p.002 いったい何が出来るという...
「ーーーは?」
車にエンジンをかけた瞬間。
見慣れた街並みから、大草原に変わった。
... ... ...なんでそうなった。
どこだ。
ここはどこだよ。
俺、車にエンジンをかけたね。
そしたら、大草原が現れた。
... ... ... ...だから、何故そうなった。
いや、いやいやい落ち着け俺。
小冬音と小冬里は千円札を持って自販機に行った。
俺は車の中でメールしながら待つか思ってエンジンを掛けた。
鍵を思いっきり捻っただけ。
おけおけ、ちゃんと覚えてる。
... ... ... ...で、どうしてこんな事になった。
押したら大金がもらえるボタンなんて押した記憶も無いぞ。
最近心霊スポット的な場所を訪れた事もないし... ... ...。
.... ....... ... ... ... いや待てよ、仕事で不気味な神社の点検に行ったな。
でもあれはかなり前の事だし関係ないと思いたいけど。
いや、でも、え? もしかしてあれが原因?
電力量計見に行く時に、転びかけたけど、凄く不味いものに躓いたか?
メリーさんを名乗る人物からの電話ってもしかしてフラグだった感じ?
いや、いやいや、いやいやいや。
いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや落ち着こう。
とりあえず落ち着こう。
三分だけで良いから時間をくれ。
確かあれだ、こういう時は素数を数えればいいんだ。
どっかの神父さんも素数を数えて落ち着こうとしていたはず。
1、2、3 ダァァァーーーーッ!!
違う、そうじゃない。
混乱しすぎてる。
もう素数でも何でもなくなってる。
落ち着け俺。
と、とりあえず周囲の確認をしてから... ... ...
周囲を見渡そうとして気づく。
目線が子供かってぐらい低くなっていた。
いや、百本譲ったとして、それだけならまだいい。
首が岩のように固まっていて、ピクリとも動かせない。
金縛りなんて比じゃない。
座っているだけなのか、首だけが動かないだけなのか分からない。
が、もしかしたら下半身不全、意識があるだけの植物人間状態。
考えれば考えれるほど、最悪の想像が頭をよぎり、俺は慌てて手足に意識を向ける。
... ... ... ... ... ...良かった。
両手両足も、指先も問題なく動かせるけど、なんか凄いカクカクする。
しゃがむ事は出来ないけど、歩ける。
前後左右に移動しようとしたら、何故かカニ歩きになる仕様だけど。
勿論、カニ歩きなので斜めに歩く事が出来ない。
体をクルッと真反対に回転させる事も出来ないので常に正面しか見れない。
何というか、あの国民的RPGの初代作品に出てくる勇者みたいな。
試しにジャンプしようとしてみたが、足が磁石でくっついてんのかってぐらい地面から離れなくて出来なかった。
石みたいなザラザラした感触が伝わるから、感覚は多分問題ないだろう。
一通り動いてはみたけど、やっぱり直前的な動きしか出来ない。
凄いカクカクするけど、動かせないよりは遥かにましだけど。
目線が低くなったり、直線的な動きしかできなかったり。
自分の体は明らかにおかしい状態になっていることは間違いない。
いつも鏡で見ている自分の姿じゃなかいのは確かだ。
直線形でカクカクした、あの国民的RPG風のキャラクターみたいな、あの"ドット姿"が凄い頭に思い浮かぶけども。
もうラダドームからの、広野に出て歩き回るBGMが大音量で脳内再生されそう。
いや... ... ... いくらなんでも考え過ぎか。
とりあえず、確認出来るものから見ていくか。
上ー下ー上ー下ー右ー左ー右ー左。
眼球は凄いヌルヌルと動かせるな。
音が聞こえるかは... ... ...。
とりあえず叫んだら分かるか。
「だれかいませんか」
... ... ... ... ... ...反応がない。どうやらぼっちだようだ。
薄々そんな気はしていたがやっぱり反応無いとなると悲しい。
少なからず、言語の違いもあるとは思うけど、何か反応ぐらいあってほしい。
しかし、口が動いた感じじゃ無かったのに俺、どうやって声を出したんだろうか?
... ... ... ... ... ...まぁ、気にしないでいるか。
とりあえず自分の声が聞こえるから多分、聴力も大丈夫だろう。
改めて俺は、出来る限り眼球を動かす。
ここが馬鹿でかい草原って事は分かった。
視線を背後に飛ばせないのでどうなっているか分からないが、多分似たような景色が広がっているだろう。
にしてもこんな場所、社会の教科書ぐらいでしか見たことないぞ。
なんというか某クラフトゲームのスーパーフラットみたいな感じの草原。
どこまでいっても草しかないような気がする。
でだ、あの場違いなブラウン管テレビとビデオデッキはなんだ?
どう考えてもめちゃくちゃ怪しすぎる。
年季が入っているような感じやけど、確かああいうのはホラー系ゲームだと何かしらの情報をくれそうな気がしたけど、見た瞬間にアウトな、呪いのビデオ系だったらすげー嫌だな。
あとは、調べた瞬間にフラグがたって、化け物とかに襲われたり。
とりあえずあれは後回しにするとして、見える範囲でやけど他はには無さそうだな。
目線を出来る限り下に向けてみる。
いや、この石畳も絶対に何かしら関係してるやろ。
明らかに、何かありましたよー!! っと言わんばかりの幾何学的模様が僅かに光ってる。
そして独創的な文字もかかれてある。
何というか、砂漠系のダンジョンにありそうな古代文字みたいな。
ピエログリフだっけか?
読めない以上どうしようもできない。
俺は溜め息を吐いた。
薄々思ってはいたが、突然目の前に知らない景色が広がる。
下には光る幾何学的の模様に明らかな自分の体の変化。
こうなれば、嫌でも認めざるおえない。
これ、多分異世界召還か、神隠しってやつだ。
金曜ロードショとかネット掲示板のスレや漫画なんか見たことある。
もしかしたら、タイムスリップかもしれないが、自分が何かに変化してるのを考えると、前者の可能性が凄く高い。
タイムスリップ関係で自分の体が違うものに再構築されました、なんてのは聞いた事無いが時空乱流がどういちゃらこうちゃらで、若返ったり、老けたりしたってのは未来からきた猫型ロボットが映画でいってたな。
どちらにせよ、漫画やアニメみたいな事が起きるのはアニメやゲーム好きの俺からするとテンションは上がるし凄く嬉しい。
時間が経過すればするほど、あの国民的RPGゲームみたいな"ドット絵"姿の形状をしてるような気がして凄いしていけないけど。
絶対にそんなはずは無いとは思いたいけど。
ファンタジーだとか、魔法、昔の時代とかは個人的には興味があるが、今は元の世界叉は時代に帰りたい。
何らかの方法で召喚できるなら、元の世界にも戻せるだろ。
何かの手段できてしまったなら、元の世界に帰れるだろ。
タイムスリップ出来るなら、元の時代に戻れるだろ。
こちとら"魔王を倒して世界を救え"とか"何かこの時代でやれ"って事よりも、"小冬音と小冬里に自分の気持ちやら思いやら色々伝える"っていう、遥かに大切な事があるんじゃこんちくしょう。
ラーの鏡とかで元の姿に戻れなねぇーかな。
どちらにせよ、いきなり居なくなってる訳だから早く帰らねぇと。
あの、テレビとビデオデッキみてみるか。
俺はトコトコ歩いてテレビに近付いて観察してみる。
画面は少しひび割れていて、真っ暗な状態。
ビデオデッキのコード類がテレビと接続されてる。
コンセントは投げ捨てられているのに、ボタンを押せばテレビとビデオデッキが起動しそうな状態になっている。
更に近付いてみると、テレビの画面に反射して自分の姿が映った。
そこには、じっとしていても足踏みしている俺の姿が... ... ...
やっぱりドット絵じゃねぇかーーー!
とっとこ、とっとことっとこ
トコトコトコトコトコトコトコトコ。
俺は、歩いていた。
何故かって? 決まってるさ!
歩くこと以外何もする事が出来ないのだよ!
自分がドット絵に劇的ビフォアフターしてから、かなりの時間が経過している。
元の世界に帰れる方法がいっこうに分からない。
まずビデオデッキとテレビを調べようにも、ボタンを押すことが出来ない。
触れようとしたら、磁石みたいに反発して触れれない。
何も出来ない。
テレビをしばらく見つめてみた。
何も起きない。
幾何学的模様の上でしばらく立ってみた。
何も起きない。
幾何学的模様の上で寝そべってみようとした。
だけど寝そべることも、座ることも出来ない。
足踏みした状態から変わることが出来ない。
他にも色々試したが、何も起きなかった。
じっとしても何も始まらないので歩き続けてる。
幸いなことにドット状態の俺に、疲労感や空腹感はあるのかは知らないが、疲れを感じたりお腹がすく様子はなかった。
歩きながら、ボカロ、アニソン、あとテレビでよく聞く有名なやつをこれでもかと歌いまくったけど、喉も乾いた様子もない。
断定はできないけど、ドット姿は食事、睡眠は必要ないかもしれない。
とっとこ、とっとことっとこ
トコトコトコトコトコトコトコトコ。
俺は、まだ歩いていた。
何故かって? それは、もちろん、決まってるさ!
何かしないと狂ってしまうからだよ!
周りをうろうろしたり、出口を探したりしかけども見つからず。
どんなに歩いても石畳がある場所に戻ってくるという無限ループ。
テレビの横を通過した回数が100を超えた辺りで数えるのは辞めた。
地図の端、北に限界までいったら南から出て、北までいくとまた南に出てくる国民的RPGみたいな仕様。
真っ直ぐ歩き続けて、テレビの横を通過した回数が100を超えた辺りで数えるのは止めた。
いけどもいけども、生物がいるような気配もなく、草しかないなんとも殺風景な景色しか続かないので、もう嫌になる。
歩きながら一人で尻取りしたり、妄想したり、羊を数えたり、歌を歌ったり、流石に限界だぞ。
ゲームやスマホとかあればいくらでも時間を潰せるのに、それ無しだと苦痛でしかない。
脳内に直接語りかけてくれるシリのようなバーチャルアシスタントがいれば少しは孤独が癒されたかもしれないが、そんなものはなかった。
へぇい、シリ!! とかオッケー、ググールとか色々叫んでみたが、何も起こらなかった。
もしも召喚した奴がいたとしたら、一言申したい。
こんな何も無い場所に召喚しておいて、放置されられるとか拷問だろ。
せめて何か、召還した目的を教えろよ。
そして、俺を元の世界にすぐに返せしてくれよと。
本当にいたら、一発ぶん殴ってもいいんじゃないだろうか?
此処は異世界、日本の法律は無いので一発ぶん殴っても大丈夫だろ。
あ、テレビが見えてきた。
「うふふ、やっと、見つけましたよ♪ もしかして逃げきれると思ってました? 上手く変装をしてるようですけど、ソラの目は誤魔化せないですよ?」
背後から何か声が聞こえた。
え? ソラって一体誰?
聞いた感じ女性の可能性があるけど、どっから現れたの?
何で俺はあの人物に追われてる感じになってんの?
凄い背中に視線が突き刺さるんだけど。
「それとますたぁー? 嗅いだことの無い匂いがしますけど、長いこと女の子とあって密着してましたよね? 肉体関係を持ちましたね? 百歩譲ってあの駄狐や狂人は兎も角、どうしていきなり他の害虫になびいちゃったんですか?」
先程とは比べものにならない声色。
声だけで、失神してしまいそうな絶対零度。
心臓を握られているかのような錯覚が俺を襲う。
「ソラ達物足りなくなりましたか? スリルを味わいたくなったんですか? 自信があったんですか? あ、もしかしてぶっ殺されたいんですか♪」
ソラと名乗る人物が俺の肩を掴んだ。