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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第3章 元ゴブリンと魔族大陸と幼馴染魔王
69/137

66話 子供達がチート化するようです

いつもより少し長いかもです。

7/8 ご指摘のあった部分を修正しました。

 ローヒス達を始末してから12日目の今現在、俺は屋敷の屋敷の中庭でトールとキリクを相手に戦闘訓練を行っていた。

 トールの握る訓練用の刃を潰した鉄剣が俺に向かって振り下ろされる。

 顔目掛けて斜めに振り下ろされたそれを頭を傾けて避けた瞬間視界の隅に槍の穂先が映りこんできた。

 突き出された槍を何とか訓練用の鉄剣で受け流し反撃に映ろうとすると再びトールが斬り付けてくる。

 貧民街(スラム)で育ってきた所為かは分からないが子供達は仲間意識が非常に高い。

 この訓練も自分や仲間達を守る為に必要だと分かっている為か、攻撃に微塵も躊躇がなく、訓練だとしても平気で急所を狙ってくる。

 ずっと共に生活していた事からくる息の合った連携と、いろいろ付与したスキルの影響で子供とは思えないほどの速度で繰り出される攻撃は時々ヒヤッとさせられることもあり、こちらもいい訓練になっていた。

 実際今までの戦いを振り返っても魔法で吹き飛ばしたり、武器を射出したり、感情に任せてただ暴れまわるのが殆どで碌に近接戦闘をしてこなかったからだ。

 何とかトールが大振りになった瞬間を狙ってトールの剣を弾き飛ばし、胴体を軽く殴って吹き飛ばすとその瞬間の隙を狙っていたかのように繰り出されるキリクの槍による突きも体を捻って躱すと、槍の柄を掴んで武器を奪いそのまま殴りつけた。


「おーい、大丈夫かー?」


 地面に転がっている2人に声を掛けてやると、倒れていた2人がムクッと起き上がり涙目になりながら抗議してきた。


「大丈夫じゃねぇよ! 痛かったよ! もうちょっと手加減しろっての!」


「そうですよ! いくら2人掛かりとはいえレベルはずっと低いんですからね!」


「そうは言ってもなー。これでも極力手加減はしてるし、それにスキルだっていろいろ付与してやったろ?」


 先程までの訓練と2人に付与したスキルを思い出す。

 正直今の2人のステータスは低レベルなのに異常なほど高くなっていた。正直そこいらの冒険者じゃ手も足も出ないだろう。

 因みにこの2人だけではなく他の4人にもきっちり6つずつスキルを付与していたりする。

 内訳はこうだ。


トール  【最大HP超上昇Lv.3】【神力Lv.3】【城壁Lv.3】【韋駄天Lv.3】【剣鬼Lv.3】【状態異常無効】

キリク  【最大HP超上昇Lv.3】【神力Lv.3】【城壁Lv.3】【韋駄天Lv.3】【槍鬼Lv.1】【状態異常無効】

ミリアム 【最大HP超上昇Lv.3】【最大MP超上昇Lv.3】【魔神Lv.3】【強属性魔法Lv.1】【消費MP軽減Lv.3】【状態異常無効】

アリア  【最大HP超上昇Lv.3】【最大MP超上昇Lv.3】【魔神Lv.3】【回帰魔法Lv.2】【消費MP軽減Lv.3】【状態異常無効】

ブレダ  【最大HP超上昇Lv.3】【最大MP超上昇Lv.3】【魔神Lv.3】【物理魔法Lv.3】【消費MP軽減Lv.3】【状態異常無効】

クルル  【最大HP超上昇Lv.3】【最大MP超上昇Lv.3】【神力Lv.3】【弓術Lv.3】【精密射撃Lv.3】【状態異常無効】


 正直やりすぎた感が半端ない。真面目な話、身体の使い方さえ完璧になればそこらの人間じゃ太刀打ちできないだろう。

 トールは接近戦に適性があり、剣を使う事を希望していたので【剣鬼】のスキルを習得させた。

 キリクもトール程ではないが接近戦ができ、トールとは違い剣ではなく槍を希望してきたので【槍鬼】を覚えさせた。因みに【槍術】ではないのはたまたま子供達を連れて街の外に出ていた時襲ってきた盗賊からスキルを奪ったら進化したためだ。

 ミリアムは攻撃魔法の才能があった。レベル1ではあったが【風魔法】を所持していたので【強属性魔法】を付与することにした。ソーラの元で魔法の練習をしているとメキメキと上達していき、回復以外全ての属性の魔法が操れるようになっていた。

 引っ込み思案のアリアは誰かを傷つける事を極端に嫌がっていた為【回帰魔法】を付与した。こちらもソーラを師事し、癒しの力を上達させていった。

 ある意味一番驚かされたのはブレダだった。どこで見たのか【物理魔法】に強い興味を示していたので【物理魔法】を付与した。

 俺が教えた事をスポンジが水を吸収するように覚えていき、俺ほどではないがかなりのレベルで【物理魔法】を使いこなしていた。

 クルルはどの武器を使っていいのか分からない様だったので一通り触らせてみたところ、弓の扱いが他の武器よりも良かった為【弓術】を付与した。何日か練習していくと百発百中とはいかないまでもかなりの精度で的を射ぬいていく程に上達していった。


 そしてマトモスから貰った船で旅立つ前日の朝。


「おーいミリアムー、他の5人を呼んできてくれー。全員訓練用の装備一式つけてー」


「わかりましたー」


 少し離れた位置にいたミリアムに子供達を呼んでくるように頼むと、こちらもソーラ達を探して屋敷を彷徨った。

 ほどなくして3人を発見し集まってきた6人の子供達と共に街の外へと出発した。なぜか内政で忙しいマトモスも一緒に。


「で、なんでマトモスもいるんだ? 仕事が忙しいんじゃなかったのかよ」


「いやぁ、流石にそろそろ息抜きぐらいしたくてね。大丈夫、セバスには一言書置きしてきたから」


 確かにここ最近食事の時間すらも惜しいと言わんばかりのペースで仕事をしていたのをここにいる全員が見ている。

 食事中に書類をみているといった貴族らしからぬ行儀の悪さで、子供達ですら心配になっていたほどだ。


「それで、今日は中庭ではなく街の外にまで出て何をするんだい?」


 マトモスの問いかけを聞いた子供達が耳を大きくしてこちらの会話に聞き耳を立てているのを横目に、ソーラ達と事前に相談していた今日の予定を簡潔に説明した。


「今日は子供達全員の卒業試験も兼ねて子供達VS俺達4人で模擬戦をしようと思ってね。といってもそこまで複雑にはしないよ」


 俺のセリフを聞いた子供達は寝耳に水だったようで驚いた顔をしたまま立ち止まっていた。

 子供達が再起動するのを待ち、一番初めに我に返ったミリアムがおどおどと問いかけてくる。


「あ、あのーシーツァさん? そんな事聞いてないんですが……。私達てっきり狩りにでも行くものだとばっかり思ってたんですけど……」


「そりゃあ言ってないしね。それに俺達は明日にはこの街を出るからさ。みんながどれだけ強くなったかも確認しておきたいんだよ。大丈夫、ちゃんと手加減はするから」


「いやあの、そーゆー意味ではなくてですね?」


 そんなやりとりをしながら歩いていると、背後のミミナートの街が小さくなった辺りでようやく立ち止まった。

 周囲を見渡し俺達以外に人間や魔物がいない事を確認すると地面に手を着き魔法を発動させる。

 するとゴゴゴ、と地面が揺れてその振動に子供達が怯えていると、徐々に地面がせり上がっていき、振動が止むとそこには半径1km高さ30cm程の舞台が出来上がったていた。


「さて、これで舞台は完成っと。それじゃミリアム達はそっちの端に陣取ってくれ。俺は真ん中で待ち構えてるから。舞台の外に落ちるか、気絶したら脱落な? ソーラ達とマトモスは舞台の外で観戦しててくれ。それと開始の合図よろしく」


「わかりました。あまり無茶はなさらないで下さいね?」


「わかってる。ミリアムー、俺はハンデとして使用する魔法は物理魔法以外を使わない。だけど、お前達は俺を殺す気で掛かって来い。お前達の成長を雇い主様に見せつけてやんな」


「「「「「「はいっ!!」」」」」」


 俺の言葉を聞いたミリアム達から力強い返事が返ってくる。

 その返事に満足そうに頷くと舞台の中央に立ち、ミリアム達が配置に着くのを待ち続ける。

 やがてミリアム達が舞台の端に到着し、各々の武器を構えいつでも動ける体勢を整えマトモスからの開始の合図を今か今かと待ち構えていた。

 そしてしばしの間辺りを静寂が支配しする。

 カァー、と上空で1羽の鳥が鳴いたのを皮切りにマトモスからの開始の合図が舞台の上に響いた。


「「先手必勝!!」」


 開始の合図と同時にトールとキリクが真正面から突撃してくる。

 その後ろではミリアムとブレダが詠唱を開始し、クルルが何時でも放てるようにと弓を引き絞っていた。

 すぐに距離を詰められると、トールが大上段に剣を振り上げ、キリクが槍を突き出す動作に入ると背後からミリアムの鋭い声が飛んでくる。


「トール! キリク! 【風の弾丸掃射(ウィンドバレットバースト)】!!」


 2人が即座に左右に跳び俺の正面を空けると、前から無数の風の弾丸と1本の矢が迫ってきた。

 咄嗟に横に跳び回避しようとしたものの――。


「させません! 【重力(グラビトン)】!!」


 突如体が何倍もの重さになり、横に飛ぼうと膝を曲げた俺はそのまま地面に膝を着くことになってしまった。

 体勢を完全に崩した俺を見て好機と思ったのかトールが真上から剣を振り下ろしてくる。

 ただでさえスキルを付与した所為で人間離れした剣速が、重力によって更に加速し威力を増す。


 やばっ!? 流石にこりゃ躊躇ってる場合じゃない!


「【斥力(リパルション)】!!」


 自分自身を斥力で吹き飛ばし、間一髪魔法と剣戟を避けたと思ったのも束の間、ある程度俺の逃げる方向を予測していたキリクが襲い掛かってくる。

 鋭く突き出された槍を何とか剣でいなし、逆に体勢の崩れたキリクの腹部を剣の柄で殴り飛ばす。

 3m程吹き飛び腹部を押さえ何とか吐き出すのを堪えているキリクを薄い緑色の輝きが包み込むと先程まで立ち上がることもできそうになかったキリクが何事もなかったかのように立ち上がり戦線復帰を果たす。


 うへぇ……、回復役がいるのがこんなに面倒だとは……。敵だったら遠慮なく押し潰すんだけどそんなことするわけにもいかんしなー。ハンデを付けるとか言うんじゃなかった……。


 6人の連携に早々に自分の言ったことを後悔しながらもどう対処しようかと頭を働かせる。

 だがミリアム達はこちらに考える暇を与える気は無いらしく、先程からトールとキリクが絶え間なく攻め立て、そして2人を避けながらもこちらに向けて無数の魔法と矢が飛んでくる。

 それを何とかギリギリのところで捌き反撃の隙を窺う。


 てか強すぎじゃね!? このままじゃジリ貧だし、少しギアあげるか……。


 トールとキリクを斥力で吹き飛ばし、飛んでくる魔法や矢を掻い潜りながら一気にアリアへ距離を詰めると鳩尾に拳を極力軽く当て、倒れたアリアをソーラ達の所まで投げ飛ばす。


「ソーラ! アリアを持っててくれ! 脱落だ!」


 アリアを倒した所為か一層激しくなった攻撃をいなしつつソーラがアリアをキャッチしたのを確認すると次はクルルに狙いを定め近づいていく。

 【感情論】のおかげでステータスが急上昇したトールが苛烈な攻撃を加えてくるが、その全てを剣で受け流し、逆にキリクへ攻撃が向かうようにズラしてやる。

 まさか自分の攻撃がキリクに向かうとは欠片も思っていなかったトールは顔色を驚愕に染め、それでも止め切れなかった剣戟はキリクの槍を圧し折ってしまう。


「しまった!」


「はい、武器が壊れたしキリクも脱落な。【斥力(リパルション)】」


 吹き飛ばされ舞台の外の地面に叩きつけられたキリクは、肺から空気が無理矢理出されるようなうめき声を上げて気絶し、シリルに回収されていった。


「ほらほら、攻撃が止まったぞ?」


 キリクが吹き飛んでいく様を見て攻撃が止まってしまったクルルとの距離を詰める。

 目の前に現れた俺の姿に驚き目を見開いているクルルの額にデコピンをかます。

 バチン、といい音が鳴って額を押さえるクルルを持ち上げるとやっぱりソーラ達の元へと投げ飛ばし脱落させる。


「彼の者を叩き潰せ!【風の槌(エアハンマー)】!!」


「大地に平伏せ! 【重力(グラビトン)】!!」


 クルルを投げ飛ばした瞬間にミリアムとブレダの詠唱が終わり、俺の上から巨大な風の塊と超重力が襲い掛かる。

 どれも先程までとは比較にならない威力で、流石に直撃したら死にはしないまでも大怪我しかねない威力だった。

 何とかブレダの超重力と中和し一気に詰め寄ると2人の腕を掴み2人仲良く舞台の外に投げ飛ばした。

 投げ飛ばされていく最中ミリアムが即座に詠唱を終わらせ、バスケットボールサイズの火の玉(ファイヤーボール)をこちらに撃ち出してきた。

 それを剣で切り裂くと火の玉が爆発し、俺の視界を爆炎が覆った。


「くらえぇ!」


 煙に覆われた俺の背後からトールの叫び声と共に剣が振るわれる。

 咄嗟に前に身を投げ出し体勢を整えると煙が斜めに切り裂かれ、そこから剣を振り切った体勢のトールが姿を現した。


「折角のチャンスだったんだから声を出して自分の位置を知らせるのは止したほうがいいぞ。さっきのは流石に危なかった」


 俺の忠告に頷くトールはすぐに距離を詰めて何度も剣を振るってきた。

 右に左に上に下に、型なんてものは無いが【剣鬼】のスキルのおかげかどの攻撃も鋭く、先程よりも【感情論】によるステータスの上昇が著しいため、並大抵の人間ではトールに勝つことは不可能だろう。

 俺はステータスに物を言わせてトールの攻撃を回避し、逆にこちらも攻撃を繰り出していく。

 剣同士がぶつかり合い硬質な音を辺りに響かせ数合打ち合っていると、徐々にトールの攻撃が精彩を欠いてきているのがわかった。

 徐々に息が荒くなり、攻撃も大振りになりがちになっていく。


 流石に疲れてきたか。まぁ仕方ないか、まだ10にもなってない子供だしな。ここまで動けるほうが驚きだ。


 ガキィィィィン、と音がし、トールの手から剣が弾き飛ばされる。

 剣が飛ばされた勢いと疲れから尻餅をついてしまったトールの首元に剣を持っていき、告げた。


「はいこれで終わり」


 悔しそうな顔をして大の字に地面に倒れこむトール。

 ソーラ達に模擬戦が終了したと告げると、俺とトールの一騎打ちを固唾を呑んで見守っていたミリアム達が舞台に上がりトールの元へ駆け寄っていく。


「お疲れ様シーツァ。だいぶ苦戦してたみたいだけど大丈夫?」


「ああ、まさかあそこまで強くなってるとは思わなかったよ。正直魔法は物理魔法意外使わないって言ったこと早々に後悔した」


「確かに~、あの子達は~、あの年齢では~、異常なまでの~強さですよね~」


「がぅ、本気だったら負けないけど、手加減してたら勝てないぞ」


 アイナとシリルもトール達の戦いぶりを見てかなり驚いていたようだ。

 シリルが手加減状態じゃ勝てないと言っているくらいだから相当なものだろう。


「それでマトモスから見てあの子達はどうだ? きっとこれからもっと強くなるぞ?」


「ええ、今でも十分すぎるほどに強いですからね。こちらから護衛として雇わせて欲しいと頭を下げたいぐらいですよ」


 マトモスの言葉に満足そうに頷くと倒れて悔しそうにしているトールと、周りの子供達を見やる。


 こいつ等もこれだけ強ければ多分大抵のことは跳ね除けられるだろ。今まで不幸だったんだからこれからは幸せになってもらいたいもんだな。


 悔しそうにしながらも笑っている子供達を見て俺は子供達の将来の幸せを願った。

はい、シーツァがやりすぎた回です。

正直な話、ウーフツの街にいる冒険者程度ではミリアム達に勝てる人間はいません。

それだけ強くなりすぎてしまいました。シーツァ君は自重を知らないようです。

もうちょっと戦闘シーンを臨場感溢れるように書きたいのですが、自分にはこれが精一杯です。

因みに私が七夕に願ったのは『文章力をください』です。

けど願いって何時ごろ叶うんでしょうか……。

織姫(ベガ)までは約26光年、彦星(アルタイル)までは約17光年。往復で計算すると最低でも願いが叶うまでに34年掛かるんでしょうか……。

そこらへんはおまけして欲しいですね。



ここまで読んでいただきありがとうございます。

ブックマーク大変励みになっております。

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