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果てしなきこの異世界で...  作者: コタツ警備員
一章 永遠に続くラビリンス
2/8

p.001 キーを捻ると...

設定をあれこれ考えてたら二年もたってた。

構成する力がまだまだ低いや...


 起きて……出社して……仕事して……帰宅して……寝て。

 起きて……出社して……仕事して………たまに残業して………帰宅。 

 そして寝る。

 休みの日には運動をしてみたり、体を鍛えみたり、趣味である漫画を読んだりしてはゲームで遊び1日を過ごす。

 今年で成人を迎える俺 篁 謙仁(たかむら けんと)は、これとしていった事もない普通な(・・・)一人暮らしを堪能している。

 彼女が出来たことの無い社会人だ。

 身長や顔の偏差値も自分で言うのはあれだが多分、低い訳でもない。

 うん、多分。

 そんな俺でも、彼女を作ろうと努力した事もあった。

 無駄に筋トレをして体を鍛えてみたり、ファッションの勉強をしてみたり、自分なりにいろいろ頑張ってみたが、数回か告白してフラレて心が俺た。

 2HBえんぴつのようにボギッと真っ二つ。 

 更に友人からの"お前、的は馬鹿みてぇに射抜けるのに女の子のハートはいぬけぇーよな(笑)"っと言われ俺のライフがゼロになった。 

 あの夏の蝉の鳴き声とあいつのにやけた顔は忘れねぇ。

 まぁ、今となっては笑話だが。

 しかしだ、そんな悲しい出来事があってもやっぱり諦めたくは無い。

 一回くらいは、甘酸っぱい恋をしてみたい。

 一回くらいは、アオハルみたいな事を体験してみたい。

 一回くらいは、ドスケベな事をしてみたい。

 最後に限っては最低と言われるかもしれない。

 しかしだ、一度も女性を知らずに寿命を迎えて逝ってしまうだなんて。

 ましてや、孫の顔を親に見せられないなんて。

 そんな人生はあんまりではないか?

 やっぱり一回くらいスケベなことは経験しておきたい。

 男として。

 可愛い孫の姿を、育ててくれた両親に見せたい。

 息子として。

 そう、これは試練だ!

 天から与えられた試練なのだ!

 俺はやるぞ!   

 可愛いお嫁さんを貰って、えっちぃこともいっぱい体験して、両親に孫の顔を見せる!!

 道のりは険しいかもしれないが俺はやりきってみせるぞ!!

 ―――っとそんな夢を胸に再起してた時期はもう過去の話だ。

 消して諦めた訳ではない。

 都合のいい言い訳を力説するつもりもなければ、現実は非情だから変なん悟りを開いている分けでもない。

 なら、なぜか?

 

 「ヤッホ―――!!」


 「待ったスッか―――!!」

 

 交通量の多い交差点の向こうから笑顔で手を振ってくる二人の学生。

 幼なじみである彼女達が関わっている。




※ ※ ※ ※ ※ ※




「―――ボク、お義兄ちゃんの事好きだよ?」 


「私もおにぃの事、大好きってスッ!!」


「え? 急にどうした? オムライスに変な物入れた覚え無いぞ? まぁケチャップの賞味期限は迫ってたけど」


 遡る事、三週間前の土曜日。

 良く遊びに来ている二歳年下の幼なじみ。

 姉の葛ノ葉 小冬音(くずのは ことね)と妹の葛ノ葉 小冬里(くずのは ことり)が、夕飯を振る舞った後、何の前触れもなく愛の告白みたいな事を言ってきた。

 赤い瞳と銀髪が印象的な双子だ。

  外見は子供のような彫りの浅い顔に150センチ後半、と小柄な身長。

 出過ぎず、かと言って足りなさすぎずな完璧なその躰は、寝間に包まれている。

 驚く程瓜二つな、アイドル顔負けの美少女姉妹。

 違いがあるとすれば、姉は口調に『ッス』を、妹は『ボク』をつける。

 あとは、八重歯が右にあるか左にあるか。

 性格で言えば、小冬音が周りの環境で変わる社交性仮面を持った現実主義者なら、小冬里はサイコパスな一面を持ってるが、自由で好奇心旺盛なボクっ娘。

 出会いの事はさっぱり覚えてないが、小さい頃からよく遊んだり、馬鹿騒ぎしたり、物を壊して三人仲良く正座して親父達から怒られたり。

 良く些細な事で喧嘩をしたりして、関節技を決められてボコボコにされたこともあったが、仲は自分で言うものなんだがかなり良い。

 お互いの好意が極まりすぎて距離感バグってるぐらいだ。

 恋愛感情があるか? っと問われると、全く無いと言える。

 だから、最初二人が告白みたいな事を言った時は、彼女達を一人の女性と言うよりも、"家族"、"妹"として接していたので、特に深くは考えず、今見てるテレビの影響かなんかか? っと軽い気持ちで皿洗いを続けていた。

 

 「お義兄ちゃん? 幼なじみからの愛の告白だよ? 反応薄くない?」


 「薄くない薄くない、今にでも心臓発作起こしそうだぞ」

 

 「―――おにぃ、そこにある包丁でグサッと刺していいスッか?」

 

 「押し入れの中に黒ひげの樽があるから、それにでも突き刺しとけ」

 

 他愛もない会話を続けながら皿を洗っていると、二人は立ち上がり、俺のそばまで歩いて、肩をトントンっと叩いた。


 「なんだ? プリンなら冷蔵にあるぞ? 味はまぁー大丈夫だろ」


 塩と砂糖を間違えてないから今回は大丈夫なはずだ。

 ありゃトラウマになる程、美味しくなかった。


 「後で食べるからお義兄ちゃん。ちょっとこっち向いて」

 

 「ん?」 


 振り向いた、その瞬間。

 俺の唇を小冬音は突然奪ってきた。

 まさかキスをさるとは思っておらず、予想外の出来事に俺の思考はオーバーヒート寸前。

 泡だらけの皿を流し台にぶちまけそうになっていた。  

 吐息の甘さでフラフラになりかけている俺に、上目遣いで小冬音はいった。

 

 「―――ふふ。僕のファーストキスだよ? 僕の思いはちゃんと伝わった?」


 「………」

 

 「私もおにぃに教えてあげるスッよ」



 喉から言葉を絞り出す前に、小冬里がとどめを刺すかのように俺の服を鷲掴み、唇と理性を奪う。

 小さな蛇が口内に入り込み、獲物を絡め取るように動き、暴れまわる。

 小冬里のディープキスで、もう完全にノックアウトである。

 皿をぶちまけた俺に、僅かに熱を帯びた上目遣いで小冬里は言った

   

 「おぃが大好きって事、ちゃんと伝ったッスか?」


 小冬里と小冬音にハグされ、流れるままに泡だらけの手で彼女達に抱き返した。

 

 二人から、告白されたのは凄く嬉しい。

 でも、これから先、小冬里と小冬音、二人の気持ちに俺はどう答えていけばいいか。

 俺は一体、二人に対してどのような思いを抱いていたのか。

 仲は良いけど、恋愛感情なんて無いだろうと思っていた。

 考えては悩んで、考えては悩んでの繰り返しになるかもしれない。

 それでも自分なりの答えてを導き出して、二人にその思いをちゃんと伝えなければいけない... ...。


 「それじゃ、お義兄ちゃん。携帯を借りるね。僕達以外の連絡先はいらないからね。あと僕達以外の女の子に目を向けても、声も掛けても、見ても聞いても触れても駄目だよ?」


 と言いながら、なれた手付きでパスワードを解除しスマホを操作し始める小冬里。

 … … …え?

 

 「おにぃ、ちょっとこれをぐいっと飲んで下さいッス」

   

 と言うなり、ポケットから取り出した栄養ドリンクみたいなものを飲ませようとしてくる小冬音。


 「待て待て待て、ちょっとまッ」


 そこからの記憶はなかった。

 覚えている事をありのまま話すと、目を覚ますと俺と小冬里と小冬音が生まれたままの姿で寝たいた。

 どんよりと濁りきった二人の瞳は身の毛がよだつほど怖かった。

 散乱していた服、ピンク色のゴム製品、部屋に漂う独特な匂い。

 夜中にナニがあったかは思い出したらいけない気がした。

 目が覚めてから、世界が違って見える、もうあの頃には戻れない......。

 隣に住んでいる同僚の臼田には『ゆうべはお楽しみだったなこの野郎』と言われた。

 充血した瞳で、指を鳴らす彼奴は恐ろしかった。

 そして、俺の財布がとても軽くなった。

 篁家と葛ノ葉家は既に了承済みで、外堀は既に完全に埋められていた。

 知りたくもなかった、お袋と葛ノ葉おばさんの暗黒面をしってしまった。

 見たくもなかった、親父と葛ノ葉おいさんの悟った顔を見てしまった。

 あぁー、母親達の影響か....と。

 暗殺のリーダーみたいに言うと、お前はもう完全に出来上がっている。

 どうしようもない、将棋やチェスで言うところのチェックメイトだった。

 


※ ※ ※ ※ ※ ※  

    

 色々段階をすっ飛ばしたというか、ぶっ飛ばたというか、過程や方法は滅茶苦茶だったけど小冬里と小冬音、二人を好き嫌いがと問われると、好きだ。

 俺が自分達以外の異性の人と同じ場所にいる事が嫌と思うほど程、嫉妬深い女性かもしれない。

 俺や二人が作る物以外を口にする事に嫌悪感を凄く感じる程、面倒くさい女性かもしれない。

 誰かに取られるくらいなら、自分達の手で壊しにかかったりするほど重い女性かもしれない。

 でも、俺は二人が好きだ。

 あれこれ考える間も与えられないまま、答えを出す前に、喰われてしまったけど。

 だけど、どこが好きなんだと言われると上手く言葉には出来ないし、彼女達に対する愛はこんな愛です、なんて誰かに自信を持って言える事も出来ない。

 でも彼女達は彼女達なりの方法で、俺に思いを伝えてきた。

 なら、俺も俺なりの方法で、ちゃんと向き合って二人に"好きだ"、って事を伝えなきゃいけない。

 例え、どんなに時間が掛かろうとも、どんなに難しいものだとしても。

 どんな形であろうと伝えなきゃ駄目だ。

 それが俺のするべき事だろう。

  … …でも、いったいいつからなんだろうか?

 小冬里と小冬音があんな風に怖くなったのは。

 お袋達が関係しているのは確定として、本当にいつからだ。 

 此方に向かって、駆け足でくる小冬音と小冬里の見た目は普通の高校生なのに。  



 「お待たせッス! 待ったッスかおにぃ!?」


 「思ったより遅かったな、結構待ったぞ」


 「どうしたんッスか? 目がいつもより死んでいるッスよ」


 「本当だ! いつもより3.14%腐ってる!!」


 「あんたらのせいで睡眠不足だよ… …」

   

 いや、やたらと性のつきそうな料理作ってた時点で薄々察してたけどさ。

 三回も九回も同じじゃ無いからね。

 ゴムの厚さは確かに夜の営みに関わるかもしれないけど、一夜にして二箱使いきるとか、俺を干からびさせる気か。

 イケる、イケるじゃないのよ。

 違う意味で逝ける。

 白く燃え尽きる。

 疲労度は倍じゃないのよ、二乗されていくんよ。

 … …ドラッグストアでエナジードリンクとか買っとこ。


 「ん?おにぃ?」


 スンスンと俺の服を嗅ぐと、小冬音は握り潰すようにジャージを掴んだ。

 

 「嗅いだこと無い臭いがするッスけどどういう事ッスか?」


 「へぇーお義兄ちゃん? 説明して? 僕達が壊さないうちに」

 

 二人の赤い瞳が真っ黒に染まり、表情から感情が抜け、無表情で此方を見ている。

 何回か見てるとはいえ、こればっかりはなかなか慣れない。


 「さっき急いでる人とぶつかったんだよ。それじゃね?」


 接触しただけで、匂いが付くかは知らんけど、それしか無い。

 にしても、男性ともぶつかっても駄目なのか.....。

 とこぞのファミコンのゲームかってぐらい、理不尽すぎるぞ。

 てか、あの滅茶苦茶慌てていた人、本当に大丈夫だったんだろうか?

 謝ってそのまま走り去っていったが、結構な勢いでぶつかったぞ。


 「… … …ふぅん、有罪ッス。上書きしなきゃだめッスねー」

 

 「お義兄ちゃんは誰の物か帰ったら教えなきゃ、僕達色に染め上げないとねー」


 「… … …お手柔らかに」

 

 いや、マジで理不尽すぎる。

 てか、そんなに匂い付くほどあのぶつかってきた人って誰かとイチャコラしてたか?

 まぁ、デートの待ち合わせに遅れそうとかだったら、あの慌てようは納得するわ。

 それはそれとして、今日も俺、寝かせて貰えないだろうな… … …。

 … … …夕飯はカキフライにしよ、冗談抜きで干からびる。

 

 「ん?」


 プルプル……プルプル……プルプル 、と突然ズボンの中に入れていたスマートホンが激しく震えだした。

 誰だろうか、と思いながらズボンのポケットに手を突っ込み、スマートホンを取り出だすと、非通知だった。

 

 「はい、篁です」


 「モシモシ……アタシ……メリーさん。今… …」


 「あぁーすみません、間に合ってます」

 

 ツゥ――― ツゥ―――


 向こうが全てを言い終わる前に、通話終了ボタンを押した。

 どうやら間違い電話のようだ。

 誰にだってメリーさんとか言う都市伝説的な人から間違い電話がかかってくることはある。

 気にしないでおこう。

 ちゃんと、着信履歴にも残ってないし問題ない。

 つまり、何も無かった、うんそうしよう。


 「―――おにぃ?」


 「―――お義兄ちゃん?」


 普段より声のトーンが下がりきった二人の声を聞いた途端、時が止まった気がした。

 背中に突き刺さる氷柱のような冷たい威圧感。

 心臓を鷲掴みされているかのような圧迫感。

 冷や汗が頬を伝わる。

 死ぬ、今振り向いたら死ぬ。

 確実に殺される。

  

 「電話の相手は誰ッスか? 女性ッスよね? 私達に紹介してもらってもいいスッか?」


 ………紹介も何もどうしろと。

 ウィキペディア調べてくれとしか言えないけど。

 

 「ねぇお義兄ちゃん? 電話の相手は誰なの? どんな関係なの? 知り合いなの?友達なの? 彼女なの? 確認しなきゃいけない事はまだいっぱいあるんだよ? 事と次第によって相応の対応をしなきゃ駄目だからね。だんまりするならあの手この手で無理やり吐かせるからお勧めはしないよ?」


 「… … … … … …臼田の悪いイタズラ電話だよ。あいつ女性の声真似上手なんだよな。文化祭の劇の練習とかで、女装したあいつに告られた時、あまりのクオリティーの高さにマジで惚れかけたわ」


 「へぇ… … … 今日って臼田さん、お休みッスか?」

 

 「休みだぞ」


 瞳孔が開いた状態で相槌を打つ小冬音に対して、小冬里は不適な笑みを浮かべながら指をポキポキならしていた。

 ごめん、臼田。

 今度、焼き肉奢るわ。

 

 「とりあえず荷物車に突っ込んだら、千円やるからあそこの自販機で何か買ってこい? 俺はいつものエナジードリンクで。なければコーヒーでいいや」

 

 「任せるッス! タイタニックに乗った気分で待ってるッスよ!!」


 いや、それ沈むやつ。


 「違うよお姉ちゃん、メリー号だよ」


 いや、燃えるやつ。

 わいわい話ながら、颯爽と鞄を後部座席に入れ、財布から取り出した千円を受け取ると自販機に向かって、二人は走っていった。

 … … … さて、エンジン掛けて待ってるか。 

 その間に、臼田にメールしとかねーと。

 俺は車に乗り込み、座席に放り投げてた鍵を手に取って、エンジンを掛けた。

 


 ――――――――




 篁がキーを捻った。

 ①番 その行動によってエンジンが始動し、篁はラジオ等の電子製品が使用できる上に自由自在に車を操れる。

 篁がキーを捻った。

 ②番 その行動によってエンジンが始動せず、篁は自由自在に車を操れないがラジオ等の電子製品は心置きなく使用できる。

 篁がキーを捻った。

 ③番 篁の行動によってスパイ映画のワンシーンのようにいきなり車が大爆発を起こし炎上する。


 キーを捻った事によってこの三つのパターンが考えれられる。

 しかし、③番の【スパイ映画のワンシーンのようにいきなり車が大爆発を起こし炎上する】、と言った可能性は零であろう。

 何者かが誰かが細工をしていれば話は別だ。

 だが、車で幼馴染を迎えに来ている篁はずっとドアにもたれかかって待っていたのでその可能性は限り無く低い。


 爆発する可能性をのけると残りのニパターンだろう。 

 だが、②番はエンジンを始動させないACC電源であり、篁が幼馴染を家に送るために車を操ろうとしているのでその可能性はないだろう。


 消去法でいけば、キーを一気に捻ってセルモーターを回しエンジンを始動させる①番のみであろう。

 プッシュスタートタイプでない車の場合、エンジンを始動させたい時には息を吐くような感覚でイグニッションキーを一気に捻る。

 それは誰もが知っている事と言っても過言では無いだろう。

 当然、その行動によって起こる結果も誰もが知っている。

 あえて、その結果を聞くならば、

 『キーを一気に捻ってたらどうなるか? どうなるって、バッテリーが上がってなければエンジンがかかるだろ』

 多少違いはあれど、だいたいこのような返答が返ってくる。

 "イグニッションキーを一気に捻ったらエンジンがかかる"。

 その結果のみだ。

 それ以外に無い。

 だが篁の場合、いや、今回の場合は結果は違ったのだ。


 「… … … … … …はぃ?」


 突然の出来事に篁はそう言葉を発した。

 篁を中心に広がるのは先程の国道やお店の看板などが見えるフロントガラス越しの光景ではなく、東アジア北部にあるような大草原。

 均等に伸びている草しか生えておらず山なければ池や湖もない無限に続くサッカーコートのような大草原。

 空には雲一つない青空が広がっているわけではなくただ、雲ではない真っ白なものが広がっている。

 だが、晴天の時のような視野や明るさがある不思議な空間だ。


 そんな不思議な空間で、篁が立っている位置は直径が6メール、高さが40センチぐらいの石造りの円形の古墳みたいな場所で彼には理解不能な魔法陣が描かれている。

 そんな摩訶不思議な魔法陣のちょうど中心の位置だった。

 そして、篁の視線の先には謎の美少女がいた… … …。

 なら、どれほど良かっただろう。

 残念ながら、誰もいない。

 いくら彼が考えようが、発狂しようが、何をしようが結果は変わらない。

 篁、ただ一人だけ。

 それ以上でも、それ以下でもない。

 篁、ただ一人だけだ。


 篁がイグニッションキーを一気に捻った事で起きた結果は車が爆発したことでも、鍵が折れた事でも、エンジンがかからなかった事でもなかった。

 ただ一人、違う世界にいると言う非現実的な結果だった。

 あるいはタイムトラベルかもしれない。

 あるいは第三者による異世界召喚かもしれない。

 あるいは今までのは夢だったのかもしれない。

 いずれにせよ、夢であった場合を除けば、そのような事が起こる確率は、隕石が頭に直撃する、雷に撃たれる、運命の人に出会うなどそれらの天文学的確率と同等、あるいはそれらより更に低いと言えるだろう。

 その確率を分かりやすく例えるなら、約3.2%と噂されているガリ○リ君の当たりを1日一本、10年連続で、引き当てる事かもしれない。 

 いったいこれは異世界召還なのか、またはタイムトラベルか、はたまた今までのは胡蝶の夢だったのか… …そんな事はぶっちゃけると、どうでも良い。

 どちらにせよ、知らない土地に自分の身1つ、頼れる人は誰1人いないだろう。

 おまけに現代あるいは元の世界のような文明があると保証できない。

 地球と全く同じ環境だという保証もない。

 今まで出来ていた暮らしができる保証もない。

 些細な事が原因で殺されるかもしれない。

 些細な事がきっかけで死ぬかもしれない。

 太平洋のど真ん中で難破するよりも、霧が立ち込める悪天候の山脈で遭難するよりも遥かに危険な状況に彼は今陥っていると言えるだろう。

 そんな危機的状況下の彼に声をかけるとすればこうだろう… … …



 Welcome to this endless world

 ようこそ 果てしなきこの異世界へ。





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