27話 再会のようです
今章のエピローグを書くつもりだったんですが、急遽変更してこうなりました。
4/17 ご指摘のあった誤字を修正しました。
「ん……ここは……?」
目を覚ますとそこはいつか見た一面真っ白で見渡す限り何もない空間だった。
目の前で寝ている俺を覗き込んでいる女神様以外は。
「お、目が覚めたみたいだね。なんかこの台詞前にも言った気がするけど、久しぶりだね武藤暁君。いや、今はシーツァ君と言った方がいいのかな?」
以前会った時と変わらない軽さで、以前にも聞いた様な台詞を口にする女神様。
「あ、駄目神様か」(あ、女神様か)
「君ねー、本音と建前が逆だよ。確かにドジってゴブリンに転生させちゃったのは悪かったと思ってるけどさ。それになんだかんだ言って今はそれなりに楽しくやってるでしょ? かわいい女の子3人も侍らせちゃって」
腰に手を当て若干ジト目になりながら俺の言葉に文句を言ってくるイリステラス。
そんな女神様の様子に苦笑しながらも心の中では転生させてくれた事に感謝しながら身体を起こし、話しかけた。
「悪い悪い、冗談だよ。何度か死にかけはしたけど地球にいた頃より充実してるし毎日が楽しいから転生させてくれたことには感謝してるし、ゴブリンに転生したのも怒ってはいないさ。ただ、ソーラ達は仲間であって恋人とかじゃないぞ。ゴブリンなんぞの恋人扱いとか彼女達に失礼だろうが」
「はぁ、まあ君がそう思っているのならそれでいいよ」
かわいそうな者を見る目で俺を見てくるイリステラスの視線に気まずくなって俺は今一番聞きたいことを問いかけた。
「ところで、何で俺はまたここに来てるんだ? もしかして俺死んだのか?」
「うん、死んだよ?」
「ファッ――」
「ていうのは冗談。プスス、引っ掛かったね。いや怒らないでよ可愛いジョークじゃないか。ここに呼んだ理由はね、単に私が暇だったのと、丁度君が昏睡状態になってるからこっちに呼び寄せやすかったからなんだ。ちょこちょこ君の様子は見てたけどすごいね。まさか転生して1年も経っていないのにドラゴンまで倒すなんて! 闘ってるときは見ててハラハラしたよ。そこでね君にご褒美を上げようと思ってこっちに呼んだんだ」
当然の死亡宣言に変な声を上げながら驚愕の表情を浮かべてる俺を指さしながら笑っているイリステラスに本気で怒ろうと思ったが、ご褒美の一言に俺の怒りは遠くの彼方へ吹き飛んで行った。
「で、ご褒美って何をくれるんだ?」
「そうだねー、取りあえず新しいスキルとステータスの機能拡張してあげるよ」
そう言うと俺に向けて両手をかざす。すると手が白く光り輝き、それに呼応するかのように俺の体も白く光り始めた。
「今君の魂に書き込んでるから少し待っててね」
そして5分程すると俺の耳に聞きなれたアナウンスが聞こえてきた。
スキル【転移】を習得しました。
ステータス機能拡張【称号】が追加されました。
称号【スキルコレクター】【竜の討滅者】【大鬼殺し】【魔物の天敵】が追加されました。
「何かいろいろ追加されたんだが……、なんだこの【称号】って」
「まぁ待って、今説明するから。とりあえず新しいスキルから説明するね。【転移】は自分が目視できる範囲と今まで行ったことのある場所に瞬間的に移動することができるよ。似たようなことは【空間魔法】が有れば出来るけどこっちはMPを消費しないのが強みかな。もちろん君が指定した人も一緒に行けるよ。次に【称号】だけど、これはその人の功績で手に入るね。【スキルコレクター】はスキル欄の整理機能が追加されるよ。そろそろ見づらくなって来たんじゃない? 【竜の討滅者】【大鬼殺し】はそれぞれ竜種や鬼種に対するダメージが大幅に上がる。【魔物の天敵】は魔物全般に対するダメージが少し上がるんだ。何か質問はあるかな?」
イリステラスの説明を聞くと俺は腕を組んで質問する内容を考える。
「なあ、【スキルコレクター】【竜の討滅者】【大鬼殺し】はいつ手に入れたか判る気がするが【魔物の天敵】はいつ手に入れたんだ? それと【称号】って俺だけが持っている物なのか?」
「とりあえず【魔物の天敵】から説明するけど、たぶん魔物大行進を全滅させたから手に入ったんだと思う。【称号】はなかなか持っている人はいないね。君が今まで知らなかったのは単に私が【称号】の機能を開放し忘れてたからなんだよ」
なるほど、と思っているとふと聞き捨てならないセリフがあることに気が付いた。
「待て、今【称号】の機能つけ忘れてたって言わなかったか?」
「あ゛、あはは、まあ気にしないで。確かに忘れてたけどさ、君が【称号】を手に入れたのって殆どが今回なんだから。【スキルコレクター】はだいぶ前から条件満たしてたけど」
しまったといった顔をしながら言い訳をしてくるイリステラス。
溜息を吐きながら彼女の言葉を遮るように「もういいよ」と言うと立ち上がった。
「そろそろ俺は戻るよ。ソーラ達も心配してくれてるだろうし」
「そうだね、付きっきりで君の看病しているよ。いい娘達だね、大事にしてあげるんだよ?」
「当然だろ。大事な仲間だしな」
「そういう意味で言ってるんじゃないんだけど……。まぁ、今は分からなくてもそのうち分かるよ。それじゃあ、今から送り届けるからその魔法陣の中に立っててね」
今度は女神が呆れたように溜息を吐くと、何かを諦めたのかそのまま俺の足元に魔法陣を作り出した。
その魔法陣は白い光を上方に立ち上らせながら次第にその光を強くしていった。
「じゃあねシーツァ君。また会える日を楽しみにしているよ」
「ああ、女神様――」
「イリスでいいよ」
「んじゃイリス、また会おうな、約束だ」
笑顔で手を振るイリスに再会を約束すると、イリスはさらに笑み強めた。
そして白い光で視界が埋め尽くされると、そのまま俺の意識は暗転した。
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回こそはシーツァ君はこってりと絞られる予定です。
ブックマークありがとうございます。徐々に増えていっているのがとても嬉しいです。