22話 新たな仲間のようです
今回シーツァが進化するはずでしたが出来ませんでした。次回こそは必ず進化させます。
土の壁を解除すると辺り一面をジャルスだったものの破片が覆っていた。アンデットになる余地すらないほどにバラバラになっていた。
ったく、辺り一面血と肉片の海じゃねぇか。血の臭いが酷すぎる。死んだ後まで迷惑な奴だな。
自分がこの惨状を作り出したことは完全に棚の上に放り投げ、【火魔法】で血と肉の海を焼き払っていく。ラービを焼いていた時とはまるで違う酷い臭いに鼻を摘みながら念入りに焼く。所謂“汚物は消毒だー!”である。
5分程焼き続け、【火魔法】を解除すると辺りは焦土と化していた。【水魔法】で鎮火した後、念の為【土魔法】で上から土をかぶせ万が一にも火事にならないように焼跡を覆った。
【火魔法Lv.4】がレベルアップしました。
【水魔法Lv.1】がレベルアップしました。
おっ、レベルが上がったな。この調子で他のスキルもレベル上げていきたいなー。
スキルのレベルが上がったのを確認すると、先の戦闘から【蜘蛛糸】で雁字搦めにされて放置されていた森林王狼の前でしゃがみこんだ。
俺が目の前にしゃがんでも唸り声ひとつあげない狼の瞳は怒りや憎しみ等の負の感情が一切見受けられなかった。
すぐに【蜘蛛糸】を解除してやると、狼は逃げるでもなく俺の前に所謂お座りの状態になり俺の事をジッと見つめてきた。
「オマエ、ナンデ人間ノカッコシテル?」
突然狼が喋ったことに驚きを隠せずにいると更に質問を続けてきた。
「ゴブリンナンダロウ? 臭イデ分カル。ナノニナンデ人間ノカッコシテル?」
「ああ、今俺はいろいろあって人間の村に居候しているからな。魔物のままだと殺されるかもしれんから見た目を変えているんだよ」
狼の再度の質問に正直に話す。俺の答えを聞いた狼は「そうか」と返すと何やら考えている感じだった。
「俺からも質問させてくれ。お前は森林王狼なのか? なんで人間の言葉を話せる?」
「私ハフォレストキングウルフデハナイ、フォレストクイーンウルフダ。変ナスキルヲ覚エタ所為デ喋レルヨウニナッタ」
心外だなという風に聞こえる回答に加え、少し引っ掛かる言葉が聞こえた気がしたので【看破】で確認してみることにした。
名前 無し ♀
種族 魔狼族:森林女王狼
状態 健康
Lv 37
HP 316/316 (+20)
MP 67/ 67
攻撃力 412 (+50)
防御力 287 (+30)
魔力 80
魔抵抗 69
速度 582 (+150)
運 55
スキル
【ジャンプLv.8】【迅速Lv.3】【剛力Lv.1】【立体起動Lv.8】【HP自動回復Lv.2】【防壁Lv.6】【気配察知Lv.5】【気配遮断Lv.5】【最大HP大上昇Lv.4】【人化】
強っ! 今まで見た中で一番強いな。なんでこんなに強いのにジャルスなんかに良いように使われてたんだか……。ん? なんだこのスキル。【人化】? これを覚えたから話せるようになったのか?
「なあ、この【人化】ってスキル覚えたから話せるようになったのか?」
「アア、ナンナラナッテミセヨウカ?」
そう言うと狼の体が光に包まれ、眩しさについ目を閉じてしまう。
やがて光が止み、目を開けてみると身長150cm程の美少女が座っていた。それも全裸で。
「!! なんで服着てないんだ! あー、取りあえずこれを着てくれ」
慌てて目を逸らしながら【特殊武具作成】で蜘蛛糸のワンピースをつくり投げつける。
「何をする! 前が見えないだろ!」
服が顔にかかりもがき始める美少女を見ると、あることを失念していた事に気が付いた。
そうか。今までずっと狼だったから服を着るって習慣が無いのか。
「それは服だ。手伝ってやるからジッとしてろ」
「ガゥ、何をする!」
若干の抵抗はあったが何とか服を着せると違和感が強いのかあちこち引っ張ったりしているが簡単に破ける様な服ではないのでひとまずは安心できた。
服を着せたおかげで目のやり場に困ることが無くなったのでよく観察してみると、かなりの美少女だと再認識した。
髪は銀髪で胸元まであるウルフカットみたいな感じで、胸は小ぶりではあるがソーラよりかは大きいことが分かる。足も長く、地球ならモデルになっていてもおかしくはないだろう。
「とりあえずお前に1つ聞きたい。お前はあのジャルスよりも強いよな? なんでいいように使われてたんだ?」
「ガゥ、寝ている私の近くに肉が放り投げられてきて、寝ぼけながらその肉を食ったら急に眠くなってきて、目が覚めたらあいつの命令に逆らえなくなってた」
羞恥の性か顔を赤くし、モジモジしながら答える。
つまりあれか? 肉に睡眠薬みたいなのが入っていてそれを食ったら寝ちゃって、寝てる間に【調教】のスキルで従属させられたわけだ。寝ぼけてたから睡眠薬の臭いにも気が付かなかった、と。
「そうか、【調教】を使われていたからジャルスの命令に従わされていたのか。それなら仕方ないな。それで、お前はこれからどうするんだ? 家族や住処はあるのか? 行くところがないなら俺達の仲間にならないか?」
「私はいままでずっと1人で生きてきたんだ。誰とも群れる気はない」
「残念だ。どうしてもならないのか?」
「くどい。私は1人で生きていける」
「俺達の仲間になるんならこれをあげよう」
「なるぞ。そろそろ1人は寂しいと思ってたんだ」
仲間に誘ってみたがあっさりと断ってきたので、俺は最終兵器の巨暴猪の肉の余りを【異次元収納】から取り出して再度仲間に誘ってみたところ先程の答えとは180度反転して仲間になることを受け入れた。
「そ、そうか。仲間になってくれるなら大歓迎だ。そうだ、名前が無いと呼ぶ時に不便だよな。どんな名前がいい?」
「あぐあぐ。名前か、お前がつけてくれるんだったらなんでもいいぞ」
肉を食べてる様を見ながら名前を考える。
そういえば今まで名前を付けるって機会が無かったからなー……、どんな名前を付ければいいんだろう……。
必死に頭を捻って考るがなかなか思いつかず、仕舞には催促され始め焦りからさらに考えがまとまらなくなっていく。
10分程唸りながら考え、ようやくいい名前が思いついたのでそれを彼女に伝えた。
「お前の名前、シリルなんてどうだ?」
「シリルか……。うん悪くない。私の名前、これからはシリルだ!」
いきなり飛びついてきてシリルに押し倒される形になってしまう。満面の笑みを浮かべながら俺の顔を犬のようにペロペロ舐め始める。
美少女に舐められ、少し気恥ずかしそうにしながらされるがままになっていると、村の入り口から俺たちを見守っていた2人がやってきて、押し倒され、顔を舐められている俺の事をソーラは冷たい眼差しで、アイナは顔は笑っているが目が全く笑っていない感じで見てきたのは言うまでもないだろう。
スキル【仲間の絆】を習得しました。
人と人との会話はすごく難しいと思う今日この頃です。
新しい仲間は少し食い意地のはった狼娘です。獣人でもないですし、ワーウルフでもないです。狼がスキルで人間になっているだけですので、モンスターな女の子なんです。
いつも拙作を読んでいただきありがとうございます。
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