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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第3章 元ゴブリンと魔族大陸と幼馴染魔王
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77話 トモエとの夜のようです

最近暑いですね。私の部屋はクーラーという文明の利器が存在しない為未だに扇風機が現役です。暑い為熱風しか送ってきませんが……。早く秋にならないですかね。

今回少し短いです。

 女性陣と共に温泉を堪能したシーツァは脱衣所に戻ると体を拭き、腰にタオル1枚を装備した状態で小さな冷蔵庫らしきものを開ける。その中には期待通りの物が冷やされていた。そう、銭湯等でお馴染みの牛乳瓶が。

 1つ取り出し紙蓋と外すと腰に手をあて、冷やされた牛乳を一気に飲み干していく。

 喉を通り抜ける冷たい牛乳の感覚が火照った体には丁度よく、ゴクッゴクッと喉を鳴らして飲んでいるとすぐに無くなってしまった。


「ぷはーっ! やっぱり風呂上りの牛乳は最高だな! まさか異世界に来てまで飲めるとは思わなかった」


 口の周りに白い髭を作りながら周囲を見回し、ビンを置く場所がないことに気がついたシーツァは空になったビンを【異次元収納(アイテムボックス)】に入れた。

 その後いそいそと服を着て脱衣所から出るとまだ女性陣は着替え中らしく誰もおらず、しばらく廊下で手持ち無沙汰にしていると楽しそうな会話をしながら浴衣姿の女性陣が脱衣所から出てきた。

 うっすらとピンク色に上気した肌は温泉で濡れた肌とはまた違った色気を醸し出している。シーツァはそんな彼女達に興奮しているのを悟られぬように平静を全力で装い宛がわれた部屋を目指して歩いていく。

 巨大な廊下を取り留めのない会話を楽しみながら歩き部屋の前まで辿り着くとトモエは自分の私室へ、シーツァ達は元護衛の兵士達の部屋に入った。

 部屋の中へ入ったシーツァ達が目にしたのは先程のうっすらと埃を被った部屋ではなく、綺麗に掃除されている部屋であった。

 床や家具は1つを除いてそのままであったがベッドだけは違い、どうやって中に入れたのかキングサイズのベッドが2つ寄り添うようにくっつけられ、4人が一緒に寝るのでもまったく窮屈になることはなさそうである。


「ねぇシーツァ、これからどうするんです?」


「ん? どうするって何が?」


 4人でベッドの上に座り込み、談笑していると今まで会話に参加しないで何かを考え込んでいたソーラが唐突に切り出してきた。真剣な表情をしていることから真剣な内容であることは容易にうかがえる。


「このままここに留まるのかって事ですよ。シーツァはトモエさんの側近になったけど、もしかしたら軍団の統括になってたかもしれないんだよ? 魔族の軍ってことは恐らく人間と戦うんだよね……? いくらシーツァが強いって言っても万が一の事があったらと思うと……」


 徐々に悲しげな表情になってくるソーラ。恐らく最悪の予想をしてしまっているのであろう。シーツァはそんな彼女を安心させるようにやさしく抱きしめた。


「大丈夫だ。俺はちょっとやそっとじゃ死なないし、それにソーラ達も一緒にいてくれるんだろ? それに俺達が魔族である以上人間と戦わないで生きていくなんてのはほぼ不可能だ。ウーフツの街の連中を見ただろ? 一部例外もいるが大多数は魔族を恐れ嫌う。それに戦わないで逃げ続けるってのも出来るかもしれないが、俺はずっと怯えて逃げ続けるなんてのは絶対に嫌だしな」


「シーツァ……」


「だから俺はここにいるよ。ここには四魔将っていう強い味方もいるし、そいつ等に率いられている軍団もある。人間達と戦争になっても多勢に無勢になる事はないだろうしな。それにここにはトモエもいる。折角再会できた幼馴染とまた別れるのは嫌なんだよ。俺のワガママでソーラとアイナとシリル、3人を巻き込んでゴメンな」


「そんなこと無い。私こそ少しネガティブになってました。私もずっと怯えながら逃げ続けるのは確かに嫌だし、それにトモエさんもやさしいから私も力になりたいよ」


「私は~、シーちゃんがいる所にいるよ~? ここにいるって言うなら~、私は大歓迎~。温泉気持ちよかったしね~」


「がぅ、私はシーツァに従うぞ。戦うのも嫌いじゃない」


「ありがとうみんな」


 好意的に受け止めてくれる3人をシーツァは今の気持ちを代弁するようにまとめて抱きしめる。そしてソーラ達もお返しとばかりにシーツァをやさしく抱きしめた。

 そしてこのままベッドに4人で倒れ込もうとしていた時、シーツァの背後から突然トモエの声が聞こえてきた。


「あらあらいい雰囲気ね。御邪魔だったかしら? あ、ソーラちゃん達、今夜一晩暁を借りるわね?」


 驚いたシーツァが背後を振り向くと空間に丸く穴が開き、そこから上半身を出しているトモエの姿があった。

 にやにやしながらこちらを見ていたトモエは一言ソーラ達に断りを入れると、返答も待たずにシーツァの襟首を掴んで自分が空間に開けた穴に引きずり込んだ。


「じゃ、明日の朝にはちゃんと返すから。今日は2人っきりにさせてね」


 そう言い残して穴に体を引っ込めると空間に開いた穴は小さくなっていき、そのまま何もなかったかのように消え去り、後にはポカンと呆気にとられたソーラとあらあらうふふと笑っているアイナ、シーツァがいないならとそのままベッドに横になって寝始めたシリルの姿があった。


 トモエによって穴の中に引きずり込まれたシーツァは背中からやわらかい物の上に落下した。

 部屋の周囲を見渡してみると見覚えがあり、どうやらトモエの私室に連れてこられたようであった。


「いきなり何するんだよトモエ。危うく首が締まるかと――」


「暁!」


 突如抱きついてきたトモエにシーツァは「ぐふっ」と変なうめき声を上げながらベッドに押し倒される形になる。幸いベッドが大きかった為お約束のように後頭部をベッドの縁にぶつけるようなことはなかった。

 しばらくシーツァの胸に顔を擦りつけるようにしていたトモエが顔を上げるとその顔は赤く染まり、瞳も妖しい色を帯びていた。


「暁、私ね、地球にいた頃はずっと暁と一緒にいたでしょ? 私はそれが当然でずっと続くって思ってたの。一緒に大きくなって、いつか結婚して、一緒におじいちゃんとおばあちゃんになってって思ってた。だからずっと1つの事を言わなかったの。言わなくてもずっと一緒にいられると思ってたから。でも暁はいきなり死んじゃって、私は言わなかった事をずっと後悔してたの。それで異世界で奇跡のように再会できた。だから言わせて、私はね、ずっと暁の事が好――んぐっ!?」


 トモエが「好き」と言おうと瞬間、それを遮るようにシーツァの唇がトモエの唇を塞いだ。

 目を見開き突然の事態に目を白黒させているトモエは軽いパニックを起こしジタバタする。それを抑え込みながらキスを続けているとやがてトモエもされるがままになっていった。


「ぷはっ、いきなり何を――」


「やっぱりさ告白とかは男の方からした方が良いと思うんだ。言わなかったのは俺も同じだからな」


 ようやく唇が離れて、自分の一世一代の告白を遮ったシーツァに抗議の眼差しを向けるトモエ。そんな視線を受け流しながらシーツァは押し倒された体を起こし、トモエと対面する形に座り両手で肩を掴むと真剣な眼差しで見つめながら口を開いた。


「俺はトモエの事が好きだ! 前世の時からずっと! だから俺とずっと一緒にいてくれ!」


「――!? うん! これからはずっと一緒だよ!」


 嬉しさのあまり瞳にいっぱいの涙を溜め、今度はトモエの方からシーツァに勢いよくキスをした。

 そんなトモエを受け止め、お互いに熱いキスを交わす。そしてシーツァはそのままトモエをベッドに押し倒した。普段とは違い、寝る前だった為か解かれていた真紅の髪は扇状にベッドに広がり、男の興奮を強く掻き立てる。


「きて」


 仰向けの状態で両手を天に向けシーツァを誘うトモエに上から覆いかぶさるように再びキスを交わす。互いの舌を使い唾液を交換するように情熱的なキスをしているうちに互いの興奮は最高潮に高まっていった。

 やがて思い出したように魔法で部屋の明かりを消すと、部屋の中は暗く闇に覆われ互いの存在のみを強く確かめ合う。こうして地球で結ばれることのなかった暁と巴は異世界に来てシーツァとトモエとなり初めて結ばれたのであった。

はい、本当にシーツァ君はいつからこんなに気障ったらしくなったんですかね。もっと違う子だったと思うんですが……。彼女いない歴=年齢の私としては経験のない部分はもう想像とかで書くしかなく、リアリティに欠けると思います。まあ今までがリアリティあったのかと言われればそれまでなんですが……。

とりあえず暁と巴は異世界でようやく結ばれました。良かったと思います。

因みに文中でトモエの名前を巴と表記していますが誤字ではありません。地球でのトモエの名前は小鳥遊(たかなし) (ともえ)だからです。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

ブックマーク大変励みになっています。何か気になることがありましたら遠慮なくお願い致します。

この章もそろそろ終わりに近づいてきましたが引き続き宜しくお願いします。

追伸 大変申し訳ありませんが一身上の都合の為8/5の更新はお休みさせて頂きます。次の更新は8/7になります。

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