28話 みんなと想いを繋げるようです
今回で第1章ゴブリンと異世界と火竜退治のエピローグになります。
次回の投稿は登場人物の紹介にしようと思っています。
4/17 ご指摘のあった誤字と称号の取得を追加しました。
「ん……あれ、ここは……」
なんだか前にも言った事のあるようなセリフと共に目を開けるとぼやけた視界が徐々に鮮明になってきた。
目の前には灰色の石で出来た天井があり、以前自分が【土魔法】で作った石の家の布団で寝ていることに気がついた。
「っ!?」
体を起こすと体中に鋭い痛みが走る。声にならない声をあげ布団に倒れこむ。
今度は痛みがあることを意識して何とか体を起こすと、不意に家の入り口からドサッと何かが地面に落ちるような音が聞えてきた。
音の方向へ顔を向けてみると、そこには体を小刻みに震わせ今にも涙があふれる寸前な顔をしたソーラが立っていた。
「シーツァ!!」
「ソーラ――って痛い痛い痛い!!」
入り口から力の限りの速さでソーラが俺の胸に飛び込んでくる。何とか吹き飛ばされずに済んだものの今だ痛む体に追い討ちを掛けるような突撃につい悲鳴を上げてしまう。
少し抗議してやろうと胸元に抱きついているソーラを見るが、体を震わせながら泣いている姿を見るとその気も失せてしまう。
「あのーソーラ? そろそろ離してもらえるとありがたいんだけど……。ソーラ? あのなんか段々力が強くなって!? あー!! 痛い!! ソーラ!! ソーラさん!!」
そろそろ離してもらおうとやんわりと声を掛けてみるが返事はなく、逆に徐々に徐々に抱きしめる力が強くなり再度悲鳴を上げる羽目になった。
「どれだけ心配したとおもってるの」
「う……ごめん。でもあの時はそれしか――」
「言い訳しない! ちょっとそこに座りなさい!」
涙声でこちらを責めるソーラについ言い訳をしようとすると、抱きしめるのをやめたソーラが怒りのオーラを発しながら座るように要求してくる。
「座れといったら正座でしょう!」
「いや、俺怪我人――」
「せ・い・ざ!」
「はい」
胡坐を掻こうとするとソーラに正座を要求される。怪我を理由にしようとしたが、ソーラの迫力には勝てず、体が痛むのを我慢して正座することになった。
「いいですか? 今回確かに危なかったです。火竜なんて4人で戦ってたら誰かしら死んでいたかも知れません。でも、それでもシーツァ1人で戦いに行くなんて無謀にも程があります。今回だって私達の援護がなかったら最後危なかったですよね? やっぱり力を合わせていかないと――。ちょっと聞いているんですか? 確かに村人を避難させる必要はあったかもしれませんがそれは村長さんに任せればよかったのであって――。シーツァ? だいたいシーツァはいつも――。」
そしてソーラの御説教は徐々に方向がズレていきながらもアイナやシリルがやってくるまでの3時間延々と続いた。
「目が覚めたようで~、よかったですねぇ~。みんな~、心配してたんですよ~?」
「ガゥ! シーツァよかった。もう起きないのかと思った」
頬に手を当てのんびりとしながらも俺の目覚めを喜んでくれているアイナと、俺に抱きついて喜びを表しているシリルに感謝と謝罪をし、気になっていたことを質問することにした。
「それで、ドラゴンを倒した後俺はどれだけの間寝てたんだ?」
「シーツァはドラゴンを倒した後、1週間ずっと寝たままだったんだよ。このままずっと目を覚まさないんじゃないかって思っちゃうぐらいピクリともしなかったんだから」
「そうねぇ~、落ちてきたシーちゃんを~、3人の【旋風魔法】で受け止めたんだけど~、ずっとぐったりしたまま動かなかったから~、ソーラなんて「シーツァが死んじゃったー!!」って~、大騒ぎだったんだよ~?」
「ちょっアイナ! それは言わない約束だったでしょ!」
アイナの突然の暴露に顔を真っ赤にして抗議するソーラ。そんな姿を抱きついてきているシリルと一緒に笑っているとソーラが目尻に涙を浮かべながら真っ赤な顔でこちらを睨んできたのですぐに笑うのを止め、明後日の方角を見ながら口笛を吹いた。
またしても飛び掛って胸元に顔を埋めてきたソーラをあやしていると、家の入り口から村長が声をかけてきた。
「おお、シーツァさん、目が覚めたのですね! これは目出度い。村を救ってくれた英雄に礼がしたいと村人達もずっとシーツァさんの目覚めを待っていたのですよ」
「いや、俺1人だけじゃない。ソーラやアイナ、シリルがいてくれたからこそ勝てたんだ。俺だけじゃ最初の魔物大行進に飲み込まれて終わっていた」
「ええ、それは皆承知しています。ですが、ソーラさん達の助力があったとはいえ、あの火竜に止めを刺す瞬間を見て、あなたに英雄の姿を重ねたのですよ。それで夕方から魔物大行進とドラゴンの討伐、そしてシーツァさんの全快を祝ってささやかながら宴を開きますのでぜひご参加ください」
「わかった。喜んで参加させてもらうよ」
俺の返事を聞くと村長は宴の準備をしに戻っていった。
村長が出て行った後、【回帰魔法】で体を治し、痛みが引いた後3人に向かって姿勢を正した。
「ソーラ、アイナ、シリル、遅くなったけど助けてくれてありがとう。3人の助けがなかったら俺はあのまま焼き殺されていた。それで痛感した。俺は弱い。だから、これからもずっと一緒にいて俺を助けてくれ。俺も全力でみんなを護るから」
3人に対し感謝の言葉と半ばプロポーズのようなセリフに途中で気がついて徐々に顔が赤くなっていくのに気がついた。
「シーツァ、私は助けてもらったときからもうシーツァが好き。だからずっと一緒にいる気だよ」
左手の薬指に装備している指輪を見せながらソーラが。
「私は~、シーちゃんのこと好きだから~、ずっと一緒にいるよ~?」
ソーラと同じく左手の薬指の指輪を見せるアイナが。
「ガゥ! 私は名前を貰ったときからシーツァの番だぞ」
首に付けている首輪を見せるようにしてシリルが。
「ありがとうみんな。俺もみんなが大好きだ!! ずっと一緒にいよう」
ソーラ、アイナ、シリルの順に唇と唇とでキスをする。3人とも顔を真っ赤にさせながらも目を潤ませていたので、俺は最低限の光を取り込めるだけの隙間を残し他を【土魔法】で塞ぎ、さらに家の周りに【旋風魔法】で音を遮断する壁を作ると3人と一緒に布団に倒れこんだ。
称号【ハーレム野郎】を手に入れた。
夕方、宴の席につやつやした顔をしたソーラ、アイナ、シリルの3人とげっそりしたシーツァが姿を現した。
主役の登場に沸きあがる村人達。そしてその日の宴は夜遅くまで村人達の楽しげな声が聞えてきた。
いつも拙作を読んでいただきありがとうございます。最後のプロポーズみたいなところがちょっと急展開だったかなと思うと共になんかあっさりしすぎてこれでいいのかと思う自分がいますが、リアルで恋人がいたためしがないのでそういった男女の機微がまったく分からないためこうなりました。
恋愛とかって難しいですね。
ここで謝辞を。皆様が読んでくださっているおかげで第1章がエピローグを迎えることが出来ました。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。