32話 3人組に絡まれたようです
お約束の主人公絡まれ事案発生です。
「さて、それじゃあさっそく土狼でも乱獲してきますか」
冒険者ギルドを後にした俺達は広い通りを歩き、先ほど入ってきた街の門を目指して歩いていた。
通りの左右には露天が並び、果物やら野菜等の食材から小さい置物や装飾品等他の街で生産されたであろう物が売られていた。
客を呼ぶ声が辺りから聞えてきて活気の良い街だということがわかった。
「入ってきた時は気にしなかったですけど、こうしてみると賑やかな街なんですね」
「がぅ、私にはちょっとうるさいぞ」
辺りをきょろきょろ見て、楽しそうに笑いながら歩いているソーラとは裏腹に、シリルは少しぐったりした感じで歩いていた。
頭の上にぺたんと倒れた狼耳が幻視できる気がする……。
のんびりと周りを見ながら歩き、ようやく門が見えてきた時、3人の男達が現れ俺達の前に立ち塞がり声を掛けて来た。
「よぉーうにいちゃん、いい女連れてるじゃねぇか。お前には勿体ねぇよ。怪我したくなきゃ俺達に譲れや」
3人組の真ん中のノッポがソーラ達を舐めるように見てから俺に恐喝紛いのセリフを吐いてきた。
残りの2人、チビとデブは厭らしい笑い声をあげながら同調している。
「は? 何だお前ら。嫌に決まってるだろーが。てか彼女達は物じゃねぇ、譲れとか言ってる奴に、はいどうぞなんていうと思ったのか?」
「おいおい、随分と威勢がいいじゃねぇか。女の前だからって調子に乗ってると痛い目に会うぜ? なぁねーちゃん達、こんなひょろいガキなんざほっといて俺達と行こうや。見たところ冒険者なんだろ? 俺達とパーティ組もうや、いい思いさせてやるぜぇー」
下卑た笑みを顔に浮かべながらソーラ達に提案してきた。
「お断りします」
「嫌ですねぇ~」
「がぅ、目障りだ」
今にも涎垂らして下心ありありですって感じの3人に向かって辛辣な返事をする3人。
その返答を聞いたノッポ、チビ、デブは顔を引きつらせプルプル震えながら立っていた。
「ほ、ほーう。俺達の誘いを断るとはいい度胸してんじゃねぇか。俺達はこれでもDランクの冒険者だ。そっちのランクは?」
「Gランクだ」
「ぎゃーはっはっはっ!! 聞いたかよお前等、Gだとよ! さっきの俺の提案に従ってれば痛い目に会わなくて済んだのになぁー。 女の方も俺達に恥かかせたんだ、優しくしてもらえると思うなよ!」
俺のランクを聞いた途端3人が大笑いし始め、武器を構えた。
周囲の人達が一斉に逃げ、俺達の周りにぽっかりと空白が出来上がった。
「男は殺さない程度に可愛がってやれ! 女は間違っても顔に傷付けるなよ。楽しんで飽きた後売るときに値段が下がる!」
3人の男達が一斉に俺に襲い掛かってきた。
ノッポは長剣を、チビは短剣を、デブは小さい子供程の大きさの棍棒を振り下ろしてきた。
「下がってろ」
ソーラ達を下がらせると俺は武器も抜かずに拳を握り構える。
「武器も抜かずに何しようてんだぁー! くたばりやがれー!」
ノッポが長剣を袈裟に振り下ろしてくる。
俺は体勢を低くし、右手の甲を長剣の腹に当て剣戟を受け流す。
そしてノッポが体勢を崩した瞬間残った左の拳を突き出し、鳩尾を打ち抜いた。
「何っ!! ぐぼぁ!!」
吹き飛ばされたノッポから即座に視線を外し立ち上がる、そしてチビから顔に突き出された短剣を避けるとお返しとばかりに顔面を殴り飛ばした。
悲鳴を上げる暇もなく吹き飛ばされノッポに激突するチビ。
「よくもアニキをー!!」
そんな2人の仇討ちかのようにデブが棍棒を振り下ろしてくる。
「こんなもんか?」
「なに!!」
振り下ろされる棍棒を俺は片手で受け止める。少し力を入れるとメキョっと音がして棍棒に俺の指がめり込んだ。思っていたよりも弱い衝撃に肩透かしを受け、つい本音が口からこぼれるとそれを聞いたデブは激昂し、顔を真っ赤にして再び棍棒を振り上げようとする。
「な、動かねぇ!? こいつっ放しやがれ!!」
棍棒が俺に握られているためびくともしない状況に徐々に焦りながらも何とか棍棒を俺の手から離そうと必死に力を入れてくる。
「そんなに放して欲しいなら放してやるよ」
「え!? うわあ!」
急に棍棒を放され、勢い余って後ろに踏鞴を踏むデブ。
「そら、こいつはおまけだ!」
「ひっ! でぶーーーー!!」
力一杯デブのがら空きになった腹を殴りつける。
面白い声をあげながら放物線を描くようにして飛んで行き、そのまま重なり合うようにして倒れているノッポとチビの上に落っこちた。
ゲフッと3人組の方から声が聞えたが気にせず振り返るとソーラ達を促して再度門まで歩き始めた。
周囲から拍手が聞えてきたので愛想良く手を振り、倒れている男達の横を通り過ぎ門まで辿り着いた。
「来て早々絡まれるとは難儀だな。それで、冒険者登録はしてきたのか? それならギルドカードを見せてくれ。ああ、魔力を通して名前も出してくれよ?」
「わかった。これでいいか?」
4人がそれぞれ先ほど受け取ったばかりのギルドカードに魔力を通して名前を浮かび上がらせる。
「シーツァにソーラにアイナにシリルだな。よし大丈夫だ。ほら、銀貨4枚返すから、仮の身分証も渡してくれ」
言われて今まで存在を忘れていた仮の身分証を4枚兵士に返した。
「それじゃあ改めて、ウーフツの街へようこそ。これから討伐に行くのか? まあ、さっきの動きを見てればFランクの依頼の魔物なら大丈夫だとは思うが、気をつけていけよ」
「ああ、いろいろありがとうな。行ってくる」
兵士に挨拶をし門をくぐると俺達は始めての討伐依頼をクリアするため、土狼を探しに行った。
やっぱり主人公に絡んでくるザコの噛ませ犬といえばチビデブノッポの3人組と相場が決まっていると思います。
彼らはもう一回登場します。
いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。
徐々に増えていくブックマークや評価がとても嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。