35話 意外に強かったようです
ワルスと愉快な仲間達との戦闘後になります。
今回はちょっと短いです。
眼下には複数の土狼と持ち主を失った装備品が転がっていた。
食事が終わっても移動する気配が無いので不思議に思い眺めていると、不意に1匹の土狼が光始めた。
強く辺りを照らしていた光は徐々にその勢いを弱め、やがて完全に光が消えるとそこには周囲の土狼よりも2回りは大きい狼がいた。その毛並みは先程よりも艶があり、黒ベースの毛並みに白い流線型の模様があった。
なんだあれ? 他の土狼よりも少し大きいと思っていたら光った挙句更に大きくなったな。ありゃ進化したのか? いやー自分達以外の進化に立ち会えるなんてラッキーだな。【看破】で確認しとくか。
名前 無し ♂
種族 魔狼族:黒巨狼
状態 健康
Lv 20
HP 294/294
MP 58/ 58
攻撃力 371 (+100)
防御力 247
魔力 99
魔抵抗 92
速度 397 (+100)
運 10
スキル
【迅速Lv.2】【剛力Lv.2】【気配察知Lv.8】【立体起動Lv.8】
なんか一気に強くなってる気がするのは気のせいだろうか。しかもなんかこっち見てるし……。もしかして俺に気づいてる? てか【気配察知Lv.8】って……俺の【気配遮断Lv.7】よりも高い――!?
近くの木を足場にし、一瞬にして俺のいる高さまで駆け上がってきた黒巨狼はその勢いのまま鋭い牙と爪をむきだしにしながら跳びかかってきた。
不意を突かれた俺は咄嗟に手に持っていた長剣で防御したが、体勢も悪かった為そのまま隣の木に叩きつけられ地面に落下した。
地面に叩きつけられる寸前に【物理魔法】で自分の重力を遮断し、自分と地面の間に【旋風魔法】で空気のクッションを作りそこに落下した。
地面に叩きつけられることはなかったものの攻撃を受け止めた右手は若干の痺れを感じていた。
あぶねー、呑気に相手のステータス確認してたらこれか……。俺のステータスが圧倒的に高かったから良かったものの同じ程度だったら殺されてたな。どんな相手でも油断は禁物だな、良い勉強になった。
空気のクッションの上に仰向けになりながら思考する。眼だけはずっと黒巨狼を捉え、いつ襲い掛かってきても対処できるようにしながら。
「よっと」
さて、周りの土狼は重力で押しつぶして、黒巨狼は首落として持って帰るか。売れそうだし。
俺の気配が変わったことに気が付いた黒巨狼は毛を逆立て、唸り声を上げながら警戒を露わにしていた。
ええっと、【気配察知】によると|土狼は総勢22匹かそれじゃぁ早速――。
「【グラビトン】」
一瞬にして俺の周囲を囲んでいた土狼は先程の魔導師と拳闘士のようにビシャっ水風船の割れるような音を立てた瞬間地面に真っ赤な水溜りを作った。
先程同じようにして殺した魔導師と拳闘士や狼に食われたワルス御一行の血と混じり、もう元が誰の血だか分からないような状況になっていた。
黒巨狼はむせ返るような血の海の中で恐怖に怯えながらも必死で前の敵を睨みつけていた。
あれだけいた仲間は一瞬の内に全員殺されてしまった。それも自分には到底理解できない力によって原型を留めることなく。
進化したことによって得たこの力があれば木の上で気配を殺してこちらを見ている男を殺して更に強くなれると思っていた過去の自分を噛み殺してやりたい気分になっていた。
逃げ出すことも出来ずにいた黒巨狼は覚悟を決めたのか一際大きな咆哮をあげると今まで以上の爆発的な速度で跳び掛かってきた。
迎撃しようと長剣を構えると、黒巨狼は1歩手前で速度を維持したまま別の方向へ跳躍した。
へぇ……、なかなかやるじゃないか。これじゃあワルスと愉快な仲間達じゃ手も足も出ないだろうな。
【立体起動】を全力で使い四方八方の木々や地面をを足場にし、そして徐々に速度をあげながら縦横無尽に跳び回り続けた。
そして速度が最高潮に達した瞬間黒巨狼は俺の首の後ろを狙うように背後の木の幹を足場に咆哮をあげながら襲い掛かってくる。
獲物を引き裂くための鋭い爪がうなじに届いたと思った瞬間目の前の強敵がいなくなっていることに気が付いた黒巨狼は目を丸くして驚いた。
「お前、なかなか強かったぞ」
俺は鋭い爪の一撃を寸での所で躱し、心からの賛辞を送りながら一刀のもとにその首を斬り落とした。
首が宙を舞い、地面を擦りながら転がっていった胴体はその勢いを徐々に減らしながら木に激突し、ようやく止まった。
「さて、依頼の魔物は十分倒したし、みんなと合流するか」
黒巨狼の首と胴体を【異次元収納】に入れるとソーラ達の気配を探りだし、歩き始めた。
今回出た黒巨狼はワルスよりも強いです。油断してたら瞬殺されるレベルです。
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