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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第3章 元ゴブリンと魔族大陸と幼馴染魔王
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87話 暴走のようです その2

 トモエの【時空間魔法】によって亜空間へと転移したシーツァは、視界が切り替わった途端いつの日か見たどこまでも広がる白一色の空間に立っていた。

 前回ウィツィロポチトリとの決闘の時は周囲にトモエやソーラ、アイナにシリル、それに四魔将の面々がいたが今この空間にいるのはシーツァと離れた所に暴走状態のソーラがいるのみである。未だ叫び声を上げながら周囲に極低温の冷気を放出し、土でもない亜空間の地面に当たる部分すら凍りつかせていた。

 魔族大陸の時と同じく時間を追う毎にシーツァの周囲の温度が低下していき、すでに肌寒さを感じるレベルから吐く息が白くなる程までになっている。


「うー寒い。流石にこのままじゃ風引くな。さっさと何とかしないと」


 そう1人呟くと【異次元収納(アイテムボックス)】から出陣前にソーラから渡されていたMPポーションを取り出し飲み干す。さわやかな喉越しとリンゴジュースにも似た味わいのポーションを一気に飲み干すと空き瓶を【異次元収納(アイテムボックス)】に入れ、自らの周囲に熱で作られた膜を展開しソーラから放たれる冷気を緩和する。因みに通常ポーションやMPポーションは製作するための材料の影響もあり非常にドロッとしており、青臭さと蘞味(えぐみ)が酷く、ありていに言えば非常にマッズイのである。しかしソーラが転生の際に貰ったチートスキル【道具作成】から進化した【道具作成・改】によって作られたMPポーションは作り出したソーラのイメージもありポーションの類は非常に飲み易く、子供でも飲める程においしくなっていたのであった。


「これでやっと落ち着いたな。さっきは殆ど動けなかったからポーション飲む事もできなかったんだよな。寒さに関しては【熱の膜(ヒートベール)】があるからしばらくは大丈夫だろ。問題はソーラをどうやって正気に戻すかだよなー」


 絶え間なく極低温の冷気を発しているソーラを見ながら1人呟く。のんびりと喋っているようにも聞こえるが内心かなり焦っておりそれを誤魔化す為だとは本人も気が付いていない。何せこのままではソーラの命に係わる事態になりかねないとシーツァ自信そう思っているからだった。


「とりあえず現状のステータス確認しとかないとな。何も分からないんじゃ何もできないし」


名前 ソーラ ♀

種族 鬼族:雪綺鬼(せっきおに)

状態 暴走

Lv 72

HP 2816/2816 (+2000)

MP 1028/8966 (+5000)


攻撃力 2521 (+2000)

防御力 2437 (+2000)

魔力  7921 (+5000)

魔抵抗 7888 (+5000)

速度  2319 (+2000)

運    400 (+140)(+10)


特殊スキル

【異世界言語】【スキル習熟速度倍加】【異次元収納(アイテムボックス)】【看破】【道具作成・改】【仲間の絆】【月読(ツクヨミ)


強化系スキル

【最大HP超上昇Lv.4】【最大MP超上昇Lv.10】【神力Lv.4】【城壁Lv.4】【魔神Lv.10】【韋駄天Lv.4】【幸運Lv.7】


攻撃系スキル

【精密射撃Lv.8】


防御系スキル

【防音Lv.2】【状態異常無効】【気配察知Lv.5】【気配遮断Lv.5】


魔法系スキル

【火炎魔法Lv.10】【水流魔法Lv.10】【氷結魔法Lv.10】【土流魔法Lv.10】【旋風魔法Lv.10】【回帰魔法Lv.10】【物理魔法Lv.10】【光輝魔法Lv.10】【神聖魔法Lv.10】【深淵魔法Lv.10】【消費MP1】【魔力感知Lv.10】


武技系スキル

【剣鬼Lv.2】【槍術Lv.6】


技能系スキル

【飛行】【空間機動】【倍加(ブースト)】【鷹の目Lv.2】


自己回復スキル

【HP自動回復Lv.8】【MP自動大回復Lv.10】【超再生】


称号

【スキルコレクター】【大鬼殺し(オーガキラー)】【魔物の天敵】


【月読】:所有魔法関連スキルを全て最大レベルに引き上げ魔法の威力に極大補正



「マズイな……。進化の時に覚えたスキルの影響で魔法関連のスキルが軒並み最大レベルになってるし……。ステータスも魔法関係なら俺なんかよりもずっと強い。正直勝てる気はしないがそんな事は言ってられないか。一刻も早くソーラを助けないとな!」


 現在もぐんぐんと減っていくMPに考えてる時間は無いと判断したシーツァは【熱の膜(ヒートベール)】を展開したまま一直線にソーラへと駆け出した。

 近づくにつれて周囲の気温も更に下がりそれでもなおソーラへと近づいていくと、後10mといった所シーツァに変化が現れる。正確にはシーツァの展開している【熱の膜(ヒートベール)】に。

 凍っていくのだ。シーツァの魔法により冷気を遮る為に作り出された膜が後少しでソーラにたどり着くといった所で急速に凍りつき始めてきた。


「ウソだろ! 魔法で作り出したんだぞこれ! 熱で作り出した膜を凍らすってなんでそんなことが出来るんだよ!」


 驚愕に1人叫びながら慌てて【熱の膜(ヒートベール)】に使用している魔力を増やし何とか解凍することに成功する。しかし近づくにつれて凍りつくのを防ぐための魔力が増えていきシーツァの顔に確かな焦りが浮かび上がった時に再び変化が現れた。

 焦っていたシーツァは気が付いていなかったが放出される冷気は今も放出されているがすでにソーラの叫び声は止んでおり、光の無い瞳をシーツァに向けている。そして彼我の距離が5mにまで縮まると突如シーツァに向けて手を突出し、そこから無数の氷の弾丸を打ち出してきた。


「うぉ!? 今度は氷塊か、てか数が多すぎるだろ!」


 氷の弾丸と言えばせいぜい小石程度の大きさを想像するだろうが今撃ち出された物は1つ1つがシーツァの頭と同じぐらいの大きさをしており、1つでもまともに食らえばよくて死亡、悪くて原型を留めないで死亡するだろう威力を秘めていた。

 咄嗟に横に跳んで避けるもののすぐにシーツァを追いかけるようにして手を横に動かし追加の氷弾を打ち続ける。そして襲い掛かる弾丸を避け続けていくうちにいつの間にかシーツァとソーラの距離が離れた為か氷の弾丸による迎撃が止み、シーツァのいる方向を光の灯っていない瞳で見続けていた。


「とりあえず接近しなければ迎撃はしてこないって事か……。けど接近しない事にはどうしようもないしな……」


 どうすれば現状を打破できるか思案しているシーツァが視界の隅に表示されたままになっているソーラのステータスを見て考えている時間が既に存在しないことに気が付いた。

 表示されているソーラのMPが0になり、そして無くなったMPの代わりにHPを消費し始めたのだ。進化によってかなり最大値が増えたMPと違いHPはそれほど増えていない、つまり時間がもう殆どない事を意味していた。


「くそっ! こうなったら一か八かだ!」


 【特殊武具作成】で【火炎】属性と【切断強化】を付与した片手剣と【衝撃軽減】を付与したタワーシールドを作り出し、握り具合を確かめると盾を構えソーラへと向かってシールドタックルの要領で一気に距離を詰めていく。途中盾にガンガンと音を立てて氷塊が激突しているのが手に伝わる振動と共に分かるが、盾に付与した【衝撃軽減】のおかげもあり走るのにそれほど支障はなかった。


「よし! これならいける――ガッ!?」


 突如今までとは比べ物にならない威力の衝撃に吹き飛ばされるシーツァ。地面に激突する寸前に目に入ったのは先程まで撃ち出されていた氷塊とは比べるのも馬鹿らしくなるほどに巨大な氷塊だった。

 そのあまりの威力に衝撃を軽減するはずの盾は(ひしゃ)げ、盾を持っていたシーツァの左腕もあり得ない方向に複数回曲がっており、骨が無事ではないことが良くわかる。逆を言えば【衝撃軽減】があったからこそこの程度で済んでおり、なければ今頃シーツァは完全に潰されてこの世を去っていただろう。それほどまでに強力な一撃だった。


「ぐ……早くしなきゃならないってのに……。早くしないとソーラが……」


 受けた衝撃で振るえる体を何とか起こし【回帰魔法】を使い左腕を元に戻す。そして先程まで右手に持っていた片手剣を左手に持ち替え、巨大な氷塊対策に以前作成した込めた魔力で刀身を伸ばす剣を【異次元収納(アイテムボックス)】から取り出すと再びソーラへと向けて駆け出した。

 シーツァに向けて放たれる氷弾を両手に握る剣で次々と斬り落すが数の多さもあり対処しきれなかった氷がシーツァの腕や足に突き刺さる。しかしそれを気にすることなく一心不乱に剣を振り氷を斬り落しながらソーラに近づいていった。

 距離が徐々に縮まっていき、先程シーツァに重傷を負わせた巨大な氷塊がシーツァの視界を埋め尽くす。しかし先程とは違い、冷静に右手に握る剣に魔力を流し込み、その刀身を伸ばすとそのまま一刀の下に巨大氷塊を真っ二つに斬り分けた。

 背後で地面に落ちる巨大な氷塊の音を聞きながらとりあえずソーラを気絶させようと手を伸ばすと後ほんの少しで手が届くといったところで突如現れた氷の壁に行く手を阻まれる。透明度の高い氷の壁を壊そうと剣で斬りつけるが、表面に傷をつけるだけに終わってしまった。


「―――――――もる」


「!?」


 それでもあきらめずに壁を斬りつけようとするとシーツァの耳にふと小さな声らしき音が聞こえてくる。剣での攻撃を止め耳を澄ませてみると、小さくはあるが確かにソーラが発している声であることが分かった。


「私が―――――守る」


「私がシーツァを守る」


「私がシーツァを傷つける者から守る」


 繰り返される言葉はシーツァがウェウェコヨトルに重傷を負わされた時に何もできなかった事に対する後悔か、それともただ純粋に大事な人を守りたいという意思か、はたまたシーツァを傷つける者に対する憎しみか。暴走して感情が凍結しているかの様な状態でなお力の籠もった言葉にシーツァの胸が熱くなるのを感じる。思わず流れそうになる涙を堪えながら湧き上がる力を氷の壁にぶつけた。

 ガラスが砕ける様な甲高い音と共に壁が砕け、それが発動の鍵だったのか突如として吹き荒れる風にシーツァが飛ばされ距離が若干できる。距離が離された事に歯噛みするシーツァだったがソーラのHPが半分を切っている事に覚悟を決め今出せる最高の速度でソーラに向けて駆け出した。


「私がシーツァを守る!」


 ソーラの口放たれる先程よりも力強い言葉と同時にシーツァへ向けて無数の鋭い氷の棘が襲い掛かる。しかし対処している時間も惜しいとばかりに速度を落とすことなく駆けて行くシーツァの体に次々と氷の棘が穴を開けその体を地に染めていった。


「ソーラ! 俺はここにいる! もう大丈夫だ! だから早く目を覚ませ!」


 血を吐きながらも穴の開いた箇所を【超再生】で修復するがすぐに撃ち込まれた氷の棘がシーツァの体に穴を開けていく。そして徐々にMPが枯渇していき修復もままならなくなったところでようやくソーラに辿り着くことに成功した。


「ソーラ! ソーラ!!」


 光の灯っていない瞳を見つめながら名前を叫び肩を掴んで揺さぶるがソーラの暴走が止まる様子もなく、いまだにシーツァの体に氷の棘が零距離で襲い掛かっている。

 すでにMPは尽き【超再生】による体の修復も止まった為シーツァの体はいたる所に穴が開き、無事な箇所は頭ぐらいであろう。穴が開いていないというだけで角は折れ、顔中血だらけになってはいるが。

 体の感覚が徐々になくなっていき、血を流し過ぎたため意識が朦朧とする中シーツァは最後の手段という名の賭けに出た。


「ソーラ、頼む、目を覚ましてくれ……」


 そう言って己の唇をソーラの唇にやさしく、しかししっかりと押し付ける。途中こみ上げてきた血液がシーツァの口から溢れソーラの口内へと入り込んでいくとその喉がコクリとシーツァの血液を嚥下し体内に取り込んでいった。

 すると今までシーツァを襲っていた氷の棘が止まり、ソーラの瞳にうっすらと理性の光が戻ってくる。


「シー……ツァ……?」


「ああ、良かった……元に戻ったんだな……」


 いまだ焦点の合わない瞳でシーツァの名前を呟くソーラ。その姿を見て暴走が治まった事を確認したシーツァは、視界の隅に映るソーラのHPが残り僅かにはなっているが無事に生きている事に安堵すると、急速に意識が遠のく感覚に身を任せそのまま意識を暗い闇の中へと手放した。

ちょっと無理矢理な展開かもしれませんが、登録キーワードにもある通りご都合主義な作品なのでご容赦ください。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

ブックマークが徐々に増えていきとても励みになっています。

次回で今の章はラストになる予定です。

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