75話 魔族誕生の話のようです
ポケモンGO楽しいですね。仕事明けに公園に寄りポケモンをGETする日々を送っています。この間10km卵からカビゴンが孵化し、現在私の手持ち最強になっています。
早く伝説のポケモンとか金銀以降のポケモンでないかな……。サーナイトが欲しいんです。
四魔将達が会議室から出て行き、残ったのはシーツァ一行とトモエとその側近であるトラソルテオトルの計6名である。
そして今会議室にはトモエの笑い声が響き渡っていた。原因はシーツァが会議室のテーブルにずっこけた際顔面を強打し、突然の痛みに呻きながらゴロゴロと床を転げ周っている様子を見た為である。
その様子をソーラは心配そうにシーツァを見ながら時折腹を抱えて笑い続けているトモエを睨み、アイナは頬に手をあてあらあらうふふと微笑み、シリルは何処から調達したのか骨付き肉に噛り付くのに夢中だった。
「アッハハハハハハハ! 暁! あんた異世界に転生してもドジなところは治ってなかったのね。バカは死ななきゃ治らないって言うけど、ドジは死んでも治らなかったのね!」
「うるっさいわ! お前がこっちの出鼻挫くような事言うから転けたんだろうがっ! あー痛ぇ、ってか笑いすぎだから! いい加減笑うのやめろ!」
赤くなった鼻頭を押さえ、痛みの所為で若干涙目になりながらトモエに抗議するシーツァ。トモエも笑いすぎで目に涙が浮かび、笑いすぎでお腹が痛くなってきたため漸く笑い声が収まってきた。
「ヒー、ヒー、あーお腹痛い。とりあえず暁達を呼び止めたのは部屋をどうするか決めるためだったのよ……ククク……。ケツァルコアトル達と会議室出て行っても何処に行っていいかわかんなかったでしょ?」
「そりゃそうだが……」
「それで、部屋の希望はある? みんな個室が良い?」
「4人一緒の部屋でお願いします!」
トモエの質問にいち早く答えたのはシーツァではなくソーラだった。勢いよく手を挙げるとシーツァを渡すまいと4人部屋を希望する。アイナとシリルも特に何も言わないことから異論はないようだった。
「4人部屋ね。トラソルテオトル、4人以上入れる部屋って私の部屋の近くにあったっけ?」
「トモエ様……あなた様はここに来られてからそれなりに経つのですからいい加減覚えてください。トモエ様の部屋の真正面が元護衛の兵士の部屋になっております。トモエ様が必要ないとおっしゃるので今は誰も使っておりません。あの部屋ならば4人でも十分すぎるほどに広いですし、少し掃除すればすぐにでも使えるでしょう」
「そっか。んじゃみんな聞いてたわね? 案内するから着いて来て頂戴」
トモエに従って会議室を後にするシーツァ達。再び巨大な廊下を歩いていると時たま他の魔族ともすれ違うことがある。城下の街で見かけたように多種多様な魔族がおり、中にはこの巨大な廊下の天井すれすれになっている種族もいたほどだった。
そしてしばらく廊下を歩いていると、シーツァはふと前にチャーチが言っていた事を思い出し、歩いてばかりで暇だったのもあり尋ねてみることにした。
「そういえばさ、前にチャーチが魔族は元々人間だったって言ってたんだけど本当なのか?」
「え? そうなの? 初耳なんだけど……。トラソルテオトル、何か知ってる?」
トモエは何も知らないようで、会議室を出てから一言も喋らず黙々と着いて来ていたトラソルテオトルに話を振る。するとその口からチャーチが言っていた事と同じくする内容の言葉が飛び出してきた。
「事実らしいです。伝えられている話通りでしたら魔族も基は人間だったようですね」
「そうだったの。詳しく教えてくれる?」
「かしこまりました。少し長くなりますがご容赦くださいませ」
トラソルテオトルはそう言ってコホンと一度咳払いすると魔族に伝えられている話を語り始めた。
「今より遥か昔の時代、まだ魔族や魔物が存在していない時代の話です。今の人間達の大陸と同じくこちらの大陸にも複数の人間の国家がありました。1つはこの大陸の約半分を占める領土を持つゴーマ帝国。そして小さい領土を持つ複数の国がありました――」
事の始まりは小さき国々の1つ、マジク小国の王が立ち上がり他の小国を侵略していったことから始まった。
マジク王国の若き王レイ・ガルバ・マジクはこのままでは自国や他の小国がいずれゴーマ帝国に飲み込まれることを危惧していた。
そして他の小国に対帝国同盟を結ぼうと働きかけたがどの国も現状が見えておらず、手を取り合うことをせずに自分達の国の版図をを少しでも広げようと小競り合いを続けていた。
頭を悩ませていたレイの元へ王国宮廷魔術師であり、マジク王国で知らぬ者などいない程に名の知れ渡った若き大賢者ルシフが現れ友人である王に進言した。
このままではこの国も小競り合いを続けている他の小国も帝国に飲み込まれる。レイが立ち上がり小国を纏め上げ1つの国にするしか帝国に対抗する手段はない。私も微力ながら力を貸す、と。
この言葉に今まで頭を悩ませていた王は決心した。自分が小国を纏め上げ、帝国に蹂躙されることのない国を作り上げると。
それから王は大賢者と共に兵を挙げ小国へ次々と宣戦布告を行い、王の用兵と大賢者の圧倒的な魔法を持って小国を併呑していった。
初めのうちは攻め込んできた王を攻め込まれた国の民は恐れ、いつ殺されるのかと恐怖に怯えていたが武器を持ち抵抗する兵のみを殺し、民には一切の手を出さない王を次第に歓迎していった。
いつまでも小競り合いを続け、重い税や働き手を国に取られ生活が困窮していた民は自分の国に酷い不満を抱えていたのである。
王はそんな民の生活の保障を確約し、民の心を掴んでいくと電光石火の如く愚鈍な王を殺し自国に併呑すると軍を吸収しまた他の国へ攻め込んでいった。
そして3年の月日が流れ、異常な速さで小国を全て併呑したマジク王国は国名をグランマジク大国と変え、レイもレイ・ガルバ・グランマジクと名を改める。
大国となった後も王は国を栄えさせる為に尽力し、ルシフも王の傍らで共に政を行った。
王と大賢者の尽力もあり、戦で疲弊していた国は徐々にではあるが繁栄の一途を辿りる。
そして月日は流れ、グランマジク王国の最初にして偉大なる賢王と讃えられたレイも歩み寄ってくる老いには勝てず、病に倒れた。
寝室で臥せっている王の傍らには彼の唯一の妻にして正室であるララン王妃、王の息子である第一王子のロイ、そして王の友である大賢者ルシフの3人が集まっている。
王は妻に先に逝く事への謝罪を、王子には王位を譲る旨と大賢者と共に力を合わせて国を繁栄させるようにと、友である大賢者には向後を託す旨と最後に彼の老いたとはいえ自分よりも圧倒的に若い、有り余るほどの魔力と【時空間魔法】の副作用か老化が圧倒的に遅い友へのからかいを残し、眠るように80という長い人生に幕を閉じた。
次の日には盛大に王の葬儀が行われ国中の民が王の死に涙を流し、利発で知られる王子が王になることを歓迎した。
そしてグランマジク王国2代目の王、ロイ・ガルバ・グランマジクは父である先代の遺言通り大賢者と共に国を更に発展させていった。
そして悲劇は3代目の王、ルイ・ガルバ・グランマジクから始まった。
2代目の王、ロイが崩御すると3代目の王としてルイがその座を継いだ。
初代、2代目と違いルイは根拠のない自信と止めどなく肥大したプライドの為、民からの評判はあまり良くなく、自身にすり寄ってくる都合の良い臣下で周囲を固めた。
そして領地の貴族の勝手を許し享楽にふける自分に対し諫言を呈してくるルシフを、その初代から仕えている故の発言力の高さを疎み、他を圧倒する魔力を恐れた。
そしてルイとその周囲に群がる貴族達は疎ましいルシフに対し絶対にとってはいけない行動をとってしまう。そうルシフの暗殺という手を。
ある日働き続けているルシフに対し、王が休養を進めてきた。いつもの傲慢でどこか大賢者を疎ましく思っている王とは思えない発言にルシフは感動し、しばらく生まれ故郷の村で静養する旨を告げた。
そして大賢者が王都を離れしばらくした後、王は反大賢者の貴族達が集めた兵士に大賢者の殺害と大賢者の故郷であるエール村の殲滅を指示した。
エール村へと出発した兵士達は順調に道を進んで行き、何のトラブルもなくエール村に辿り着いた。1つの擦れ違いを残して。
すでに兵を率いている将は大賢者が村に帰っていると思い、村に火を放ち、村人達を虐殺を開始した。
しかし大賢者は故郷の村にいる孫夫婦と曾孫の為に途中別の街に立ち寄り土産物を買っていた為、兵士達よりも遅れていたのだ。
そして大賢者が村の方角からの黒煙に気が付き急いで村まで飛んでいくとそこには真っ赤に燃える故郷と、村人達の死体だった。
村の中央では今も悲鳴が上がり、大賢者がそこに辿り着き目にしたのは嬲られるようにして殺されている孫達村の若い男衆とその目の前で兵士達に犯されている孫嫁と曾孫、村の若い娘達の姿だった。
突然現れた老人に兵士達は殺し損ねていた力の無い生き残りと判断し若い兵士に殺すように命じる。
若い兵士は言われた通りに老人に斬りかかった。誰もがその剣の一振りでその命を絶てると思っていた。相手が大賢者でなければ。
剣が大賢者に触れる直前若い兵士の腕は弾け飛び、状況が理解できないまま焼き尽くされ骨も残らずに消えた。
突然の事態に兵士達は凶行を止め大賢者に向き直る。相手を殺す邪魔をされない為に生き残っている男と女を殺した上で。
怒りに我を失った大賢者は自身の使えるあらゆる魔法を行使し兵士達を一方的に殺害していった。
ある者は灰になり、ある者は体液まで凍りつき粉々に砕け、ある者は強烈な電撃に蒸発し、ある者は光の奔流に飲み込まれ、ある者は潰れて地面に赤い花を咲かせ、ある者は闇に沈み、ある者は急速に流れる時間に風化していった。
怒り狂った大賢者はそれでも村人の亡骸だけは傷つけることなく、兵士だけを殺し続けた。
全ての兵士達を殺し切った大賢者は孫夫婦や曾孫、村人達の死に嘆き悲しみ自分の魔力を抑えることを忘れていた。止めどなく溢れる魔力は大賢者の体を若返らせ、頭部からは角が、背中からは漆黒の翼が生え、その皮膚は暗い黒に近い青に変色していった。
そして溢れ出る魔力は世界を駆け巡り魔力にに中てられた様々な生物や植物、無生物を魔物へと変え、村人達の亡骸はその姿を様々な、今でいう魔族の姿に変貌させ記憶を無くしながらも黄泉返った。
異形の者となった大賢者は生き返るも村人だった異形を率い、復讐の為グランマジク大国の村や町を襲撃し、生きている人間を皆殺しにすると次々と自分達と同じ異形へと生まれかえらせてその数を増やし続けていった。
そして1週間も経たずに短い栄華を誇ったグランマジク大国は自分達が殺そうとした大賢者と、自国の民だった異形によって滅ぼされた。中でも愚王の最後は悲惨の一言に尽きるという。
自分を含め異形の姿となった者は皆魔力に優れていたことからルシフは自らを魔王と称し、自分に付き従う人とは違う形をした者達を魔族と呼び、魔族の国を作り上げた。
そして滅びた大国の領土を手に入れんと今まで静観していた帝国が兵を挙げルシフ達魔族の国へ攻め込んできたが、万を超える大軍は一夜の内に全滅の憂き目にあい、報復を受けた帝国も一両日中に地図から消え去った。
初めての試みみたいな感じで過去の回想らしきものを書いてみました。
この物語が今作の魔族と魔物の誕生の設定になっています。
これは個人的な意見ですが、国を滅ぼすのはやっぱり3代目かなと思いやりました。
初代は頑張る、2代目も初代に負けないように頑張る、何の苦労もせずに地位を手に入れた3代目がすべてを壊す。こんな構図だと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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