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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第3章 元ゴブリンと魔族大陸と幼馴染魔王
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71話 城に到着したようです

最近本当に暑いです。クーラーが無い私の部屋は灼熱地獄1歩手前になっています。

皆様も暑さにやられないようにお気をつけください。

 路地裏で高らかに叫び声を上げたチャーチを何とか宥めすかしたシーツァ達はトモエを一行に加え、先導されながら再び露店の立ち並ぶ道を歩いていた。

 シーツァ達が感動の再会からの短いながらも高魔力の魔法戦を行っていたことなど知らない人々はいつも通りに買い物をしたり冷やかしたりしている。


「ところでトモエ、これから何処に行くんだ? 俺達ここに着いたばかりで何処に行くか検討がつかないんだが……」


「ああ、私はこの世界に召喚されてからずっと同じ場所に滞在してるのよ。そこでいろいろ仕事してたんだけどね? 疲れたりするとちょくちょく抜け出すんだよね。で、今回も抜け出してたらあいつ等に絡まれてたって訳」


「はぁ~、トモエ様、また抜け出して来られたのですね? トラソルテオトル殿の心労も少しは考えてくださいませ」


 チャーチの小言めいた説教なんて何処吹く風といったトモエはシーツァの腕と自分の腕を絡ませ鼻歌交じりに歩いていく。

 ご機嫌なトモエの姿を見たシーツァは苦笑しながらトモエに合わせて歩を進めていく。

 その後ろを若干ご機嫌ナナメなソーラと、その姿を微笑ましそうに見つめるアイナ、先程チャーチにたかって露店で買った骨付き肉を食べているシリルが続いていた。


「それで、何処に行くんだ?」


「んー? もう見えてるよ? あそこ」


 そう言ってトモエが指差した先には巨大な城が聳え立っている。

 まるでどこかの童話の世界から飛び出してきたような威容を誇るその姿は遠くからでもシーツァを驚かせるには十分だった。


「あの城に行くのか? なんだかものすごく立派な城なんだが?」


「でしょー? 私も始めて空からお城の全体を見渡した時は言葉を失ったもん。暁が驚くのも当然だよね。日本にはあんな城なかったし」


 アホみたいに口を開き驚いているシーツァと、それを見ながら笑っているトモエ。そんな仲睦まじい恋人みたいな空気を周囲に垂れ流している2人に機嫌の悪そうなソーラが割り込んできた。


「それよりさっきからなんなの? シーツァのこと暁暁って。シーツァはそんな名前じゃないよ」


「んーその説明は城についてからね。長くなるかもしれないし、あんまり他人に聞かせていい話じゃないでしょ? お互いに」


 組んでいないほうの腕を上げ人差し指を口に持っていくと、パチリとウィンクして機嫌の悪いソーラを軽くいなす。

 回答が不満だったのか頬を膨らませ一層機嫌を悪くしたソーラはそれから喋ることも無くシーツァ達の後を歩いていった。


 程なくしてシーツァ達一行はトモエの先導により城の目の前まで辿り着いた。

 城の前には街の入口と同じぐらいの高さの壁が左右にずっと伸びており、巨大な門が現在は口を開いている。

 そしてその前には深く壁沿いに続いている堀とそれを跨ぐように門と街を繋ぐ跳ね橋が架かっていた。


「はー目の前まで来るとホントに圧倒的だなー。威圧感が半端ないな」


「でしょう? ほら早く行こう?」


 首が痛くなるほどに上を見上げ、バカみたいに口をあけて驚いているシーツァを絡めている腕で引きながら門まで歩いていく。

 すると突然トモエの前に門番の兵士達が槍が交差して行く手を阻んだ。


「止まれ! ここは偉大なる魔王様の住まう場所。お前達のようなものが観光に来る場所ではない!」


「はぁ~? 何言ってるのよ。私が――」


「トモエ様、ここは(わたくし)めにお任せください。無礼者! 彼等は(わたくし)の客人ですわ! 分かったらさっさと道をお開けないさいな!」


「こっ……これはチャルチウィトリクエ様!? 失礼いたしました! どうぞお通りください!」


 不審者を見るような眼差しでシーツァ達を見ていた門番達は、現れたチャーチの姿と一喝ですぐに脇に下がり道を開けると姿勢を正しチャーチに向けて最敬礼をした。

 その間を優雅に歩いていくチャーチの後ろを歩いて門をくぐり、シーツァ達はついに城の中に入る事になった。


「なんでチャルチウィトリクエの事は知ってて私の事は知らないのよ……」


「お言葉ですがトモエ様、貴方様は基本的に城の中ではほとんど自室か執務室に居られますし、外に出るにしてもこっそりとお忍びで出て行くのみ。城の兵士の殆どは魔王様のお名前がトモエであるという事は知っていても顔まで知っているのは(わたくし)達四魔将と数少ない側近の方々ぐらいですわ」


「ぶー」


 自覚がありすぎる故反論できない様子のトモエと共に場内に入っていく。

 城の中に入りシーツァ達の目に最初に飛び込んできたのは通路の真ん中に立ち塞がるようにしている1人の綺麗な女性だった。


「げっ!?」


「人の顔を見るなりげっとはなんですかげっとは。いったい今までどこをほっつき歩いていたのですかトモエ様。ここしばらくお戻りにならないから政務が滞っているのですよ。早く仕事にお戻りください。ところでそちらの殿方はいったいどなたなのですか?」


 説教モードから一転訝しげな視線をシーツァに向けたトラソルテオトルはトモエに問いかける。

 その質問を待ってましたとばかりに瞳を光らせたトモエは嬉々としてその問いに答えた。


「よくぞ聞いてくれたわ! 彼の名前は暁! 何を隠そう私の旦那様よ!」


「はぁ、旦那様ですか……。旦那様? 旦那様ーーーーーーーー!?」


 フフンとど無い胸を精一杯に張りドヤ顔を決めるトモエ。そしてトモエと恋人のように腕を組んでいるシーツァを見て驚愕の雄たけびをあげるトラソルテオトル。そんな対照的な2人を見たシーツァは後ろから飛んでくるソーラの負の圧力もあり、苦笑いするしかないのであった。


「ちょっとトモエ様!? 旦那様ってどういうことですか!? 求婚してくる方々を悉く袖になさっていたのにいきなり旦那様って……」


「んー、それについてはちゃんと話すからさ、この間使った会議室に先に行ってるからとケツァルコアトルとウィツィロポチトリの2人を呼んできてくれないかな」


「かしこまりました。ところでチャルチウィトリクエ様はお呼びしなくてよろしいのですか?」


「何言ってるの。さっきからここにいるじゃない」


 指をさされた先にいるチャーチは目の前にいるのに気が付かれていなかったことに落ち込んでいるように見えるがその顔は若干赤くなっており、多少息が荒くなっていることから少し興奮しているんだろうとシーツァは思った。


「も、申し訳ございません! トモエ様の突拍子もない言葉に完全に気を取られて気が付きませんでした!」


「き、気になさらなくてもよろしいですわ……。それに目の前にいるのに気が付かれていないなんて……少しゾクゾクしますわ……」


 トラソルテオトルの謝罪を受け取ったチャーチだが最後の方は語尾が小さくなりとても聞き取り難くなっていたが、シーツァの耳はその言葉を正確に拾ってしまう。


 まさかチャーチの奴、この前の戦いの後のやりとりからその気があるんじゃないかと思ってたが……。やっぱりドMだったのか……! 見た目美人で高飛車お嬢様キャラなのにドMって……。世の中良く分からんな……。


「それじゃあ暁、それにみんな。ついてきて。会議室に案内するわ」


 シーツァは再びトモエに腕を引っ張られるようにして城内を会議室目指して歩いていく。

 通路のあまりの天井の高さ、幅の広さにソーラは先程までの不機嫌さも忘れ呆気にとられながら後をついて行った。


「ソーラちゃん、この城がこんなに広いのが不思議?」


「え? ああ、はい。まさかここまで広いとは思っていませんでしたので驚いてます」


「でしょう? 私も初めて来た時は貴方みたいになってたわ。何でもこの城自体に空間歪曲の魔法が掛かっていてそれで広くなっているんだって。巨人族みたいに体が大きい種族もいるからね」


「なるほど……」


 シーツァ達が城内を歩いたり階段を上り下りすること約10分。シーツァ達の目の前に高さ3mはあろうかという大きな扉が聳え立っている。

 頑丈そうで落ち着いた木の色合いの扉なのだがその大きさはシーツァ達を圧倒するには十分だった。


「私絶対1人ではこの城の中歩きません。必ず迷子になります……」


「私も無理ねぇ~。もうどうやって~、ここまで来たか~、覚えていないわ~」


「がぅ、私は臭いで分かるぞ」


 シリルは意外と平気そうにしているがソーラとアイナはここまでの道程の複雑さにげんなりとしている。

 かく言うシーツァも角を3つ曲がったあたりから覚えるのを諦めていた。


「さ、ここが会議室よ。中に入って待ってましょ。すぐに飲み物を用意させるわ」


 シーツァ達を会議室の中に入らせると、トモエはさっさと人を呼びに走って行ってしまう。

 広いテーブルに複数の椅子がある室内は等間隔で壁に設置されているランプによって程よく明るくなっており、シーツァ達は壁の隅の方に移動し、トモエが帰ってくるのを待つことにした。

もうチャーチは救いようの無いドMになってしまったようです。本当に何処でどう間違ってしまったのやら……。

次回は会議室での話しになる予定です。


ここまでお読みくださりありがとうございます。

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