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タイムワープ

作者: たちかぜ

『タイム・ワープできます』

 町でみかけた不思議な看板。いつも塾の行き帰りに通っている道のはずなのに、ボクは今日初めてそれに気がついた。なんだか、すごく興味がわいて、ボクは看板をじっとみつめた。

 でも。でもタイム・ワープなんてできるわけないよな。どんなに科学が進歩しても、タイム・ワープはできないって話聞いたことあるし。

 そのまま塾に行こうとしたけど、気になって気になって、ボクはその店に行ってみることにした。ちらっとのぞいてみて、アヤしい店ならそのままダッシュして逃げればいい。

 店はすぐにみつかった。小さな店で、そう、前母さんと入った喫茶店みたいな店。でも看板はなく、窓のところに『タイム・ワープできます』と紙がはってある。

「タイム・ワープに興味ある?」

 突然その窓がガラってあいて、女の人がボクに言った。ボクはびっくりして、うわあっと一歩下がってから、女の人に聞いた。

「本当にできるの?」

「もちろん。ただし未来にしか行けないけど。どう? タイム・ワープ経験してみる?」

 誰でも簡単にできるわよ、お金なんかいらないわって言葉に誘われたわけじゃないんだけど……ボクはその店に入っちゃったんだ。

 店の中はまっくらだった。ちょっと後悔しかけたとき、「ストップ。そこで止まって」と女の人の声がした。

「どれくらい先の未来がみたい?」

「こ、高校生ぐらい」

 兄ちゃんが今、高校生ですごく楽しそうだから、ボクも早く高校生になりたいっていつも思ってたんだ。

「じゃあ、足を軽く一歩前に踏み出して。……そう、それでそのままじっとしてて。すぐにタイム・ワープできるわ」

 その言葉通りかわからないんだけど、ボクは意識がすーっと遠のくのを体験したんだ。

「……ル、トオル。起きろよ」

 聞き覚えのない太い声に、ボクは飛び起きた。とたんにどっと笑い声。え? ボク制服着てる? ここ教室? 高校?

「トオル君、教科書38ページ」

 机の上に置いてある教科書を、ボクは慌てて手にもったけど――読めないよ。ボクまだ小3だぞ!? ボクは「読めません!」と叫んで教室を飛び出した。後ろで呼びとめる声がしたけど、かまうもんか。ボクは夢中でタイム・ワープの店まで走った。店のドアをバタンとあけ、ボクは暗闇に叫んだ。

「もとに戻してよ!!」

「……特別よ。後ろに軽く一歩下がるの」

 ボクはすぐに言われた通りにした。

 看板の前にボクは立っていた。そのことに気付くと、ボクはダッシュで家に帰った。夢だと自分に言い聞かせようとした矢先に「どこ行ってたの?!」と母さんの怒鳴り声。

 ボク、今日は塾行ってないんだけど。     

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