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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第3章 元ゴブリンと魔族大陸と幼馴染魔王
68/137

65話 当然の結末のようです

人によっては少し残酷な描写があるかもしれません。

7/8 ご指摘のあった部分を修正しました。

 自分の配下の兵士達がマトモス達に向かって突撃していく様を見てローヒスは勝利を確信していた。

 確かにマトモスの連れている冒険者は確かに手練(てだれ)なのだろう。

 その証拠に昨夜の襲撃で自分の配下の中で最も強いジェームズが手傷を負わせることもできずに敗北しているからも明らかだ。

 だがいくら手練の冒険者と言えど所詮は多勢に無勢、数の暴力には勝てずそのまま押し潰されるだろうと、マトモスがその首を刎ね飛ばされるのも時間の問題だろうと思っていた。

 マトモス達を皆殺しにした後は当主であるマトモスの殺害の犯人をあの冒険者達に仕立てあげ、自分達は犯人を討ち取ったと公表すればいい。

 少なからずマトモスの配下達からは疑惑の声も上がるだろうが、マトモスさえいなくなればギール家の当主は自分なのだ。行方不明扱いにするなり何なりして売り飛ばしたり殺してしまえばいい。

 当主としての立ち居地を確固たる者にした後はマトモスの所為で我慢せざるをえなかったドレスや装飾品や化粧品などに好きなだけお金を使うことができる。

 足りなくなったら民から巻き上げればいいのだ。民達も私の美に貢献できるのだから本望だろう。逆らう者は殺すなり奴隷として売り飛ばせばいい。

 所詮民など私達からしたら金を生み出すために存在しているようなものなのだから。

 しかしローヒスの確信は次の瞬間儚くも砕け散った。


「な……!?」


 驚愕を露にしているローヒス達の欲望に濁った瞳に映ったのは例外もなく全身頭の先から爪先まで氷漬けになっている配下達だった。

 自分が後押しした欲望に瞳をギラつかせたままの表情で氷漬けになっている彼等は、恐らく自分がどうなったかも分からないままなのだろう。

 そんな予想だにしない光景を見たローヒスは今更ながらに自分は敵に回してはいけない者を敵に回したのではないかと思った。

 恐怖と驚愕と困惑が入り混じりよく分からない感情がローヒスを支配している中、隣にいたヒドスは既に腰を抜かしてへたり込んでいた。


「お疲れ様ソーラ。それにしても見事なまでに氷漬けだな」


「そう? ありがと。ああ、氷に衝撃を与えたら駄目ですよ? 全身体液まで凍ってるから下手したら粉々になります」


 ソーラの言葉に軽くノック程度の強さで叩こうとしていた拳を慌てて引っ込める。


「そ、それでマトモス、こいつ等どうするんだ? ソーラの言った通りならもう助からんぞ?」


「仕方ないでしょう、生き残っていたとしても死刑になるだけですから。死ぬのが遅いか早いかの違いでしょう」


「そか。そいじゃこの氷どうすっかなー。見た感じしばらくは溶けることもなさそうだからしばらくほっとくか。んで」


「ひっ!」


 ローヒス達へ一歩踏み出すと、先程までなんとか立っていたローヒスが小さい悲鳴をあげると腰を抜かし床にへたり込む。

 そんな2人をとりあえず身動きできないように【蜘蛛糸】で縛り上げた。


「それでこの2人はどうするんだ?」


「そうですね、本当は死刑にするのが妥当なのですが……、流石に自分の姉を死刑にするのは躊躇いますね。いくら好き勝手やって民に理不尽を押し付けていたとしても」


「んで、それならなおさらどうするんだ?」


「仕方ないのでこの街からの追放処分にしようと思います。二度とこの街には立ち入らせません」


 マトモスがローヒス達の追放を決めると、腰を抜かしていたローヒス達が喚き始めた。


「ちょ、ちょっとマトモス! あなた、自分の姉であるこの私を追放しようだなんて何を言っているの!? そんな事許されるはず無いでしょう!」


「そうだ! 私を追放するなどギナイカ家も敵に回すと言う事だぞ!」


 自分達のしてきた事を棚に上げて抗議する2人を見たマトモスは盛大に溜息を吐きながら言った。


「姉上、あなたが今まで散々したい放題してきたのをお忘れですか? 家の金を使うのはまだしも、父の名を使って民から金を徴収したりしてきたでしょう? しかも逆らったものを殺したりして。追放だけで済むんですから感謝していただきたいです。それと義兄上、あなたもです。街の女性を攫って酷いことをしてきたでしょう? あなたも追放で済むことを感謝してください。あ、それとギナイカ家に泣きついても無駄ですよ。あなたのしてきた悪行はきっちり報告させていただきますので」


「「くっ」」


 変なところで息が合っている2人が悔しそうな顔をして俯く。

 流石に観念したのか抗議が止んだ2人を見たマトモスがこれで最後とばかりに宣言した。


「ローヒス及びヒドスをミミナートの街より追放とする! 今後2度とこの街に入ることは許さん! セバス! 私の兵と共にこの2人をミミナートの街より追い出しなさい!」


「かしこまりました」


 ローヒス達をエントランスに呼び出した後いなくなっていたセバスが突如マトモスの横に現れると優雅な礼をし兵士達と共にローヒスとヒドスを連行して行った。

 2人が完全に屋敷から出て行くのを確認するとマトモスは大きく息を吐いた。それが安堵から来るものか家族を追い出した言い切れぬ感情から来るものかは分からなかった。


「さて、これで一件落着ですね。けど大変なのはこれからです。父上達が滅茶苦茶にしたこの街を建て直さねばなりません」


「シーちゃん~」


「ああ、マトモス1ついいか?」


「なんでしょうシーツァさん?」


「いやな、あの2人がそう簡単に諦めるとは思えないんだが……」


 俺が懸念を口にするとマトモスが口元に手を当て考え始める。


「そうですね、言われてみるとその通りです。街から追放されてなお民に危害を加える気でしたら始末していただいて構いません。一度情けは掛けました、二度目はありません」


「そうか、それじゃちょっと見てくるわ。諦めずに何かしようとしてたら始末してくる」


「お願いします」


 マトモスの言葉を聞くと子供達の事をソーラ達に任せて、氷漬けになっている兵士達を【物理魔法】で浮かせると一緒に屋敷の外に出て行った。


 そしてミミナートの街門ではローヒス達がマトモス配下の兵士達に槍を突きつけられ街の外に追い出されているところだった。

 兵士達の顔にはなぜこの2人を死刑ではなく追放なのかといった不満の感情がありありと浮かんでいたが、マトモスからの命令なのでひたすらに我慢していた。


「それではローヒス様、ヒドス様、これ以降はこの街に立ち入らないようにお願いいたします。立ち入られますと犯罪者として捕縛せねばなりませんので」


「セバス! 貴方からもマトモスにとりなして頂戴! 街の外に追い出すなんてあんまりだわ!」


 ローヒスの懇願も何処吹く風のセバスは表情1つ変えることなく聞き流す。

 いい加減我慢ができなくなってきた兵士達は手に持った槍を更に突き出しローヒス達に街から出て行くように促す。


「くっ、 覚えていなさいよ! 必ず後悔させてあげますからね!」


 これ以上いると槍で貫かれかねないと思ったローヒスは最後に捨て台詞を残し去っていった。


 しばらく歩き続けミミナートの街が完全に見えなくなったのを確認するとここまで1つも喋らなかったヒドスがローヒスに話しかけた。


「なあローヒス、これからどうするんだ?」


「ヒドス、この道を4日ほど歩いていくと小さな村があるわ。 そこまでの食料や水は行商人でも襲いましょう。貴方確か戦えましたよね?」


「ああ、嗜みとして剣術を習っていたし、私は先天的に【雷魔法】を持っているから行商人程度ならすぐに殺せる」


「貴方の力で村を脅して従わせ間しょう。戦力を手に入れてなんとしてでもマトモスを殺さないと気が済みません!」


「やっぱり人間はそう簡単に反省はしないよな」


 怒りを隠すことなくローヒスが自分の感情を叫ぶと、何処からか今1番聞きたくない声が聞こえてきた。

 慌てて周囲を見回すが人影など何処にも見当たらないことに一瞬聞き間違いかと安堵した瞬間、ローヒス達の顔に雲も無いのに影が差した。

 パリィィン、とガラスの砕けるような音がした方に目を向けると、屋敷で見た兵士の氷漬けが粉々に砕け散っているのが見えた。

 そして次々と降って来る氷の塊が地面に激突し高い音を立てて砕け散っていく。


「「ヒィィィィィ!」」


 頭を手で庇いながら伏せているとやがて音が止み、氷が降って来た上空を見上げると先程マトモスの隣にいたシーツァと呼ばれていた冒険者が宙に浮いているのが目に飛び込んできた。

 人間が宙に浮いているという事態に2人は呆然としたままシーツァを見ている。


「折角見逃してもらったのにそれをふいにするなんてホントにどうしようもないな」


「な、な、な浮いてる!? なんで人間が浮いているのですか!?」


 俺のセリフに我に帰ったローヒスが驚いた顔をして疑問を投げ掛けてきた。


「んなことどーでもいいだろ。とりあえずお前等反省する気全くないな。しかもイカナ村にまで迷惑掛けようとするとか……。まあ、お前等にディーナをどうこうできるとは思えんが」


「あ、貴方! マトモスにいったいどれだけの金をもらっているのかしら? 私がその倍……、いや3倍出します。こちらにつきなさい。マトモス達を始末したら貴方を高待遇で迎えようじゃないですか!」


 ローヒスは何とかこの戦力を手に入れようと交渉を持ちかけてくる。

 その顔に余裕などなく必死さが溢れ出ていた。


「アホか。俺はマトモスに雇われてるわけじゃ……」


 格好良く「雇われているわけじゃない」と言おうとしたが、この件が終わった後に船を貰う約束をしていたのを思い出し口篭ってしまう。

 下で怪訝な顔を向けてくる2人を見て、ゴホン、と咳払いすると気を取り直して言い直す。


「アホか。雇われている最中に他の、しかも敵対している人間に鞍替えするほど節操なしじゃ――」


「我契約文を捧げ、我が敵を撃つ雷鳴を求める! 【稲妻(サンダー)】!!」


 俺の断りのセリフを言い終わる前にヒドスから一条の稲妻がこちらに向けて放たれた。

 放たれると同時に物凄い速度で迫り来る雷撃は避ける間もなくシーツァに直撃する。

 直撃した雷撃は大きな音が鳴り、大気中の水分を蒸発でもさせたのか白い煙がシーツァを包んだ。


「やった!」


 濛々と立ち込める煙を見たヒドスは魔法を放った体勢のまま勝利を確信した笑みを浮かべた。

 それがフラグになっているとは露知らず。

 徐々に煙が晴れていくと勝利を確信していたヒドスの目に信じがたい光景が飛び込んできた。魔法が直撃し、倒したと思っていたにも拘らず無傷のシーツァの姿が。


「こんなスカスカの魔法じゃ何発撃っても俺は殺せねーよ。魔法ってのはこうやって撃つんだよ【火の玉(ファイヤーボール)】」


 ピンポン玉サイズの火の玉がヒドスに向けて放たれる。


「フハハハ! なんだそのお粗末な魔法は! 何が魔法の撃ち方を教えてやるだ! こんなもの消し飛ばしてくれる! 我契約文を捧げ、我が敵を撃つ雷鳴を求める! 【稲妻(サンダー)】!!」


 見た感じ低威力の【火の玉(ファイヤーボール)】にヒドスはシーツァを嘲笑いながら迎撃するために魔法を放った。

 雷撃が火の玉に直撃した瞬間ニヤリと浮かべたヒドスの表情は火の玉が雷撃を打ち消すという予想だにしない結果に驚愕の表情を浮かべ立ち尽くした。

 そして棒立ちとなったヒドスにピンポン玉サイズの火の玉が触れた途端その体を包み込むようにして膨張する。


「ギィヤァァァァァァァァァァァァ!!」


 何とか火を消そうと地面を転がり断末魔の悲鳴を上げるヒドスは数秒もしない内にその体を炭化させ絶命した。


経験値を28手に入れました。

スキル【雷魔法Lv.1】を習得しました。【火魔法Lv.8】【水魔法Lv.4】【氷魔法Lv.5】【土魔法Lv.8】【旋風魔法Lv.2】【光魔法Lv.6】【聖魔法Lv.5】【深淵魔法Lv.6】【雷魔法Lv.1】が統合され【強属性魔法Lv.1】に進化しました。

スキル【剣術Lv.1】を習得しました。【剣術Lv.1】は【剣鬼Lv.5】に統合されました。


【強属性魔法Lv.1】:火水氷土風雷光闇聖属性の魔法が使えるようになる【属性魔法】の上位スキル。


 おっ!? スキルが統合されて進化したな。人間としてはクズで何の役にも立たないと思ってたけど……死んで役に立ってくれるとは思わなかった。


 自分のすぐそばで炭化した死体になったヒドスの姿にローヒスは腰を抜かし地面にへたり込んだ。

 じわぁ、と地面がローヒスを中心に湿っていく。

 どうやらあまりの恐怖に失禁してしまったらしい。


「あ……、ひ……、いや……」


 自分が失禁していることにすら気がつかない程にガクガク震えているローヒスは口から何か言葉を発しようと思っているようだがまともに喋ることも侭ならなかった。

 震える体を何とか動かし俺から距離を取ろうとするもののその進みは遅々としていて、赤ん坊がハイハイするほうが早いくらいだ。


「さて、ケバ女の失禁なんぞ見ても何も楽しくないしな。さっさと死ね【火の玉(ファイヤーボール)】」


 先程ヒドスに放ったのと同程度の大きさの火の玉がローヒスに向かって突き進む。

 火の玉という形をもって迫ってくる死をローヒスはその瞳に映し、絶望の中自分のこれまでの人生を思い出した。

 思い出されるのは自分の欲望の赴くままにしてきた行為の数々。

 自分が高笑いする目の前で打ちひしがれる様にしている民の姿。

 そんな光景を思い出し、火に包まれる最後の瞬間までローヒスが思っていたのは1つ。『自分は悪くない』だった。


「ウギャァァァァァァァァァァァァァッ!!」


 火に包まれたローヒスから断末魔の叫び声があがる。

 ヒドスと同じように地面を転がり火を必死の思いで消そうとするも、魔法で生み出された火は消えることなくローヒスの体を焼き尽くした。

 ものの数秒で焼き尽くされ炭化した死体になったローヒス。

 すると、そこに一陣の風が吹いた。

 炭化した2つの死体は風によって崩れ、小さな粒となって風に運ばれ消えていった。


経験値を10手に入れました。

スキル【伝播】を習得しました。

【伝播】:自分の感情や自分に掛かっている効果を味方に反映させる。


「さてと、やることやったし帰りますか」


 そう呟くと焼け跡を背にし、【飛行】のスキルを使い空へと飛び立った。

 風が止み2つの死体があった場所には焼け焦げた跡の残る地面と粉々に砕けた今だ溶けることのない氷の粒だけが残っていた。

ついにギール家の膿が皆死亡という結末を辿りました。

ローヒスの持っているスキルは後々活躍する予定になっています。

因みにヒドスの実家であるギナイカ家は名前だけの登場です。

ここでネタバレになるかは分かりませんがギール家関係者の名前の元ネタを紹介します。

もうすでにお分かりの方が殆どでしょうが紹介します。


父   アクドス・ギール あくど過ぎる

長男  ワルス・ギール  悪過ぎる

次男  ヤラシス・ギール 厭らし過ぎる

三男  マトモス・ギール まとも過ぎる

長女  ローヒス・ギール 浪費すぎる

婚約者 ヒドス・ギナイカ 酷スギナイカ


とこんな感じです。

そして今日グーグル先生であくどすぎるで検索したら真っ先に海賊戦隊ゴーカイジャーに登場した宇宙帝国ザンギャックの支配者アクドス・ギルが出てきました。

決してパクったわけではないです。本当に。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

多くのブックマークや評価、大変励みになっております。

誤字脱字文法間違いその他気になったことがありましたらお気軽に言ってください。

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