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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
第2章 ゴブリンと冒険者ギルドと死者の王
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49話 テスカトリポカとの戦いのようです その1

戦闘シーンが難しすぎる……。

「邪魔するなんて酷いじゃないですかシーツァさん」


 突如屋根の上から落ちてきた声。以前も聞いた事があり、そして今1番聞きたくない声だった。

 屋根を見上げるとそこには穏やかな笑みを浮かべる若い冒険者、トルクが立っていた。

 その隣にはトルクとよく似た綺麗な女性も立っている。


「久しぶりだなトルク。あんまり会いたくはなかったんだがな」


「久しぶりの再会なのに酷い言いようですねシーツァさん。それに僕の邪魔もできればしないでいただきたいんですが?」


「邪魔ってなんだよ。こっちは街のあちこちに屍鬼(グール)が出てきて大わらわだってのによ」


 俺とトルクの会話を怪訝(けげん)そうに見ている冒険者達。いつの間にか屍鬼(グール)達もいなくなり、辺りには俺とトルクの会話だけが響いていた。


「邪魔っていうのはですね、カリム達の治療をしたことですよ。彼等には早く死んでもらいたかったんです」


「なんでだ、あいつ等はお前の仲間じゃなかったのか?」


「仲間ですよ? だからこそ早く殺して特製アンデッドに変えてやりたかったんですよ。そうすればずっと一緒にいられますしね。姉さんのように」


 隣の綺麗な女性の手を握り締めるトルク。恐らく彼女がトルクの姉なのだろう。よく見ると顔立ちも何処となく似通っているところがあるようにも見える。

 ただ、彼女の顔は感情が抜け落ち、自分の意思というものが全くといっていいほど無い様に感じられた。


「そんな自分の意思もないただの死体と一緒にいたいってのか。狂ってるなお前」


「確かに今はまだ感情も無くただいるだけの存在ですが、僕が強くなれば作れるアンデッドも意思を持つようになりますからね。姉さんもいずれ生前の感情を取り戻すでしょう」


「なるほど、そんな風に入れ知恵されたのか。お前の隣で【気配遮断】と【透明化】のスキルで隠れている奴に」


 俺の言葉に周りの冒険者は、「何言ってるんだこいつ?」みたいな顔をしながら俺の方を見てくる。

 そんな中、トルクの隣からトルクとは別の低く、重苦しい声が響いてきた。


「ふぉっふぉっふぉ。儂の姿を捉えるとはお主中々やるのう。正確には【透明化】ではなく【霊体化】じゃがの。それはともかくどうじゃ? 儂の配下にならぬか?」


 トルクの隣の空間が歪むと徐々に姿が浮かび上がってくる。

 その姿は豪奢な漆黒のローブを身に纏い、頭骨の眼窩に赤い宝石を填め込んだ骨の杖を握る骸骨だった。

 その頭の上には金で出来た王冠が載っており、高位の魔物であることは用意に理解できる。


「断る! つか誰だお前は」


「儂か? 儂の名はテスカトリポカ。偉大なる魔王様に仕える魔王軍四魔将が1人、不死王テスカトリポカ様じゃ!」


 骨の両腕を大きく広げ盛大に名乗りを上げるテスカトリポカ。腕を広げた弾みでローブが広がると中の骨が見え、その片足はなく魔法で地面すれすれに宙に浮いているのが見えた。


「お前か! トルクをアンデッドにしやがったのは!」


「いかにも! 魔王軍の勢力を増すために独自にこの街の人間共を屍鬼(グール)に変えようとやって来たところ、強烈な怨念に惹かれての。この小僧の死体から溢れる憎悪はとても心地よかったぞい。小僧を気に入った儂は【上位アンデッド作成】のスキルで死霊(リッチ)に作り変えたというわけじゃ。この街を知っている小僧は大層役に立っておるぞ。まあ、元が剣士だったからか【下位アンデッド作成】しかまだできんのが難点といえば難点じゃの」


 テスカトリポカがやれやれいった具合で首を振っているとその頭目掛けて1発の火球が飛んできた。

 火球はテスカトリポカの頭を包みそのまま燃え盛る。


「今だ! 魔王軍の幹部を、それも4魔将の1人を討ち取ったとありゃあ褒美もかなり出るだろ! 数に任せてブッ殺せぇー!!」


「「「「おおーーーーっ!!」」」」


 俺達のやり取りを見ていた冒険者達が一斉にテスカトリポカに殺到する。

 氷や土、風に炎など様々な魔法がテスカトリポカ目掛けて放たれ、近接攻撃系の冒険者も屋根の上に上がり数に任せて斬り掛かって行く。

 次々と魔法が着弾するとテスカトリポカは大量の煙に包まれ、次の瞬間には冒険者達の剣や槍がその骨の体に襲い掛かる。


「ふむ、こんなものかの……」


 煙が晴れるとそこには登場したときから一切変わらない、無傷のままの姿で佇んでいた。

 あれだけの魔法を受けたにも関わらず骨には一切の焦げも傷も無く、それどころかローブにすら傷1つついていなかった。

 冒険者達の繰り出した剣や槍も全てローブに阻まれ、傷の一欠けらもつけることは叶わなかった。


「所詮は雑魚しかいない町か……。では次はこちらの番じゃな。安心せい、きっちりと殺してアンデッドにしてやるからのう【闇の弾丸掃射(ダークバレットバースト)】」


 杖を掲げると頭骨の眼窩に填め込まれた宝石が輝き周囲の冒険者目掛けて無数の闇から作り出された弾丸が襲い掛かる。


「やべっ、【光の障壁(ライトウォール)】!」


 咄嗟に【光魔法】で障壁を生み出し弾丸を防いだが、それが出来ない冒険者は次々と眉間を撃ち抜かれ即死していった。

 そしてテスカトリポカが放った魔法が撃ち終わる頃にはギルドの外で立っている冒険者は俺とソーラの2人だけだった。


「ほう、儂の魔法を防ぐか。いっそう配下に欲しくなったぞい」


「ああ! 誰が――」


「そうよん! あなたの配下になんかなるわけないでしょん!」


「そうよ! おねぇさまの言うとおりだわ! 私達は屈しないわよぉー!」


 俺の拒絶の言葉にかぶせるように無事だった2人の怪物(オカマ)が自分達の筋肉を強調するようにナイスポーズを決めながらテスカトリポカの言葉を拒絶した。

 ゴンザレス(プリティー)さんとキューティーさんは自分達に迫り来る無数の弾丸を全てナイスポーズをとることによって弾いており、鋼のような肉体には細かな傷すら1つもついていなかった。

 そんな2人の怪物(オカマ)に骸骨なので表情は分からないが、口をあんぐりとあけながら固まっているテスカトリポカをいつもの如く【看破】した。


名前 テスカトリポカ ♂

種族 不死族:死霊王(エルダーリッチ)

状態 健康

Lv 86

HP 1927/1927 (+1000)

MP 4081/4181 (+3000)


攻撃力 1272

防御力 1029

魔力  4721 (+3000)

魔抵抗 4199 (+3000)

速度   512

運     22


スキル

【上位アンデッド作成】【中位アンデッド作成】【下位アンデッド作成】【浮遊】【気配遮断Lv.6】【霊体化】【深淵魔法Lv.6】【最大HP超上昇Lv.2】【最大MP超上昇Lv.6】【魔神Lv.6】


 完全な魔法特化型かー。魔王軍の幹部ってだけあってかなり強いな。この街の冒険者達じゃ逆立ちしても勝てそうに無いな。ゴンザレス(プリティー)さんやキューティーさんは戦えるんだろうけど、なんの準備もなしに勝てる相手じゃないのは確かだろうな。


「ま……まさか、弱い魔法とはいえ儂の魔法をこうもあっさりと弾くとは……。こうなったら何としてでも殺して配下に加えてやるわい【闇の槍(ダークスピアー)】」


 再び杖を掲げると先程よりも強い光を杖の宝石が発していた。

 すると闇を圧縮して槍の形にした物が3本形成され、次の瞬間俺達目がけて撃ち出された。

 流石に怪物(オカマ)2人も避けないと(まず)いと感じたのかその場を飛び退き槍を回避する。

 俺もソーラを抱え跳躍し槍を回避する。槍はそのまま地面に突き刺さると綺麗な穴を地面に空け溶けるように消えていった。


「まだまだ行くぞい」


 再び闇で出来た槍が今度は6本作られ撃ち出されていく。

 槍を回避しながらギルドの中へソーラを避難させると自分の周囲に複数の槍の穂先を【異次元収納(アイテムボックス)】から出現させ、【物理魔法】で次々とテスカトリポカ目がけ撃ち出した。

 テスカトリポカのローブを貫き、そのまま骨の体を砕くかと思われた瞬間槍は骨の体を素通りし、そのまま飛んで行った。


「なっ!」


「さっき言ったじゃろう? 【霊体化】のスキルじゃと。普通の物理攻撃なぞ儂の体には通用せんよ。まあ、儂のローブを貫くとは思ってもみなかったがのう」


 屋根を杖でコンと軽く叩く。次の瞬間俺の陰から複数の闇で出来た槍が伸び、俺を刺し貫こうと迫ってくる。

 咄嗟に背後へ飛び退くが間に合わず、鋭い尖端に右手を貫かれていた。

 即座に【特殊武具作成】で作り出したミスリルの剣で槍を切り裂くと陰から生えていた槍が溶けるように消え、手を貫いていた部分も同じように消えた。

 穴の開いた右手を【超再生】で修復し、お返しとばかりに【光魔法】で生み出した槍をテスカトリポカに向けて撃ちだす。


「ふぉっふぉっふぉ、やるのう。じゃがまだまだ甘いの。【闇の穴(ダークホール)】」


 テスカトリポカの前に渦巻く闇の穴が生まれた。その穴に入ったら2度と出て来れないんじゃないかと思える様な深い闇。

 光の槍はあっけなく空間に生まれた深い穴に吸い込まれて消えると、穴は初めから無かったかのように消えた。


「チッ! だったら接近戦だ!」


 左手にもう1本ミスリルの剣を生み出し、【空間機動】を使いジグザグに動きながらテスカトリポカに迫る。


「ふむ、儂は接近戦は苦手なんじゃ。魔力の消費が激しいからあまり使いたくはないんじゃが仕方ないのう【上位アンデッド作成】」


 屋根を杖でコンコンと2回ほど叩くとテスカトリポカの前に2つの魔法陣が生まれ、そこから鎧を装備した騎士が2体姿を現した。

 首の上には頭が無く、それを踏まえてもその体は大きく2m程はあるかのようにみえる。

 そして、片方の骸骨騎士は身の丈程の大剣を手に持ち、もう片方は馬上槍を手に持っており、両方に共通点は武器を持っていない方の手で骸骨の頭を抱えていることだろう。

 突如現れた2体の骸骨騎士に咄嗟の方向転換ができず勢いのまま斬り掛かる。

 すると片方の騎士が大剣を盾のように構え俺の剣戟を受け止めた。

 剣戟を止められ、一瞬固まってしまった俺に向かって大剣を持った騎士の隙間から馬上槍が突き出される。

 大剣を蹴り飛ばし後ろに跳ぶことで何とか直撃は免れたものの、左手をかすめてしまった。


「どうじゃ? 一筋縄ではいかんじゃろう。 儂の魔力をかなり込めて作り上げた死霊騎士(デュラハン)じゃ。そこらの屍鬼(グール)と同じように思ってたらすぐに死ぬぞい」


 地面に着地すると今度は2体の死霊騎士(デュラハン)が屋根から飛び降りこちらに襲い掛かってきた。

 その巨体が降ってくる光景は圧巻で咄嗟の回避が出来ず、何とか【土の壁(ランドウォール)】を生み出し防御するが、すぐにそれが悪手だと気付かされた。

 馬上槍が土の壁を易々と貫き俺の肩に突き刺さると、そのまま地面に縫い付ける。

 次の瞬間痛みに呻く俺の瞳に映ったのは上段に構えた大剣を一気に振り下ろしてくる死霊騎士(デュラハン)の姿だった。

 地面から土の柱を生み出し、馬上槍の死霊騎士(デュラハン)を下から叩きつけ吹き飛ばす。

 死霊騎士(デュラハン)が武器を手放さなかったおかげで肩に刺さっていた馬上槍も抜けると即座に地面を転がり大剣を回避した。

 回避された死霊騎士(デュラハン)の大剣は深々と地面に切れ込みを入れその一撃の威力を物語る。


「あーいてぇ。2体とも息してないはずなのに息が合ってるとか勘弁してもらいたいわ」


 刺された肩を押さえながら距離を取りながらぼやく。

 目の前にはそれぞれの武器を構え再び突撃しようとしている2体の死霊騎士(デュラハン)の姿があった。

魔法使い系の強敵との初戦闘です。

戦闘描写が難しすぎてかなり時間が掛かりながら書き上げました。

やっぱり頭の悪い私には文字だけで全てを表現するのはかなりの重労働な気がします。

最近艦これACをプレイするのが休日の楽しみになっています。

平日が休みっていいですね。日曜とかだときっと朝早くから行ってもかなり並びそうですし。

まあ、平日でもゲーセンの開店前に並んでる人がいるので即プレイは出来ないんですけどねw


ブックマークや評価ありがとうございます。読んで下さっているとの実感が持てるので大変励みになっております。

ご指摘などがありましたら遠慮なくお願いします。

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