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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第3章 元ゴブリンと魔族大陸と幼馴染魔王
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68話 海上での戦いのようです

7/13 チャルチウィトリクエの人間時の一人称を変更しました。

 ミミナートの街を出向して早数日、シーツァ達は人間達の暮らす大陸と魔族達が暮らす大陸の間の海を船でのんびりと進んでいた。

 雲1つ無い空に燦々と輝く太陽、今のところ荒れることのない穏やかな海、吹く風は穏やかで絶好の船旅日和である。

 そんな快適な船旅をしているシーツァ達に想像だにしていなかった危機が訪れていた。


「は……腹減った……」


 甲板に広げている毛皮の上で1体の鬼が仰向けで倒れていた。引き締まった体躯を誇る鋼色の皮膚を持つ1本角の鬼である。

 現在のその姿は傍から見たら日向ぼっこをしているように見えなくもないが、鬼の腹部からはぐぅぅぅーーー、と腹の虫が鳴く音が周囲に響き渡っていた。


「まさか【異次元収納(アイテムボックス)】の中の食料があんまり残ってなかったとは……。ミリアム達の特訓してるときに散々肉焼いてたからなー、そのことすっかり忘れて食料の補充忘れるとは……失敗した……」


 船を出てからしばらくはマトモスが積んでくれていた食料で食い繋いでいたがそれも早々に尽き、【異次元収納(アイテムボックス)】の肉もすぐになくなっていった。シリルの腹の中に。


「食料が少ないって事シリルが知らなかった所為でいつも通り食べてたらそらすぐなくなるよなー。魚を獲ろうにもシリルの気配を海の魚や魔物が怖がって近寄ってこないし……。はぁ~、どうしたもんか……」


 溜息を吐きながらもシリルの腹の中に消えていった食料に思いを馳せているシーツァ。哀愁漂うその姿に向けて船内へ至る扉から声が聞こえてきた。


「シーツァー、ご飯できたよー」


「何っ!? 食料があったのか!?」


 聞こえてきたソーラの声に、今まで空腹ゆえに動く気力も殆どなかったシーツァは勢いよく体を起こすと救いの女神(ソーラ)の方向へこれまた勢いよく顔を向けた。

 食いつきのいいシーツァの反応に若干苦笑いを浮かべているソーラは船内の食堂へシーツァを促した。

 そして食堂に到着したシーツァが目にしたのは皿の上に鎮座している長さ約5cm、幅1cmの物体だった。


「何これ」


「私の【道具作成】が進化して【道具作成・改】になったでしょう? それで消耗品以外の道具も作れるようになったんだけど、元々消耗品は作れたのよ。それで何か作れないかなーっていろいろ試してたらこれができました」


 えっへんと胸を張るソーラの姿を見ながらシーツァは皿の上に乗っている固形物を【看破】で確認してみることにした。

 表示されたのは地球にいた時にコンビニ等で売っているとある商品を見た時に目にした事のある文字。


【栄養調整食品】


 カロ○ーメイトかよっ!!


「とりあえず~、食べましょう~? 私も~、お腹空いちゃいました~」


「がぅ、早く食べたいぞ」


「そうだな、折角ソーラが作ってくれたんだから食べるか」


 4人が一斉にその手を皿の上に伸ばす。

 それぞれが色の違うカロ○ーメイトらしき物を手に取りそれを口に運んでいく。


「なんだか~、不思議な味ねぇ~。微妙に~、フルーツっぽい味がしなくも~、ないとゆ~か~」


「がぅ、口の中の水分が一気になくなったぞ」


 んー、やっぱり味もカロ○ーメイトだなー。しかも地球にいた頃食ったことのあるチーズ味。御丁寧に口の中の水分皆持ってくのまで再現しなくても……。にしてもこれ一個食っただけでかなり腹が膨れたな。地球じゃありえんな。


「がぅ、腹がいっぱいになったぞ」


「本当ねぇ~、あんな小さい固形物だけで~、お腹一杯になるとは~、思わなかったわ~」


 魔法で出した水を全員が狙ったようなタイミングで飲んで人心地ついていると不意にズシン、と波に揺られるのとは違う振動がシーツァ達を襲った。

 即座に【気配察知】を広げられる範囲一杯に広げると巨大な何かがシーツァ達の乗る船に急速に接近してくるのが感知できた。


「みんな甲板にでろ! 何かがこっちに近づいてきてる!」


「「「!?」」」


 全員が甲板に出てそれぞれの武器を構え臨戦態勢をとる。

 全員が緊張した面持ちでシーツァの睨む方向を向き、相手が出てくるのを待つ。

 どれほどの時間が経ってだろうか、あるいは1分も経っていないのか。緊張の所為で時間の感覚が麻痺しているシーツァ達の前についにそれは現れた。

 海面が盛り上がり盛大な水飛沫を上げ姿を現したのはあまりにも巨大な1頭の蛇のような体をした龍だった。


「なんだありゃあ!?」


 シーツァは目の前の巨大な龍に対し即座に【看破】を使い相手のステータスを除いた。


名前 チャルチウィトリクエ ♀

種族 竜族:大海竜(リヴァイアサン)

状態 健康

Lv 95

HP 4666/4666 (+3000)

MP 3016/3016 (+2500)


攻撃力 3868 (+2500)

防御力 5611 (+5000)

魔力  3671 (+2500)

魔抵抗 3382 (+2500)

速度  1812

運     22


【最大HP超上昇Lv.6】【最大MP超上昇Lv.5】【神力Lv.5】【城壁Lv.10】【魔神Lv.5】【竜の息吹(ドラゴンブレス):炎・水】【水流魔法Lv.8】【竜鱗】【水中適応】【人化】


【竜鱗】:一定以下の物理攻撃を無効にする。それ以上のものは軽減。

【水中適応】:水中での戦闘能力に補正が入る。


 強っ!? 冗談じゃないなんでこんな無茶苦茶なのと戦闘になるんだよ!


 あまりに高いステータスに目をむくシーツァを嘲笑うかのようにリヴァイアサンが巨大な体躯に似合った大きさの口を開く。


 グオアァァァァァァァァァァァァァァ!!


 船の長さよりも大きく開いた口の奥にエネルギーが集まっていき、咆哮と共に高密度の炎が吐き出された。

 命中すれば船を簡単に覆いつくしてしまうほどの大きさの炎が渦を巻きながらシーツァ達に迫ってくる。


「ソーラ! アイナ! 風でブレスを防ぐぞ!」


「はい(~)!」


「「「【暴風の渦(ストームヴォルテックス)】!!」」」


 3人が同時に放った魔法は混ざり合い巨大な暴風の渦となって海竜の放ったブレスと激突する。

 暴風の渦と炎の渦はギリギリのところで拮抗し、何とかブレスを防ぐことに成功する。

 周囲の海が荒れ狂い船が激しく揺れる中、何とか体勢を保ち魔法を放ち続ける。

 やがて拮抗に焦れてきた海竜が更にブレスの威力を上げ徐々にシーツァ達の魔法が押され始めてきた。


「くそっ! 威力が上がって押されてきた……! シリル頼む!」


「がぅ! 任せろ!」


 【空中機動】を使いシリルが空を駆け抜け海竜の頭へと一気に肉薄する。

 拳にシリル用の魔法銀(ミスリル)のガントレットを纏い、それを一気に海竜の頭の半分ほどの大きさまで巨大化させるとその横っ面を力一杯殴りつけた。


 グゥオァァァァァァァァァァァァァ!!


 突然受けた強烈な痛みに悲鳴を上げながら頭が横に弾き飛ばされる。

 それにあわせてブレスも横に逸れ、暴風の渦と競り合っていたこともあり船の横を海の表面を蒸発させながら通り過ぎていった。


「危ねぇ、みんな助かった」


『高々人間風情が我のブレスを防ぐとは中々やるな。だが次はどうだ?』


 突然発せられた海竜の声に4人は驚きを隠せないでいた。

 そんなシーツァ達の驚愕を無視するように今度はブレスではなく、海竜を中心とし複数の水球が生成された。

 1つ1つが人間の大人よりも大きく、徐々にその数を増やしていき生成が止む頃には約200の水球が浮かんでいた。


『さてこれは防げるか? 行け!』


 海竜の号令と共に水球から目の前の海竜を小さく、それでもシーツァの2倍の長さはあろうかと言う水でできた竜が一斉にその口を開き、水でできた牙を見せ付け、宙を泳ぎ迫ってきた。


「そんなんが俺に通用するか! 【重力壁(グラビティウォール)】!!」


 海竜と船を分断するように発生した重力が通過しようとする水の竜を次々と海へ叩き落していく。

 水の竜は上から襲い掛かる重力と叩きつけられた衝撃で次々と破壊されていった。

 海竜がその光景に驚愕している中シーツァはソーラに問いかけた。


「ソーラ! アイツの頭残して凍らせられるか?」


「やってみる! 【氷河期(アイスエイジ)】!!」


 船を中心に海がピキピキと音を立てて凍り付いていき、勢いよく海竜に迫っていく。

 海竜が驚愕から立ち直って水中に逃げ出そうとするも時既に遅し、胴体が凍りに包まれていく。

 体が氷に包まれていく苦痛に悲鳴をあげ、体を捩って何とか氷を破壊しようとするも叶わずシーツァの注文通りに頭を残し首から下が氷に包まれた。


『ぐぁ……! まさかこの我が人間なんかに……!』


「これで止めだ!」


 先程のシリルと同じように【空間機動】を使いシーツァが海竜の頭目掛けて空を駆け抜けていく。

 そしてギリギリ氷漬けになっていない首元まで達すると、以前生み出した魔力を込めると魔力の刃がどこまでも伸び続ける剣を取り出し、首を切断する為に薙ぎ払った。

 ところが刃が首に触れる直前海竜の体が白く光り、その姿を消失させる。


「消えた?」


 シーツァは空を切った刃を元の大きさに戻し、キョロキョロと辺りを見回していると下からソーラの声が聞こえてきた。


「こっち! 甲板に現れたよ!」


 声の方を見たシーツァの目に映ったのは、緊張した面持ちで目の前に現れた敵と相対しているソーラ達の姿であった。

 慌てて甲板に降り立ちソーラ達を庇うようにして構え相手を見やると、そこには透き通るような長い水色の髪をたなびかせ、髪と同じ色合いのドレスを纏った美女だった。


「お前さっきの海竜か?」


「いかにも。(わたくし)は魔王様の僕にして魔王軍四魔将が1人、水魔軍団統括海王チャルチウィトリクエですわ。人間風情がこの我の姿を見たこと誇りに思って死になさいな!」


 ん? 人間? ああ俺達のことか。そういえばマトモス達に正体を明かした後船に乗る前に指輪装備し直したんだっけか。


「いや、俺達は人間じゃないぞ?」


「ふん命乞いか? 戯言を。貴様等のその姿、どこからどう見ても人間ではないか」


「いやさ、ほら」


 指を突き付けてきたチャルチウィトリクエが小馬鹿にした様な表情でシーツァ達の姿を指摘してきたので正体を明かす為に指輪を外すことにした。

 シーツァに合わせソーラとアイナも指輪を外すと、今まで人間だった外見が魔物のそれに変化する。

 今まで人間だったと思っていた相手の突然の変化にチャルチウィトリクエはシーツァ達を震える指でさしたまま驚きのあまり口をパクパクさせていた。


「ほら、これでいいだろ?」


「え? 魔族? え? だってさっきは人間の姿だったし……? え?」


「この指輪、【変装】が付与されてるから。それで見た目が人間だったんだよ」


「ええーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 凍りついた海の上、キャラが崩壊しかかったチャルチウィトリクエの驚きの声が響き渡る。

 そこにはもう海竜だった時の威厳や威圧感はどこにも存在していなかった。

最近暑さが増してきたように思える今日この頃です。朝からすでに暑く、出勤する意欲を尽く圧し折ってくれます。

皆様も体調管理には十分気を付けてください。私はすでにバテそうですがw


ここまでお読みいただきありがとうございます。

ブックマーク大変うれしいです。

何か気になったこと等がありましたら遠慮なくおっしゃってください。

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