【18】ナツ=リナとリン=スライス
「その女の子の様な名前で呼ぶなって言ったろ。俺はSlingerって名前があるんだからよ。」
と俺はちょっとしたツッコミ的な感じで言う。
「別に良いじゃん!可愛いし。」
とナツは笑いながら俺と交互に喋っていく。
「いや、良くないからな!ってなんか、懐かしいやり取りだな。」
「そうだね~。もう1年ぐらい前になるのかな~。」
ナツとはVRMMOをやる前にやっていたPCゲームで5本ぐらい同じゲームをやっていた友達だ。
女性キャラをよく使っていたがVRで初めて声を聞いた時に確信した。まさか現実でも女性だったとは...
PCでやっていた頃はチャットのみだったし、チャットとボイスで喋り方が違っててずっと男だと思っていた。
「そうだな。俺もお前がVRをやっているなんて知らなかったしな。」
と俺はその女の子と話を続ける。
「私ね。チャットだと、男っぽい喋り方するでしょ?」
「ああ。」
「でね。態度も男っぽいとこあるでしょ。」
「ああ。」
「だからね。もしかして、私が女だと気づいたら、態度を変えるんじゃないかと思ったの。全く喋らなくなって、無視するんじゃないかって...」
とだんだん声が小さくなって、下を向き始めた。
その時、俺はこう答えた。
「いや、まあ確かにずっと男だと思っていたよ。だがな。チャットとボイチャで喋り方が違ってようが、男だろうと女だろうと、ナツはナツだろ。」
「ははっ。ラブコメの主人公がいかにも言いそうなことを言うんだね。こんな王道なこと言われても泣かないと思っていたのに、いざ言われると結構ジーンとくるものだね...」
と涙を手で拭いながら喋っていた。
俺はしばらく喋らず、泣き止んで落ち着くのを待った。
あれから、3分ほど待っただろうか。
「少し落ち着いたか?」
と俺はナツに聞く。
「ええ、まあ。少しは…」
と泣き止んではいるが、目の下が少し赤くなっているナツはそう答えた。
「そうだ。改めて自己紹介させてくれない?前とは違う名前だし。」
とナツは話し始める。
「ああ、構わんよ。」
と俺も答える。
「私の名前はLina。これからはナツ改め、リナって呼んで。あとは...BCOの起動時間は毎日4時間ほどかな。夜の8時から12時までやってるよ。」
「へぇ、意外と短いんだな。昔は深夜2時までやってたのに。」
「ちょっとね。忙しくなったからね。あと、VRって意外と疲れるし。」
「そうだな。PCゲーム。いや、オンラインゲームって言った方が良いかな。その時と比べて、5感全て使うから疲れるかもな。」
「そうなの!でもね。それが面白いんだけどね。」
「そうなんだよな。それが面白いし、楽しい。」
「それで、リンのBCOでの名前は?ス・ラ・イ・スで合ってるのかな?」
「ああ、スライスで合っている。これからその名前で呼んでくれ。リナ。」
「うん。よろしく、スライス~。」
とリナは微笑みながら、俺に言った。




