44話 驚愕の事実のようです
地上に帰還した俺達はそのまま冒険者ギルドのゴンザレスさんの所に向かった。
相変わらず誰も並んでいない受付に座っている厳ついおっさんの下へ向かう俺達を周りの冒険者は尊敬の眼差しを向けている。一部俺にのみ嫉妬や殺意の眼差しが向けられているがいつもの事なので気にしないでおく。
「あら~、おかえりなさいシーツァちゃん、それにソーラちゃん達も。迷宮どうだったのん?」
「ああ、今日はとりあえず様子見で5階層まで攻略してきた。ボスは呆気なかったんだが、道中酷い目に会ったよ」
「あら、そうなのん? いったい何があったのよん」
「1階層で巨大粘液が出てきたんですよ」
ソーラの回答に目を見張るゴンザレスさん。あまりの驚きに声が出ないようだった。
「……1階層で巨大粘液なんて聞いたことないけどねん……。あなた達が言うなら本当なんでしょうねん」
「ああ、とりあえずギルドカードで確認してくれ。あとこれそいつが落とした魔石とドロップアイテムだ」
ゴンザレスさんにギルドカードを渡すと【異次元収納】から巨大粘液の魔石と大きめのビンに入った粘液を受付の机の上に置いた。
ギルドカードを確認するし、机の上に置かれたドロップアイテムを見ると溜息をつきながら俺に返してきた。
「はぁ~、ほんとに迷宮の1階層に巨大粘液が出たなんて一大事よん。今回だけの出来事ならまだいいんだけどねん。常に出てくるんじゃ迷宮に入れるランクを制限しないといけないわん。あれはBランクの魔物なのよねん。ただ、【火魔法】が使えるのなら脅威度は一気にDランクまで下がるんだけど、使えないとなるとBランクになっちゃうのよねん」
「物理攻撃でも倒せるのかあれ。核切り裂いたけど普通に再生してたぞ?」
「あれの核は特殊でねん。1回切り裂いただけじゃ死なないのよん。再生が追いつかないほどの速度で核を細切れにしないといけないのよん。ランクの低い冒険者だとそれが出来ないのが多いからなかなか狩れないのよねん。しかも相手もただでやられるわけじゃないからねん」
なるほどな。だから核1回斬り裂いただけじゃ死ななかったのか……。最初から魔法使ってれば皮膚溶かされることもないしあそこまで疲れることもなかったんだろうな……。
「そうだったのか……、それなら次はもっと楽に倒せるな。ああそれと、今日の迷宮での入手品の買い取りを頼みたいんだが」
「いいわよん。それじゃあ売却したい物をこの箱に入れて頂戴」
机の下から取り出した30cm四方の箱を置くと売却品を入れるように促してくる。
「そんなに小さい箱で大丈夫なのか? 結構量があるんだが……」
「大丈夫よん。この箱には【超収納】と【集計】のスキルが付与されていてねん。見た目以上に物が入るし入れた物をきっちり数えてくれる優れものよん」
説明を聞くと俺は箱の中に今日の収穫を無造作に入れていった。
浅い階層のドロップだったので1つ1つはたいした金額にはならないだろうが量だけはあるので多少は懐も温かくなるだろう。
すべてのアイテムを入れ終わるとゴンザレスさんが箱についている表示を読み上げる。
「子犬の魔石が52個、子犬弓兵の魔石が32個、子犬魔術師の魔石が27個、子犬王の魔石が1個、粘液の魔石が22個、巨大粘液の魔石が1個、子犬の毛皮が52枚、子犬の爪が34個、子犬の牙が25個、粘液の粘液が22個、巨大粘液の粘液が1個ねん。合計で1818リルカよん。買い取りは以上でいいかしらん?」
「そうだな……。ついでにこれも見てくれないか?どれだけの値段になるのかさっぱりでな」
【異次元収納】から【子犬王の指輪】を取り出してゴンザレスさんに手渡す。
懐からレンズの様な物を取り出して指輪を観察する。どうやら【鑑定】が付与されているらしかった。
「これはまた珍しい物を持って来たわねん。【子犬王の指輪】は5階層のボス、コボルドキングのレアドロップよん。滅多な事ではドロップしないんだけど……。運が良いわねん、これ目当てで子犬王と闘う冒険者もいるぐらいなのよん」
「そんなに貴重品なのか」
「そうねん。特に魔法使い系の冒険者には大人気ねん。詠唱の時間を稼ぐ為にコボルドを召喚して囮にするのが1番の利用方法ねん。この指輪の買い取り価格は100万リルカよん」
「ひゃっ……100万リルカー!? そんなにするのか!」
「え、ええ、元々レアドロップで数が少ないんだけどねん、あまりの需要に供給がまったく追いついていないのよん。だから値段もどんどん高騰していってるのよねん。どうする? ギルドで売却する? 他の店で買い取りしてもらえばもっと高く買取してもらえるかもしれないわよん?」
「いや、いい。ここで買い取ってくれ。あとこれも」
【異次元収納】から黒巨狼の頭と胴体を取り出し箱に入れる。
出した瞬間ざわついていたギルド内が一瞬静かに様な気がしたが気のせいだろう。
「黒巨狼は状態が良いから10万リルカねん。いいかしらん?」
「ああ、頼む」
「わかったわん。それじゃあ合計で110万1818リルカよん」
金庫から大銀貨1枚と銀貨10枚、大銅貨18枚と銅貨18枚を出すと皿の上に積み上げる。
お金を全て【異次元収納】に入れると不意に冒険者ギルドを見回した。
目的の人物がいない事を確認するとゴンザレスさんに訊ねた。
「なあ、最近トルクの奴を見ないんだが……、何処にいるか知らないか?」
俺が言葉を発した瞬間今度は間違いなく冒険者ギルド全体が凍りついたように静まり返った。
突然の静寂に驚き辺りを見回すがほぼ全ての冒険者達は俯いて顔をあげることをしない。
「なんだ? 俺何か変な事でも言ったのか?」
ソーラ達も突然の事にキョロキョロと周りを見回している。
余りの静けさに驚いている中不意にトルクと同じくらいの年の少年が殆ど同じ顔をした2人の少女を連れて声を掛けてきた。
「すいません、あなた達はどこでその名前を知ったのですか?」
「いや、つい数日前に会ったんだけど……。お前達は誰だ?」
「名乗りもせずに失礼しました。僕はカリム。後ろの2人はアリアとサリアです」
カリムが名乗るとそれに合わせるようにアリアとサリアの可愛らしい双子が頭を下げてくる。
アリアは右の側頭部に、サリアは左の側頭部で髪を結っている所謂サイドテールにしていた。
双子故か動作に全くズレが無いのは双子の神秘と言わざるを得ないだろう。
「それでトルクの名前を知っていたとしてそれがどうしたんだ?」
「いえ、あなたは今つい数日前とおっしゃいましたよね? けどそれっておかしいんですよ。トルクは2ヶ月も前にワルスに殺されているんですから」
カリムの言葉を聞いた俺達は今度こそ驚愕の表情を浮かべた。ただ、シリルだけは状況を理解していないのか驚いている俺達をみてポカンとした表情を浮かべている。
「い、いや、同じ名前の人物だった可能性はないのか? 確かに見た目はお前達と同じくらいの年齢見えたが……」
「見た目が僕達と同じくらいの年齢なら間違いなく僕達の仲間のトルクです。この街の同年代でトルクの名前を持っているのは1人だけですから」
「けどなんでワルスに殺されたんだ?」
「それは……」
不躾な俺の質問に拳を握りしめ微かに体を震わせながら言葉を濁すカリム。助け船を出すかのように後ろからゴンザレスさんが俺の質問に答えた。
「それはね、あの子の姉がワルスに連れて行かれたの。父親は娘を連れて行かせまいと抵抗した為にその場て瀕死の重傷を負わされた。あの子は採取依頼でこの街にいなかったからそれを知ったのは帰ってきてからなんだけどね。そして姉が連れ去られ、父親も瀕死の重傷を負わされ、治療の甲斐も無く死んでしまった。絶望した母親は体調を崩しそのまま帰らぬ人になってしまったの。こう言うのもあれだけどそれぐらいは珍しい事ではないのよ。領主の息子で街の人が逆らえないからってやりたい放題してるのはみんなが知っている。昔訴え出た人もいたけど首だけになって帰って来たわ。それで話を戻すけど、その後街のゴミ捨て場で姉が発見されたわ。見るも無残な死体になってね。知らせを受けたトルクがその場に向かうとタイミング悪くワルス一行もその場に来てしまったのよ。そしてトルク君の姉の死体を見ながら自分達がしたことを笑いながら大声で自慢げに話し、事もあろうに死体を蹴りつけたのよ。それで我慢の限界だったあの子は激高してワルスに斬り掛かったものの逆に心臓を一突きされて殺されたわ。ただ、不思議な事に遺体を安置する場所から2人の遺体が消えてしまって一時期騒ぎになったわね」
3人はその時の事を思い出したのか声を抑えながら泣き始めた。
ゴンザレスさんですらいつものようにいかつい顔に笑みを浮かべるのではなく真面目な顔をし、口調も悲しみを隠し切れないのかいつもの喋り方ではなかった。
あまりに酷い顛末にソーラ達もワルスに対する怒りを隠せないようで背後から黒いオーラが立ち上っているように見える。
そんな静かな冒険者ギルドに響くカリム達の嗚咽をかき消すかのように大きな音をたて冒険者ギルドの扉が開かれた。
6人ほどの全身鎧の兵士を引き連れた小太りの男がギルドに入るなり俺達を、俺とカリム以外のソーラ、アイナ、シリル、アリアとサリアの双子を見つけると厭らしそうな笑みを一瞬浮かべた。
すぐに真面目そうな顔つき(厭らしさは隠しきれていない)に戻すと手に持った紙を大声で読み上げる。
「私はギール領領主アクドス・ギールが次男ヤラシス・ギール! 冒険者シーツァ! 我が兄ワルス・ギール殺害の罪で貴様を拘束する!」
最近艦これACを始めたのですがあまりの待ち時間に辟易としています。
仕事明けで平日の午前中にゲーセンに行くのですが、既に10人近く並んでいるのを見ると即座に帰ります。
仕事明けで2時間近くも待ちたくないですしね。
もっと艦これACの筺体が増えればいいのになー、と思う今日この頃です。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。
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