34話 報復されるようです その2
今回は少し長いです。
ちょっとグロい描写があります。苦手な方はお気をつけください。
「テメェ、多少は出来るようだがあんまり調子にのるんじゃねぇぞ?」
俺の周囲に転がっている自分の部下の惨状に苛立ちを隠し切れずにいるワルス。
ワルスのパーティーと思われる連中は目の前の、自分達の想定していた結果と真逆の事態に動揺を隠せないでいた。
さて、ザコの処分は終わったか。後はワルスと愉快な仲間達を殺せば万事解決なんだが、そういえばまだあいつらのステータス確認してなかったな。持ってないスキルが有ったら直接殺して奪う為にも確認せねば。
名前 ワルス ♂
種族 人族:ヒューム 職業 騎士
状態 健康
Lv 38
HP 289/289
MP 45/ 45
攻撃力 236
防御力 229
魔力 98
魔抵抗 83
速度 198
運 10
スキル
【剣術Lv.5】【盾術Lv.5】
うん、たいして強くないな。ホントにBランクなのか?まあ、Bランクの基準なんか分からないんだけど……。目新しいスキル持ってないからこいつはあの殺し方にしようかな。
名前 トリーマキ ♂
種族 人族:ヒューム 職業 暗殺者
状態 健康
Lv 34
HP 153/153
MP 54/ 54
攻撃力 229
防御力 151
魔力 50
魔抵抗 45
速度 269(+45)
運 8
スキル
【俊敏Lv.9】【気配遮断Lv.5】
こいつもワルスと同じ末路を辿らせるか。
名前 キンーチャック ♂
種族 人族:ヒューム 職業 聖職者
状態 健康
Lv 31
HP 121/121
MP 222/222(+20)
攻撃力 63
防御力 102
魔力 213(+20)
魔抵抗 199(+20)
速度 98
運 9
スキル
【光魔法Lv.5】【聖魔法Lv.4】【回復魔法Lv.6】【最大MP上昇Lv.4】【魔仙Lv.4】
お!? こいつは持ってないスキルが2つもあるな! これは奪うしかないでしょう!
名前 コーシ ♂
種族 人族:ヒューム 職業 魔導師
状態 健康
Lv 34
HP 112/112
MP 235/235(+25)
攻撃力 78
防御力 89
魔力 253(+25)
魔抵抗 185(+25)
速度 100
運 2
スキル
【火魔法Lv.5】【氷魔法Lv.5】【最大MP上昇Lv.5】【魔仙Lv.5】
んー、魔法関係が今回は豊作だな。ようやく【氷魔法】が手に入る。ソーラには【氷魔法】が似合いそうなんだよな。
名前 フーン ♂
種族 人族:ヒューム 職業 拳闘士
状態 健康
Lv 35
HP 312/312
MP 111/111
攻撃力 214
防御力 249
魔力 113
魔抵抗 165
速度 192
運 5
スキル
【拳闘術Lv.6】
【拳闘術】はシリルが持ってるけど俺はまだ持ってなかったんだよな。スキルは持っていて損はなさそうだし、こいつも俺が殺すか。
名前 キーギョ ♂
種族 人族:ヒューム 職業 狩人
状態 健康
Lv 33
HP 216/216
MP 82/ 82
攻撃力 198
防御力 189
魔力 93
魔抵抗 105
速度 180
運 11
スキル
【弓術Lv.5】【気配察知Lv.7】
こいつはいいや。ワルスと同じ末路決定。
全員のステータスを確認し終えると持ってないスキルが4つもあり、ついつい口角をあげ笑っているとワルスが突っかかってきた。
「おいおいなに笑ってんだよ。死ぬのが怖くて頭おかしくなったのか?」
他のパーティーメンバーと一緒に目の前の惨状を見ても自分達の方が強いと思っているのか俺を嘲笑うワルス達。
「いやいや、お前等程度に負けることなんてありえねぇよ。この後のおいしいご褒美を考えるとついつい笑っちまうだけだ。それよりいいのか? 命乞いの練習をしなくてよ」
「テメェー!! 絶対に殺す!! 行くぞお前等!!」
「「「「「おう!!」」」」」
ワルスの号令と共に一斉に各自が行動に移した。
キンーチャックとコーシが詠唱を始め、それを守るようにワルスが盾を構える。
キーギョは木の上まで飛び上がり、弓に矢を番えてこちらに狙いを定めてくる。
トリーマキは背後の木々へ身を隠し、フーンは真っ直ぐに俺の方へ詰め寄ってご自慢の拳を振るってきた。
へぇー、なかなか連携が取れてるな。この拳闘士も結構強いな。まあ、人間にしてはだけど。
繰り出される拳や蹴りを紙一重で躱したり、盾や腕でいなす。一向に自分の攻撃が当たらないことに焦りを覚えてきたフーンは仲間に向かって叫んだ。
「おい魔法はまだか!」
「今ちょうど詠唱が終わった! 避けろ!」
コーシはフーンが大振りの一撃を振るい、離脱した直後キンーチャックと共に魔法を放ってくる。
「氷よ! 彼の者を凍らせ給え!【氷の棺】!!」
「光よ! 彼の者をその輝きと共に焼き貫け!!【一条の光線】!!」
「!?」
周囲の空気がピキピキと音を立てたと思った瞬間右手を前に突き出した俺を空間ごと凍結させる。
凍りついた直後、俺に向かって放たれた光の線が心臓めがけて物凄い速度で突き進んできた。
「ハハハ! 口ほどにもねぇ、そのまま死にやがれ――」
「ギャッ!」
ワルスの哄笑が響きわたったその時、その後ろに護られるようにして立っていた聖職者の眉間を一条の光が貫く。
短い悲鳴を上げ眉間を貫かれた男はそのまま地面に仰向けに倒れ、2度と起き上がることはなかった。
経験値を62手に入れました。
スキル【光魔法Lv.5】を習得しました。
スキル【聖魔法Lv.4】を習得しました。
スキル【回復魔法Lv.6】を習得しました。【回復魔法Lv.6】は【回帰魔法Lv.2】に統合されました。
スキル【最大MP上昇Lv.4】を習得しました。【最大MP上昇Lv.4】は【最大MP超上昇Lv.3】に統合されました。
スキル【魔仙Lv.4】を習得しました。【魔仙Lv.4】は【魔神Lv.3】に統合されました。
自分達の勝利が確定したと思った瞬間に起こった仲間の死という想定外の出来事に流石のワルスも動揺を隠せずにいた。
「な……何が起こったんだ! なぜ【一条の光線】がキンーチャックの頭を貫くんだ! 【氷の棺】は光を反射なんてしないはず――な……なんだ! なんで奴の前に盾があるんだ! さっきまであんなものはなかった筈!」
ワルスが悲鳴のような叫びをあげる中、その目の前にある氷の棺が最初は小さく、そして次第に大きくなり、最後はガラスの砕けるときのような音を立てて完全に砕け散った。
「ふぃー、さてこんなもんか。多少は遊べるかと思ったけどやっぱりお前等程度じゃつまらねぇな。もういいや、さっさと死んで俺の糧になれ。【グラビトン】」
ピシャっ! と水風船が割れるような音がなったと思った瞬間魔導師と拳闘士の居たはずの場所には真っ赤な水溜りが出来上がっていた。
経験値を158手に入れました。
スキル【火魔法Lv.5】を習得しました。【火魔法Lv.5】は【火魔法Lv.6】に統合されました。レベルアップしました。
スキル【氷魔法Lv.5】を習得しました。
スキル【最大MP上昇Lv.5】を習得しました。【最大MP上昇Lv.5】は【最大MP超上昇Lv.3】に統合されました。
スキル【魔仙Lv.5】を習得しました。【魔仙Lv.5】は【魔神Lv.3】に統合されました。
スキル【拳闘術Lv.6】を習得しました。
辺りに一気に広がった血の臭いと何が起こったのかわからない恐怖に木の上にいた狩人は足を滑らせそのまま落下した。
落ちた瞬間骨の折れるような音が聞えてきたので足が折れたのだろう蹲って呻いている。
そしてワルスは何が起こったかわからない、そしていつ自分が同じ目にあうか分からない恐怖で今度こそ完全にパニックに陥った。
「ななな、なんなんだお前はよー!! いったいい何しやがったんだ!! そんなことより……頼む!! 見逃してくれ!! 俺はまだこんな所で死んでいい人間じゃない!! 頼む!! 金ならいくらでもやるから!!」
「惨めな命乞いだなぁ。お前今まで散々好き放題に奪って犯して殺してきたんだろ? それで命乞いとかふざけてんのか?」
俺の言葉に更に顔を青くしながら震えるワルスが俺の後ろを見た瞬間震えた顔から一転口角をあげ笑みを浮かべた。
「お願いします!! 命だけは――って死ねぇ!!」
ワルスの叫びを合図にするかのように後ろから今まで消えていた暗殺者が襲い掛かってきた。
俺の首を抉ろうと短剣を横に一閃するも斬った感触がないことに気がついた。
不思議に思った暗殺者は自分の右手を見るがそこにあるはずの物がないことに気がつく。
「お探しのものはこれか?」
俺が手に持っていた物を放り投げて渡してやると、暗殺者は受けとろうとしたが失敗し、地面に落としてしまう。
地面に落ちたものを確認するとそれは――自分の右手と左手だった。
「ぎゃぁぁぁぁあぁぁぁあぁあぁ! おお、俺の手がぁぁぁ!!」
気がついた瞬間に襲い掛かってきた激痛に転げまわる暗殺者。鬱陶しかったので両脚を斬り落とし傷口を焼いて気絶させた。
「で、お前の切り札はこうなった訳だが……次はお前の番だな?」
「ひぃぃぃ!! ゆ、許してくれぇ!! もう2度とお前達には手を出さないと誓う!! だからお願いします!! 殺さないで!!」
尻餅をつき、股間を暖かいもので濡らし、顔面を涙と鼻水でグチャグチャにしたワルスは再度の命乞いに腐心していた。
「お前はさ、街で女を攫っては好き放題に犯しては抵抗してきた男を殺してきたんだろ? 当然命乞いやら何やらしてきた人間は居たはずだ。それにお前さっき俺に向かって言ったよな? 死に掛けの俺の前で俺の嫁達を犯すって。そこまで言っていてなお見逃してもらえると思ってるのか?」
「お……俺を殺したら領主が敵に回るんだぞ!! それでもいいのか!? お前や女達の逃げ場なんてなくなるんだぞ!!」
「お前何か勘違いしてないか? 証拠を残す気はさらさらないし、それに領主が敵になろうが知ったことか。どうせお前みたいに悪事ばっかり働いてるんだだろ? だったら殺すのに抵抗は一切無いな」
剣を構えて1歩踏み出すとワルスは尻餅をついた体勢のまま後ろに下がって何とか距離を取ろうとする。
そしてそのまま下がり続けると背後の木にぶつかり何度も振り返るがそれ以上後ろに下がることが出来ず更にパニックに陥った。
「ひぃぃぃ!! 来るな!! 来るなぁ!!」
「それにもう1つお前は勘違いをしている。お前は俺が直接殺すことはしない」
「へ――」
ザン!! と音がした瞬間ワルスの両脚は切断され宙を舞っていた。
「――――――――――――!!」
声にならない悲鳴を上げのたうち回るワルス。そんな様子を見ながら周囲を【気配察知】で確認すると目当ての魔物が複数近づいてくるのがわかった。
「こんな森の中で大量の血が流れたんだ。その臭いにつられて魔物がやってくるだろ。お前等は生きたままそいつ等に食われて死ねよ」
「ま、待って――」
「いい加減諦めて今まで殺してきた人達に詫びながら死ね」
俺は暗殺者と狩人をワルスの近くに投げると俺は木の上に飛びあがってそのまま【気配遮断】で隠れる。
そして下を覗いていると3人が迫り来る狼達から少しでも逃げようともがいていた。
「来るな!! 来るなぁ!! 土狼風情が! 俺を誰だと思ってる! この辺り一帯を治める領主の息子ワルス様だぞ! ひっ! 来るな! あっちへ行け!」
「やめろ! やめろ! こっちに来ないでくれ!!」
「嫌だ嫌だ!! 死にたくない!! 俺はまだ死にたくない!!」
そしてついに10頭以上の土狼がまともに動けないでいるワルス達に襲い掛かった。
普段の狼達なら首に噛み付いて息の根を止めてから捕食するのだろうが、今回は相手が相当弱っているのを理解しているのかまず周りで気絶しているノポン達を食べる。そして食べている最中にも数を増していく狼はノポン達を食べ終わると次は斬りおとされた手足を食べワルス達を精神的に追い詰めていく。
へぇー、土狼ってこんな習性があったのか。あ、ワルス達全員漏らしてやがる。
切断された手足を食べつくした狼達はワルス達を全員で取り囲み、体の端から徐々に食べ始めた。
「いだいいだい! やめろぉ! 食うなぁ! 食べたいでくれぇ!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「ひはははは! 俺の手が食われてる! あはは! 足もどんどん食われてる! きははははははははははははは!」
狼に食べられながらワルスは狼に懇願し、暗殺者はただただ苦痛に叫び声を上げ、狩人は狂ったように笑い続けていた。
そしてそれは捕食され続けた3人の命の灯火が消えるまで続いていた。
ワルスと愉快な仲間達は凄惨な末路を辿りました。一瞬で死ねたキンーチャック、フーン、コーシはまだ幸せだったのでしょう。
いつもお読みいただきありがとうございます。
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