30話 街に到着したようです
最近暑くなってきました。皆様は体調を崩さないよう気をつけてください。私の周囲でも風邪気味の人がいていつうつされるかと冷や冷やしています。
4/23街の名前を変更しました。
「ありがとうございました。おかげで命拾いしました」
俺達が狼を始末した後馬車に乗った男が引き返してきた。
俺達のそばにまでやってくると馬車を降り、深々と頭を下げ礼を言ってくる。
「いや気にするな。流石に見捨てるのも寝覚めが悪いからな」
「いえ、本当に助かりました。あなた方がいなければ私はあの狼達の胃袋に収まっていたでしょう。そうだ、何かお礼をしなければ。私は行商人を生業としていまして、何か御入り用な物はありませんか?」
「そうだな、物は足りているから情報が欲しい。街に行きたいんだが、どっちにどれだけ行けばどんな街があるか教えてくれないか?」
「そのような事でよろしいのですか? はい、この道を3日程歩いて行きますとウーフツという大きくはないですが小さくもない普通の街に着きます」
俺の質問に行商人は少し驚いた様な顔をしながらも快く教えてくれた。
「そうか、助かった。それじゃあ俺達は行くから。お前も気を付けろよ」
「お待ちください、流石に命を助けられた礼があれだけでは私の気がすみません。先程物は足りているとおっしゃっていましたね。でしたらこれを受取って下さい」
「いや、だから別にいいと……」
「いえ、少ないかもしれませんが助けていただいた私の気持ちです」
行商人に押し付けられた袋を覗いてみると、中には少なくない銀貨が入っているのが確認出来た。
「いいのか? こんなにたくさん」
「いいのです。命を助けられたのですからこれぐらい安い物です。ああ、そういえば名乗っていませんでしたね。私はイナーキアと申します。それでは、また御縁がありましたらお会いしましょう」
そう言って行商人イナーキアは馬車に乗り込むと最後こちらに頭を下げ、そのまま去って行った。
それを見送った俺達はイナーキアから教えてもらったウーフツの街へ向かって歩き出した。
「いい人でしたね。情報に加えてお金もくれるなんて」
「そうだな。まあ、一番欲しかった街の情報は手に入ったし、俺としてはそれだけでも良かったんだがな」
「それにしても~、銀貨かなり入っていましたね~。これなら街に着いた時に宿屋のお金に困ることはないですねぇ~」
そんな会話をのんびりと続けながら俺達は街を目指して歩き続ける。それ以降その日は特に変わったことも、魔物に遭遇することも無く順調に終わった。
翌日も翌々日も道中出会ったのは突進猪や土狼くらいで、イナーキア以降人間と出会うことも無かった。
「そろそろ昼飯にしようか」
「がぅ! その言葉を待っていた!」
昼食宣言にすでに涎を垂らさんばかりの勢いで賛成してくるシリルをソーラとアイナが宥めているのを見ながら俺は準備を始めた。
準備と言っても異次元収納から取り出した突進猪の肉を切り分け、それを【物理魔法】で浮かせて【火魔法】で焼くだけの簡単な料理だ。
それを村にいた時にもらった皿に乗せ、たまたまソーラの【道具作成】で作れることが判明した塩を振りかけて食べる。
「んー、やっぱり美味いな。臭みもないし、筋張ってもいない。噛めば肉汁が染み出してきて口の中に広がっていくな。普通野生の猪、しかも魔物の肉だから味はあんまり期待していなかったけど、まさかこんなにうまいとはな」
「がぅ、もう生のまま噛り付くとかできないぞ。シーツァが私を変えてしまった」
「確かにおいしいですね。ラービを生のまま食べてた頃が懐かしいです」
「ほんとに不思議よねぇ~。あんなに走り回って脚が発達しているのに筋張っていないなんて~」
みんなで猪の肉に舌鼓を打ちつつ食べる。あっという間に一頭食べ終わったので追加でもう一頭同じように切り分け、焼いて塩を振って食べた。
途中、臭いに釣られて狼がやってきたが即座に【土魔法】で頭を撃ち抜かれて即死した。
「よし、ごちそうさま。みんなも食べ終わったようだし、狼の死体回収したら出発するか」
「「「おー」」」
3人が声をそろえて返事をする。
そして、土狼の死体を異次元収納に放り込むとまたウーフツの街を目指して歩きだした。
そして日が傾き始めた頃、前方に石造りの壁が見えてきた。
近づいていくとだんだんと壁が高くなっていき、目の前まで来ると約4m程の壁だと分かった。
きょろきょろと壁を見ていると街の入口らしき門の前に立っている兵士らしき男が声を掛けてきた。
「おい、何をきょろきょろしているんだ。街に入るのか? それなら身分の証明できるものを見せてくれ。無ければ1人につき銀貨1枚で仮の身分証を発行するぞ」
「身分証ってなんだ?」
俺の質問に兵士は呆れたように答える。
「なんだそんなことも知らないのか。身分証は各ギルドに登録すればギルドカードが貰える。それが身分証になるんだ。仮の身分証を発行した後にギルドに登録して、ギルドカードをここで見せてくれれば銀貨は返すぞ」
「なるほど。それで、ギルドってどんな種類があるんだ?」
「この街にあるのは冒険者ギルド、商人ギルド、魔法ギルド、医療ギルドの4つだな。冒険者ギルドは依頼ををこなして報酬を得るところ。商人ギルドは商売をする上では必須だな。登録しておかないと仕入とかもかなり不便だと聞く。魔法ギルドは様々な魔法を研究する奴らが集まっている。たまに爆発とか異臭騒ぎを起こすのが厄介な奴らだ。医療ギルドは医者や回復魔法を覚えている奴、これから覚えて人を救おうとするやつが所属しているな。安い料金で怪我の治療をしてくれるから冒険者以外でも利用者が多い。とまあ、各ギルドの説明はこんなものか」
事細かに説明してくれる兵士に好感を覚えながら俺は目当てのギルドがあることに内心喜んだ。
お~、やっぱり冒険者ギルドってあるんだなー。異世界転生や異世界召喚ものだと定番の冒険者ギルドに登録できる日が来るとは……。感無量って感じだな!
「細かく教えてくれて感謝するよ。それなら俺達は冒険者ギルドに行って登録してくる。みんな、それでいい?」
「私はそれでいいですよ。やっぱり冒険者って少し憧れがありましたしね」
「私も~、いろいろと楽しみねぇ~」
「がぅ、私は問題ないぞ」
3人が賛成してくれたのを確認すると兵士に銀貨を4枚渡し、仮の身分証を受け取ると門をくぐり街に入った。
「さて、それじゃあ、冒険者ギルドに行きますか!」
ついに街に到着しました。定番の冒険者ギルドに登録するのが次回の予定です。
いつもお読みいただきありがとうございます。第2章もお約束な展開とご都合主義な展開で頑張っていきます。新しいヒロインどうしよ……。
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