も十種類、リボンのラインも三種類、スカーフのライン三種類からお好きなものをお選び頂けます。春夏秋冬、日によって、気分によって変えたいと全種類お買い上げになられる方もおられます」

「ふえええ!?」


 ……じょ、女子校すごっ……!

 さすがお嬢様学校!


「……コ、コウくん……」

「え?」

「コウくんは、リボン、どれがいいと思う……?」

「えっ!」


 差し出されたサンプル表を勢いよくこちらに向ける店員さん。

 目がなぜかとても輝いている。

 え、こ、これの中から、俺が!? 俺が選ぶ!?


「え、えーと、そ、そう言われても……」

「コウくんの好きなやつ……教えて欲しい、な……」

「っ……」


 北雲女学院の制服は白。

「襟の柄なども選べるのでそちらから選んだ方がいいですよー」とさらに迷わせるような事をいう店員さん。

 もちろん、それを聞いたらせりなちゃんは「コウくん、選んでくれる?」ともじもじしながら聞いてくる。

 そ、それは、まあ、あ、俺だって……。

 俺だってせりなちゃんにはその色よりこっちの方が似合う、みたいな個人的主観で申し訳ない意見はあるけれど──!


「ほ、本当に俺が選んでいいの……?」

「う、うん……コウくんに選んで欲しいの……」

「…………じゃ……、じゃあ……」


 なぜか生き生きした表情の店員さんが持つサンプル表を、指差す。

 俺が選んだのは、水色のチェック柄。

 せりなちゃんの部屋は水色が多かったから、好きな色なんじゃないかなって思ったんだ。

 襟を飾るのも水色ベースのスカーフ。

 すぐに店員さんが俺が選んだ新たスカーフを持ってきて、せりなちゃんが着ている制服のをつけ替える。

 ……着脱式……だったのか。すげぇ。



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