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果てしなきこの異世界で...  作者: コタツ警備員
一章 永遠に続くラビリンス
4/8

p.003 話を聞いてくれ。

「遺言があるなら聞きいてあげますよますたぁー♪」


 肩を凄い力で鷲掴みされて、逃げることが出来ない。

 うたを歌ったり、トコトコ歩いたりしただけやぞ。

 そのますたぁーとか言う人物じゃない。 

 誤解をなんとかしないと冗談抜きでぶっ殺されそう。

 多分この人、"やると言ったら殺る"、幼なじみと同じタイプだ。

 

「あの… … …すみません。人違いですけど」


「もしかして冗談を言っているんですか? あはは… … …ぶっ殺しちゃいますよ?」


 はずんだ声色に抑揚が無くなると同時、雰囲気がガラッと変わってしまった。

 なんか、地雷踏み抜いてしもうた。

 ちくしょ、こいつとんでもない握力で掴んでやがる。

 滅茶苦茶、痛いけど今は我慢するしかねぇ。    


「すみませんけど本当に人違いですよ。自分とそのますたぁーって人と何か勘違いされてませんか? 信じてもらえるか分かりませんけど気が付いたらここにイタタタッ!! 砕ける、砕ける!!」


「あ、すみませんますたぁー。ソラとしたことが… … …殺る前にますたぁーをなるべく苦しめるデバフを掛けないと駄目でしたね。反省します」


「反省するところがちげぇーのよ! とりあえず俺の話を聞いて!」


「サクッと180個程、デバフを掛けましたので痛かったら悲鳴をあげて下さいね♪」


「話を聞けや! ますたぁーとかじゃなくて俺は篁謙仁だよ!! 今年で二十歳の男性の! だから人違いです! あなたが一体誰か、本当に知らないよ!!」  

 

「… … … … … …もしかして記憶喪失ですか?」

 

いや、何でそうなる。

 

「ちょっと調べますね」


「あぁーもう分かった、勝手にやってくれ」


 分かりました、と呟いたその瞬間。

 ぞわぞわとしたような、虫が体を這い上がって来るような。

 体の中を触られているような、四方八方から見られているような、何ともいえない不快感がおそってきた。

 何をしているかは知らんがこれで誤解が解けるならそれでいい。

 久しぶりの他人との会話で恐怖体験をするとは思わんかったけど。


 … … … … … …にしても、なんか気持ち悪くなってきた。

 頭痛がするわ、少しクラクラするわ、吐き気がするわ、体調を崩した感じがする。

 もしかしてデバフ掛けたー言うてたからその効果が出てきたけい?

 あれ、さらっと聞き流してたけど180個ぐらいのデバフ掛けた言うてたけど、よくよく考えればやばくね?

 え、どのタイミングでかけたの?

 この、ソラとか言う奴って何者だ?


「… … …ふぅん」

 

 声が怖いが、いったい何を調べてんだこいつ?


「へぇ… … …。 なるほどなるほど、見つけ出して滅殺しちゃお♪」

 

 あの、さっきからなんなんでしょうか?

 凄く、怖いんだけど。 

 

「… … …さて、ますたぁーに説明することがいっぱいありますが、少しお待ち下さいね」


 ソラと言っていた人物が目の前で、指揮者みたいに手を振りながらを歩くと、土が宙を舞い、椅子や机を作り上げていった。 

 … … …す、すげぇー。パッチー・ポターみたいや。

 映画のワンシーンのような幻想的な光景に俺は目を奪われて、感じていた吐き気などの不快感がいつの間にか収まっていて、楽になっていた。

 

「どうぞ、ますたぁー。此方にお掛け下さい」


 いつの間に出来上がった椅子に案内する相手は、微笑んでいた。


 もしも、目の前の相手が自分は天使です、女神ですと言うなら、何も疑わず信じてしまうだろう。

 テレビでよく見るアイドルや女優の可愛いさとはまるで次元が違うような、気を抜けば魅了されてしまうような人間離れしている美貌。 

 凍てつく夜を照らす満月のような銀色の瞳。

 髪は上品で洗礼された印象を感じさせ、美しい金属の光沢があるかのような灰色。

 彼女の頭には幾何学的な模様の光の輪? みたいなものがありふわふわ浮いている。

 年は幼なじみと同じぐらいで、身長は180後半はあるんじゃないだろうか?

 それにしても何というか、… … …エロい。

 出過ぎず足りな過ぎず、程よく肉が付いている黄金比のような美しい躰に、絶妙なラインを攻めている露出度の高い衣装を身にまとっている。

 ぶっちゃけると、俺の性癖にぶっささる。

 かなり、ドキドキッとしたのは此処だけの秘密だ。

 … … …小冬里と小冬音にバレたら明日の朝日は見れない。


「… … …あ、そうでした。その姿だと此方に座れませんでしたね」


 すると、彼女は右手を顔近くまで上げ。

 … … …指を弾いた。


「―――うぉ、すげぇー。ワープした」


 まじで、次のカットで場所が変わるみたいな感じだった。

 目の前にはどこか懐かしい香りがする紅茶に美味しそうなお菓子類。

 しかも、椅子の上に立っているのにテーブルとの差尺が、ドット姿になって身長とか色々違うのに普段使ってた物と全く大差がない。

 と言うより長年使っていたかのように凄くしっくり来る。


「ますたぁーに気に入ってもらえたようでなりよりです。寛ぎながらでも大丈夫ですので聞いて下さい」


 あ、そうだった。

 魔法とかに感動してて、忘れてた。

 記憶喪失してるんじゃねぇーか言われてたんだ。


「まず魂を調べ上げた結論から言いますと記憶喪失で間違いないです。ご丁寧に厄介なアイテムを使われているので、私達の… … …"ミオソティスのメンバー全員の情報が記憶されない"ですね。詳しくは分かりませんが、何かがトリガーになって名前も話した事も、何もかも全部忘れちゃいます」


… … …魂を調べた?

… … …記憶喪失で間違いない?

… … …ミオなんたらの、メンバー全員の情報が記憶されない?

… … …何がトリガーになって全部忘れてしまう?

… … …うん、訳が分からん。


「… … …一つ聞くが魂を調べたって言ってたけど、なんで【篁 謙仁はますたぁーである】って証明が出来るんだ? そもそも記憶が無いのは赤の他人だからって思うが?」


「魂について簡単に説明しまょう。まず魂の重さは21グラムっと決まっていますが、虹彩や指紋のように様々な特徴があります。またDNA、デオキシリボ核酸を遥かに超える膨大な情報を持った設計図、輪廻を記録する媒体でもあります。つまり魂を調べれば過去の経験や体験もそうですけど現在のますたぁーの身長、体重、血液型、性癖、性感帯、得意な性技、日頃の生活の様子に、恥ずかしい体験や黒歴史。あとは初体験の状況もですが、どんな方法で、どんな事を考えて、どんな想像しながら、どれくらいの力加減でどのポイントを刺激しながら抜いているかもぜーんぶ分かります。必要でしたらお話して答え合わせしまょうか? 例えば13歳の頃、幼馴染みの家で遊ん」


「お、お願いしますから、やめて下さい……っ!!」


DNA鑑定、虹彩鑑定、指紋鑑定しましたーって言ってるもんじゃん。

俺はますたぁーであるって証明されてもうたよ。

恥ずかしい黒歴史も、事件も全部バレてる。

マジで、穴があったら入りたい。


「まぁそんな事しなくても、愛してる人物がどんな姿になっていようがこの人だって、心で理解できるんですけどね。それとソラが召集をかけた時に情報を共有したので、皆から質問攻めを楽しみにしといて下さいね?」


… … …頼む、嘘だと言ってくれ。


「… … …子犬みたいに震えるますたぁーって可愛くて新鮮ですねぇ。ソラ、何かに目覚めちゃいそうです♪」


「やめろ。目覚めなせるな、目覚めるな、それには永眠してもらってくれ」


「……さて。お楽しみは後に残しておくとして。自己紹介が遅れましたが、初めましてますたぁー改め、篁 謙仁様。ミオソティス、第五席 白夜のソラ・アルマクと申します」


なんだよ。

白夜ってかっこいいなおい。


「先程、ますたぁーは記憶喪失と説明しましたが、正確には何者が"アィデルカ"を用いて記憶を奪われている状態ですので、とても危険な状態になっています。恐らくその姿もアィデルカの効果でしょう。何が引き金になるかは解明出来ませんでしたが、その姿になった時からの記憶が全て消えると同時に、その姿になる前の記憶が少しずつ消滅していき、最終的には魂そのものが消滅し、この世から忘れられます」


「… … …え、ごめん。どういうこと?」


「例えば、今日の朝食のメニューを忘れたら、ますたぁーが15歳の頃に幼馴染み二人といった花火大会の思い出も一緒に忘れちゃいます。それが何回も続いて記憶が完全に無くなって魂が消滅すれば、"最初からこの世に存在しなかった"事になり歴史が変わりますし、ソラ達のように"心に大きな影響を与えているますたぁーと言う存在"が世界から欠け落ちれば、心が崩壊して精神が滅茶苦茶なって悲惨な事になる事は間違いないですね。あんまり関わりの無い連中はどうなるか知りませんけど」


え? なにそのふざけた効果。


「え、じゃぁー何か? 仮にソラさんとのやり取りを忘れたら、記憶が無くなる訳だから俺が小冬音と小冬里に対しての感情も消えてしまうし、友人と約束した事もぜんぶ忘れるってしまうし。最終的に魂が消滅したら俺は生まれてなかった事になって、歴史とソラさん以外にも自分が心の支えになってる人物とかに何かしらの影響があるって事だな?」


俺の問に、彼女は無言で頷く。


「… … …なるほどなぁ」


ドット姿は飽くまでもアイテム効果のオマケ程度か。

記憶が無くなって魂が消えれば、"最初から存在しなかった"って事になるか。

そして、ソラ以外にも心に大きな影響を受けた人物が、精神崩壊を起こす… … …と。

厄介な事に巻き込まれたと言うべきか。

その人物が存在しないなら歴史は確かに変わってくるわな。

明智光秀が存在しなければ、本能寺の変は無かった事に。

徳川家康が存在しなければ、江戸なんて時代は無かった事に。 

いや、詳しくは知らんが親殺しのパラドックスみたいな感じになるのか?

後者に関しては心の問題か。

心の支えが完全に消える、その存在の記憶が無いのだから、喪失感の理由が分からないままずっと心に穴が開いた状態になるのだろうか?

… … …魂が消滅したら、誰かも悲しんでもえないってなると辛いものがあるな。

とにかく、情報が足りねぇな。


「いくつか聞くが、 まずその厄介なアイテムの"アィデルカ"ってなんだ?」


「キューブのどこかに存在しているとさせる13個のアイテムです。 全てのアイテムの頂点にたつアイテムとされていて、理から逸脱しているので破格の効果を持ってますね。例えば生物の構造、歴史や世界の構造を自由に改変したり。あとは手に持って念じるだけで、名前がある存在の魂を消滅させたり出来ますかね」


いや、ぶっ飛んだ効果ばっかりだな。

いくら何でも反則過ぎるだろ。

未来の猫型ロボットが持ってる、独裁スイッチとデス!! ノートを掛けたような上位互換みたいなアイテムもあるし。  


「さっきから聞くけど、キューブってなんだ?」


「人間や亜人、天使や悪魔、異形種など多種多様な生命体が生存している、縦十三センチ 横十三センチ 高さ十三センチで構成された木製の白い箱の事です。ますたぁーの記憶で言えば地球みたいなものですね。その箱の中に、佰穣六京六阡六佰兆壱個の世界が存在しています。魔法が発展した世界、科学が発展した世界、世紀末のような世界など、キューブの中に存在している様々な世界を"ディメンション"と呼びます。ソラ達がいる世界みたいに例外もありますけど、ディメンションは基本的に縦と横が五十六億七千万キロメートルの巨大な正方形の空間でその中に様々な地形が構成されています。表計算ソフトで言えばシートが"キューブ"、そのシートの中にある無数のマス目、セルが"ディメンション"だとイメージして貰えればいいですかね」


やべぇ、鮮明にイメージが沸いてくる。

ちっぽけな箱の中にとんでもない数の世界が存在してると。

四次元ポケットみたいなもんなんか。

エクセルで言えば、キューブがシートでディメンションがセルね。

俺が元いた世界がA1とすれば、今いる世界がB1って感じか。

ショットカットキーとかみたいなの使えば移動できたりするんかな。


「あと、キューブには奏者って言う管理者が存在していますね。奏者はみんな子供で、13人いるらしくて、その内の一人がキューブの支配権を握っているらしいですよ? 誰が握っているかは分からないらしいですね」


「へぇーその奏者って子供に会ったことあんだな」


「ますたぁーもその時にいましたよ? あまり良い思い出じゃありませんけど」 


「何があったかは聞かないが、ディメンション間の移動手段ってのはどんなかんじなんだ?」


「移動手段は扉による移動のみです。ますたぁーが昔やったことあるファミコンってゲームみたいな感じですかね?」


ソラが、魔法を駆使して説明を始める。

その話を要約するとこうだった。

扉は各ディメンションに最低でも13個は存在している。

扉は木製であり、幅:81.9Cm 高さ:240.0Cm、破壊する事は不可能である。

扉は 一方通行であり、元の地点に戻るには違う扉を経由する以外手段は無い。

A地点の扉を移動先であるB地点から開閉する事が可能である。

A地点の扉付近で魔法を唱えると、移動先であるB地点にも影響が及ぶ事がある。

視認できるタイプと視認できないタイプの二種類がある。

基本に閉まってはいるが、常時開いている物も存在する。

一度使用すると、その扉は堅く閉ざされ暫くは使用できない。

扉のタイプは四種類あって。

特定の時間帯に出現する物。

一定の時間、その場に留まる事で出現する物。

特定の座標に何かしらの衝撃を与える事によって出現する物。

特定の座標で生命活動が著しく低下、叉は死亡する事によって出現する物。 


うん、親父の実家で遊んだ事のあるアトランティスの謎々の仕様に確かに近いわ。

自滅ワープとか、隠し扉とか初見で分かるかっての。


「移動手段の例外として、"桜色のドアとその枠"ってアィデルカがありますね。自分が望むディメンションに自由自在に行く事が出きるらしいのですよ」


何処でもドアみたいなのもあんだ。


「因みにキューブ内部から外に出られたりするのか? 木製の白箱ーいってるぐらいだから実際に見てるような感じだけど」


「内部から外部に出る方法は無いらしいですよ? 元々キューブが木製の白い箱って情報は外部から来た、まれびとって言う不思議な鍵を持った人々から広がりましたからね。真偽を確かめようにも何処にいるか分からないんですよね。噂では666人いるらしいですけど。あとはエンティティって言う、キューブ外からやってきたとされる生命体もいますね。遊び相手には丁度良いのでお勧めですよ?」


「とんでもない数のデバフを一瞬で掛けてくるソラさんと一緒にしてもらっても。ってそう言えば俺に掛けたデバフを何とかしてくれない? どんな効果かは知らんけどすっかり忘れてた」


「嫌です。本当なら浮気をした時点でただでは済まないですけど、事情が事情なのでますたぁーの恋路を応援します。でも忘れてるとは言え楽しみにとっておいたプリンを食い逃げした恨みがあるのでしばらく我慢して下さい。記憶が戻った時にいちおう弁解だけは聞きいてあげますけど覚悟してください… … …ね? 何時までも待ってますから」


表情が消えたソラを見て俺は嘆いた。

何て事をしてくれたんだこの野郎。


「… … …記憶が戻った時に懺悔するので、勘弁して下さい」


絶対にどこの世界でも共通だ。

食べ物の恨みは恐ろしい。

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