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隣に引っ越してきた幼馴染が手料理を毎日お裾分けにくるラブコメ  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』


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13/24

親子丼


 その日の翌日、朝から長谷部さん部屋を再び訪れた。

 ルームウェアの長谷部さんは新鮮だ。

 いつもしっかり着込んでるし……。


「おはよう」

「おはようございます……」


 姉さん、すまん。

 思わずにはいられない。

 姉さんより早く長谷部さんの部屋に入ってごめん。

 姉さんより早く長谷部さんのルームウェア姿とか見てごめん。


「では早速始めます。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」


 まずグラニュー糖とアーモンドプードルをだまを作らないように混ぜておく。

 常温に戻した昨日の卵白へ、それを数回に分けて投入。

 ハンドミキサーでかき混ぜる。

 ツノがたつくらいしっかり混ぜたら、キッチンペーパーを敷いた鉄板に絞り袋に入れた生地を出していく。

 表面が平らになるように乾燥させ、温めたオーブンで20〜30分焼いてから常温で冷ます。


「中に挟むクリームはグラニュー糖と生クリーム、バター。バターは塩が入ってるから、無塩バターを使う時は少し塩を入れるといいよ」

「は、はい」

「それをのの字を描くように片方に載せ、もう一つで挟む。うん、こんな感じ」

「おお〜!」


 すげぇ、マカロンが本当に出来た!

 マカロンって本当に家で出来るものなんだ!?

 すげぇ、すげぇ! ちょっと感動!

 テンション上がっちゃったよ!


「これをひたすら繰り返す……」

「…………」


 ひ、ひたすら……。




 ──四時間後。


「まだ作るんですか……」

「あいつにかかれば三十分でなくなるよ。でもまあ、そろそろ昼だし一旦終わりにしよう……」

「一旦……」


 まだ続くのかこの製造作業……どんだけ作るんだ。

 もう百個くらい作ったんですけど……?


「まあ、でも幸介くんはそろそろ上がってもいいよ。好きな味のマカロン持って帰りな」

「え、いいんですか?」

「うん、今日一日はずっと作ってる。午後からは抹茶と紅茶と栗とチョコレートを作るよ」

「…………」


 ちなみに午前中にはココア味と苺味とオレンジとアーモンド味を作りました。

 ……まさか他にもまだ味の種類を作るとか……。


「て、手伝います」

「いいの?」

「全種類、せりなちゃんにあげたいので」

「ふふ」


 笑われてしまった。

 でもここまで来たらやるしかない。

 全種類……ココアと苺とオレンジとアーモンド、抹茶と紅茶と栗とチョコレート……八種類もマカロンがゲット出来る機会とかそんなにないし!


「ホワイトデーまでまだ結構あるけどいいの?」

「えっと、そ、その時は、別なお菓子の作り方を教えてください」

「……いいよ」


 すごく優しく、笑いかけられてしまった。

 イケメンって本当得だよなぁ。

 そんな風に思っていたら、鍋を取り出された。

 まな板の上には鶏肉。


「?」

「昼ご飯は親子丼でいい?」

「え! い、いいんですか?」

「いいよー。手伝ってくれてるし、このくらいは作るよ。それとも一緒に作る?」

「は、はい!」


 自分でも作り方を覚えておけば、せりなちゃんの手を煩わせる事もない。

 ぜひ、とお願いすると長谷部さんはまた微笑んだ。

 クッソ、イケメンだな!


「鶏肉は少しだけ醤油と酒とみりん、砂糖を混ぜたタレに漬け込むよ。鳥ももを使う場合がほとんどだけど、俺、胸肉も好きだから胸肉を使うね」

「へあ、は、はい」


 鶏胸肉ってそういえばあんまり使う事ないよな。

 唐揚げも鳥ももだし、焼き鳥も鳥もものイメージ。

 それに一口サイズに切った鶏胸肉を、先程言ったものを混ぜたタレに漬ける。

 唐揚げではないので、タレもあとでそのまま使うらしい。


「次は玉ねぎ」


 玉ねぎは市販のスライサーという便利グッツでドゥルルっと切ってしまう。

 え、こんな便利グッツあるんだ。すごい、いいな!


「フライパンに油をしいて、玉ねぎを焼く。柔らかくなったら玉ねぎが隠れるくらいの水と、肉をタレごと入れて混ぜながらさらに火を通していくよ」


 タレそのものだとしょっぱくなるから水を少し入れるのか。

 火が通ったら卵を溶いて満遍なくかけていく。


「硬い方がいい? それとも半熟がいい?」

「うーん……俺は硬い方が……」

「じゃあ今日はそうしよう」

「普段は半熟なんですか?」

「俺、半熟よりやや硬めが好きなんだよね」

「え、俺もそれが食べてみたいです」

「そう? じゃあ俺の好みにしてもいい?」

「はい!」


 そういえば、前にせりなちゃんとスーパーに買い物に行った時こんな話をしたな。

 卵焼きは出汁派か甘い派か。

 目玉焼きは硬い派か半熟派か。

 そんな事を聞いてくるせりなちゃんの方こそどうなんだろう?

 正直俺はあまり料理……食事にこだわりが薄い方だった。

 食えればなんでもいいし、なんなら毎日カップ麺でもいい。

 だから人の手作り料理って……すごく、未だに……憧れがあるのだ。


「ご飯よそってくれる? お皿は適当にそこのやつ使って。炊飯器はそこね」

「は、はい」


 炊飯器でちゃんとご飯炊いてる……長谷部さんすごい。偉い……。


「お、おぉ〜」


 お皿に分けて、差し出された割箸を借りてテーブルに持っていく。

 最後に長谷部さんが三つ葉を載せて出来上がり。

 すごい、普通にお店で出てきそう。


「まあ、親子丼は簡単だし作り方は人それぞれだから自分のやりやすいように作るといいと思うよ。それじゃあ食べようか」

「はい、いただきます」


 艶々の卵。

 ほかほかと湯気とほんのりとした甘い香り。

 三つ葉の鮮やかさが、黄色と茶色しかない皿の中で際立つ。

 喉が鳴る。

 なんだかんだお腹が空いていたからだ。美味しそう。


「ほあ……」


 箸をご飯の下に差し込み、持ち上げれば湯気がほくぅと倍増する。

 熱そう。まだ熱いかな?

 すごいな、卵が本当にぷるぷるしてる。

 まさに硬いのと半熟の中間……!

 俺もこれ好きかも。いや、多分絶対好き。

 鶏肉とふかふかプルプルの卵、汁の染みたご飯!

 もちろん食べ方は──口の中へ欲望と勢いのままかき込む!


「あふっ……」

「お茶いる?」

「は、はひ」


 あっつ!

 やっぱりまだ熱々だった……!

 でもやっぱり一気にかき込むと全部が合体してめっちゃ美味い!

 鶏肉、胸肉ってあまり食べた記憶がないけどこんなに筋ばってるのか。

 でも、その筋の一本一本からタレが溢れてくる。

 そのこぼれたタレが卵の味に折り重なり、ご飯と絡ませていくからすごい。

 まさに卵とじ。

 卵が鶏胸肉とご飯、そしてタレを調和していく!

 え、うま……意外と胸肉って美味いんだな……?

 なんかこう、染み込む感じではなく、さぱっとしててほろほろっとするんだけど肉がしっかりしてる。

 食感はゴムっぽいけど漬け込んであるのと卵のおかげで、しっかりした味わい。

 鳥もものような噛むとじわり、みたいな感じではなく本当にこう、ガッツりくる!

 でも、さっぱり! 脂味が、ない!


「お、おいひいです……あ、っつ……ほふ……」

「良かった〜」

「? 長谷部さん、なにかけてるのんですか?」

「一味唐辛子。俺は辛いの割と好きでね〜」

「い、一味唐辛子? 牛丼じゃなくて、親子丼にもかけるんですか?」

「平気なら試してみる?」

「……」


 小さな容器に入っているのはいつも使っている七味唐辛子よりも辛い、一味唐辛子。

 七味より一味の方が辛いのは、姉が辛党なので知っている。

 長谷部さんも辛党なのか……良かったな、姉さん……食の好みに関しては問題なさそうだぞ。

 いや、それよりも俺か。

 牛丼以外でも七味や一味をかけるとは思わなかった。

 ええ、どうしよう?

 辛いのはそこまで苦手なわけではないし、チェーン店の牛丼についてくる少量の七味は使ったりするけど……。


「じゃ、じゃあ試してみます」

「うん、どうぞどうぞ」


 しっかり蓋の閉められた一味唐辛子を受け取る。

 それを開けて、少しだけ……かけてみた。

 なんとなくお茶を一口飲んでから、改めて一味唐辛子のかかったところを口の中にかき込む。


「むっ」


 つん、と辛味がきた。

 すぐにではない。


「うぅっ」

「あれ、ダメだった?」

「あ、いや、あの……い、一味唐辛子って本当に七味より辛いんですね……!」

「え? そう?」

「そうですよ!」


 牛丼にかける七味より確実に辛味がくる!

 口の中がピリッとして……ああ、でもその分卵やタレやご飯の甘味は強く感じたかもしれない。

 だがしかし! やはり口の中がピリピリする!

 本当にちょっぴりなのに、一味唐辛子、強い……!

 これを三回も四回も振る姉や長谷部さんの舌やばくねぇ?


「熱いと余計そう感じるかもね」

「はふぅ……!」

「お茶お代わりいる?」

「い、いただきます!」


 冷たいお茶が口の中のピリピリを少し緩和する。

 だがそれは一瞬だけ。

 冷たいが次の瞬間にはピリピリした熱に変わる。

 うう、これだから辛いのは……!


「マカロン食べる?」

「え」

「いやー、まさかそんなに苦手だとは思わなかったから……」

「だ、大丈夫です! かけたところは食べ終わりましたから」


 そう、もう一味唐辛子をかけたところは全部食べた。

 だからあとは残りをかき込むだけ!

 味変してみて分かったけれど、普通が一番でした!


「あ、そうだ。あの、もしかして牛丼とか豚丼もさっきみたいな作り方なんですか?」

「ん? そうだね、大体同じかな。豚丼は甘味を強めにするのと、俺は蜂蜜や目玉焼きを入れたりするかな。牛丼は部位によって火の回りが早いから注意は必要だと思うけど……あと、卵とじはお好みで?」

「あ、そ、そうですね」


 牛丼も豚丼もそういえば卵とじされてないや。

 卵とじされるのはカツ丼とかか、そうか。


「あ、でもそれならカツ丼も同じ要領で作れるって事か……!」

「そうそう。カツ丼の時は玉ねぎをもう少し大きめに切ると、衣のかわりにしゃきしゃき感を出せていいと思う。あ、まあ、これもお好みで、だけど」

「なるほど」

「あとはやっぱり紅生姜入れるといいよね。ほんのりとした酸味と赤い色味が加わって綺麗で」

「そうですね」


 牛丼屋さんのやつはついてるもんな。

 まあ、あんまり得意じゃないからちょっとだけ、だけど……。


「……結構応用が効くんですね、親子丼の作り方って」

「丼ものはお腹いっぱいになるし、作り方も簡単でいいよね」

「はい、それに……美味しかったです! ごちそうさまでした!」


 両手を合わせる。

 たくさんかき込んだのであっという間だったな。

 ……まあ、辛いのごまかすのにバクバク食べてしまったのだが。


「はい、お粗末様。じゃあ午後もマカロン作りをがんばろうか」

「は、はい」


 そうだった……。


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