55話 イカナ村を再び訪ねたようです
前回の魔王様達のやり取りから数日前に遡ります。
アクドスの軍勢を滅ぼし、自分を含め7人に増えた一行はのんびりと歩を進めていた。
以前この辺りを縄張りにしている盗賊をあらかた潰したおかげか盗賊に襲われるということはなく、襲い掛かってくるのは土狼や突撃猪ぐらいである。
特にこれといったイベントも無いまま2日が過ぎ、ようやく遠目にイカナ村が見えるようになってきた。
「お、ようやくイカナ村が見えてきたな。リジー、アクドス達に略奪されたのは君達3人と食料だけか?」
「そうですね。他の女性は連れて行かれていないはずです。食料は備蓄も全部持って行かれてしまったのでちょっと心配です」
「そうだな、人間2、3日食わなくても死にはしないが辛いからな。早く村に行って奪われた食料を返してやるか」
「それよりもシーツァ、村の人たちにはすでにバレてるとはいえ一応姿は人間に変えた方がいいんじゃないですか? 前から姿も変わっていますから」
ソーラの言葉に、すっかり自分の姿が人間ではなく、本来の姿になっていることを思い出し慌てて前に作ったのと同じ指輪を作りだし装備する。
ゴブリンキングから戦鬼に進化し魔族の状態の見た目は変わってしまったが、【変装】を付与した指輪を装備している時の人間の姿はあの時と変わりなかった。
「これで良しっと。それじゃあ気を取り直して急ぎますか」
見た目が人間になったことを確認すると再び遠くに見えてきたイカナ村を目指して歩き出した。
「おおっ、リジー! ミルカ! アルテラ! 無事だったのか!」
「「「村長!」」」
村に到着すると、前にも聞いたことのあるようなやり取りを再び目にすることになった。
「シーツァさん、またこの3人を助けていただきありがとうございます。ところでアクドス様の軍はどうなったのでしょうか……。あの領主様が何の条件もなしに解放してくれるとは思えないのですが……」
「ああ、なんかソーラ達も奪う気満々だったから皆殺しにした」
「そうですかそうですか皆殺しに――って! 皆殺しですか!?」
あっさりと言われた言葉に目が飛びだしそうになるほど驚く村長。
プルプルと震えながらなんとか立っている村長をソーラ達が憐憫の眼差しを向けながら「あ~あやっぱり」と言わんばかりに深い溜息を吐いた。
村長と共に村に入り周りを少し観察してみた所思っていたほど酷い被害は出ていないようだった。
というか初めてここにたどり着いた時に見た光景の方が酷かったと思う。
現状家は壊されておらず、怪我人も無し。食料が奪われはしたものの、前に俺が置いていった鉄の槍(付与あり)のおかげで狩りができた為食糧にはそこまで困っていない様子だった。
村長に連れられ村の備蓄庫に行き、【異次元収納】に入れておいたアクドス軍の糧食を備蓄庫に入るだけ入れる。
まだ【異次元収納】に食糧が残っているので【土魔法】で地面を掘って地下室を作り、即席の備蓄庫の中に入れていった。
備蓄庫に食料を入れ終わる頃には日も傾き始め、辺りが薄暗くなってくると村長が俺の下にやってきた。
「何から何までありがとうございます。村人達も食糧が戻ってきた事を喜んでいますよ。どうでしょう、お礼になるかは分かりませんが広場で宴を開きますのでどうぞ食べていってください」
「ああ、すまないな気を使わせてしまって。宴には喜んで参加させてもらうよ。ところで前に俺達が使っていた家は残っているか?」
「はい、残っていますよ。村の恩人の家ですからな、壊すことなどできませんよ」
「そうか、ありがとう。宴が終わったら今日はそこで俺達は休ませてもらうよ」
村長と共に広場へ向かうと既に宴の準備が終わっており、俺と村長を待つばかりの状態だった。
「遅いですよ~、先に食べ始めようかと~、思いましたよ~?」
「がぅ、お腹空いた」
「お疲れ様ですシーツァ。皆さん待っていたんですよ?」
その手に思い思いの食べ物や飲み物を手に取りこちらを急かす。
軽く誤りながらソーラの隣に腰を下ろすとすぐに村の女性から飲み物を手渡された。
村長も飲み物を手に持ち、宴会場の中心に立つとコップを掲げ大きな声で乾杯の音頭を取った。
「ええー、この度領主アクドスにより奪われた村の食料とリジー達3人娘がシーツァさん達のおかげで無事に村に帰ってきました。感謝の意味も込めて今日は盛大に飲んで歌ってください。乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
村長の合図に合わせる様にして村人達がそれぞれの手に持ったコップを掲げて声を張り上げた。
俺やソーラ、アイナもそれに倣いコップを掲げ乾杯をするが、シリルだけは既に手元の肉を食べることに夢中になっており、彼女の前に置いてある皿には骨だけになった元肉が山積みになっていた。
「シリル、そんなにがっつかなくてもまだまだ食べ物はたくさんありますよ」
「がぅ、私は――ガツガツ――食べれる時に――ムシャムシャ――好きなだけ――モグモグ――食べたいのだ」
「わかったから食べるのか喋るのかどちらかにしなさいよ」
ソーラの言葉を聞いたシリルは喋ることを止め、完全に食べることに没頭した。食べる事だけに神経を集中いているのか先程よりも骨の山の高くなる速度が加速の一途を辿っている。
そんなシリルの人間離れした――実際人間ではない――食欲も宴会で酒を浴びるように飲んでテンションMAXな村人達は気にする様子もなく、皆楽しそうに飲めや歌えやの乱痴気騒ぎであった。
「みんな楽しそうですね」
「ああ、無くなったと思ってたものが返ってきたんだ。騒ぎたくもなるだろ」
「この調子じゃ~、きっと朝日が~、昇るまで終わらないかもですよ~?」
「まあ、眠くなったら勝手に寝るだろ。俺達もある程度楽しんだら寝るとしよう。今日はちょっと疲れたしな」
俺達もそれぞれ出された料理を食べ、酒を飲みながら村人達の歌や踊りなどの芸を見ながら宴を楽しんだ。
料理もこんなに出して大丈夫なのかとも思ったが、後で村長に聞いてみたところ無くなったと思っていたので構わないとの事だった。
食べれるだけ食べ飲めるだけ飲み、村人達の芸を見ながら笑い、宴を目一杯堪能したところで村長に疲れたから先に休む旨を伝えると、ソーラとアイナと一緒に俺達の使っている家に向かった。因みにシリルは俺達がいなくなった後も食べ続けていたが、俺達がいないと分かると手に持てるだけの肉を持ち家に戻ってきた。
シリルが肉を食べている間に家の中に土狼の毛皮を敷き寝床を作る。
作り終えるとタイミングよく食事が終わったシリルのこちらを見る眼が妖しく光っていた。吐息は荒く、上気した頬とうるんだ瞳がとても艶めかしい。
そんなシリルに見惚れていると、次の瞬間にはシリルによって寝床に押し倒されていた。
「がぅ、シ~ツァ~」
「ちょ、いきなりどうしたシリ――んぐ!?」
抵抗する間もなく服を剥ぎ取られると、その柔らかい唇を押し付けてくる。柔らかくねっとりとした舌がこちらの唇をこじ開け侵入してくる。シリルから受け渡された唾液は先程食べていた肉の味がした気がした。
そんなシリルに影響されたのか、ソーラとアイナもまるで何かに取りつかれたかのようにフラフラと近づいてくると服を脱ぎ、シリルと同じように求めてきた。
「シーツァ……」
「シ~ちゃん~……」
「って、2人まで!?」
ソーラのねっとりとした口と舌にに指を舐られ、アイナの大きくもっちりとした胸に腕を挟まれた時、自分の中で何かが弾けるような音がした気がした。
「あーもう! ここまでされて我慢なんかできるか!」
理性が切れ、一気に膨れ上がった性欲に身を任せ逆に3人を押し倒す。
遠くで村人達の宴会の騒ぎ声に隠れながらも俺達の家からはソーラ達3人の嬌声が響いていた。
第3章本編がついに開始になりました。
相変わらずの文章力の無さですが、この章もよろしくお付き合いお願いします。