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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
最終章 ゴブリンと最終決戦と生きるために強くなる
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115話 3人娘の悲しみのようです

「とりあえず全快したか。MPは食うが【超再生】は相変わらず便利だな」


 トモエの制裁によってシーツァが再びベッドの上の住人となった翌日。朝になり起きたシーツァは体の調子を確かめていた。


「ったく、あいつももう人間じゃなくて魔王になってんだから少しは手加減して欲しいぜ。体のスペックが段違いだってのに」


「それは確かにそうだけどシーツァも悪いよ? あんな鋭い槍が顔に凄い勢いで迫ったら誰でも怒るよ」


「いや、まあそれは悪かったと思うけどさ……」


 いつの間にか起きていたソーラの言葉にシーツァが頭を掻きながらばつの悪そうな表情を浮かべる。

 そんなシーツァにふよん、と擬音が聞こえてきそうなほどに柔らかいものを押し付けられた。

 そちらに視線を向けると、アイナがシーツァにしなだれかかっている姿が目に映る。


「けど~、トモエちゃんも~、全力じゃなかったでしょ~? 全力だったら~、今頃シ~ちゃん~、お墓の下よ~?」


「アイナ、確かにその通りだけど怖いこと言わないでくれよって、ん?」


 自分の下半身の辺りがもぞもぞと動いているのにシーツァが気付く。目を向けると布団からシリルが顔を出していた。

 両手にソーラとアイナという花だけでは飽き足らず前にシリルという花まで抱えているシーツァ。全員寝間着を着ているが場所が場所だけにどこのハーレムだよと言いたくなる光景になっていた。

 てかリア充爆死しろ!


「うっさいわ! 作者が地の文使って暴言吐くな!」


「急にどうしたのシーツァ」


「大丈夫~」


「がぅ、メタい発現禁止」


 シーツァ達がしばらくイチャついていると部屋の扉が開き、普段着姿のトモエがトラソルテオトルと伴い姿を現した。

 眠そうに目を擦っている姿から夜遅くまで執務を執り行っていたのは想像に難くない。


「ったくようやくおきたのね暁。おはよう、朝っぱらからハーレム野郎とはいい度胸じゃないの。私なんか昨日からの執務で殆ど寝てないってのに」


 眠気が酷く機嫌が悪いらしいトモエはイラついた声を上げると、それに伴って体から魔力が流れ出していった。


「やっと起きたってお前さんにボコられたからこうなってるんですがねぇ!?」


「それは自業自得でしょう。おはようソーラ、アイナ、シリル」


「おはようトモエ」


「おはよう~、トモエちゃん~」


「がぅ、おはようだ」


 シーツァの反論をバッサリと切り捨てるトモエ。そのままソーラ達に挨拶している姿を見て夫婦になっても手厳しい幼馴染に溜息を吐きながらシーツァが尋ねてきた用件を尋ねる。


「それで、そんな眠そうだってのにこんな朝っぱらからなんの用だよ。一緒に寝たいのか?」


「それはそれで魅力的な提案だけど今回は違うわ。シーツァ、あんたが連れてきた人間のことよ。今のところ私の亜空間で眠らせているけど何とかしなくていいの?」


「あ……」


「あんた、まさか忘れてたんじゃないでしょうね……」


「あはは……そんなまさか……。いや、忘れて無かったですよ? ほんとだよ?」


 乾いた笑い声を上げながらジト目で睨んでくるトモエから視線を逸らすシーツァ。その行為だけで自分が忘れたと言っているようなものである。いわゆる目は口ほどにものを言う。


「はぁ、まあいいわ。とりあえずあの3人を出すから、とりあえず着替えなさいよ」


「了解です」


 布団から出た4人がいそいそと着替え始める。生前と違い背も高く鍛えられた体は男らしさに溢れており、中身はともかく見た目はかなりよくなっている為かこの中で唯一シーツァのお嫁さんではない、サキュバスなのに処女のトラソルテオトルが顔を真っ赤にしながら両手で顔を隠しているがその隙間からバッチリシーツァの着替えを除いていた。

 5分と経たないうちに4人の着替えは終わり、いつもの姿になったシーツァ達。若干1名シーツァの着替えが終わってがっかりしているが、特に指摘してあげないやさしさをシーツァは持っていた。


「それじゃ出すわね」


 トモエが手を向けた先の空間が歪む。すぐに空間の歪みが元に戻ると、そこには先程までいなかったリジー、ミルカ、アルテラの3人娘が揃って寝息を立てていた。


「とりあえずは無事みたいだな。そんで、いつになったら目を覚ますんだ?」


「魔法は解除したからすぐ目を覚ますわよ。普通の人間みたいだったからかなり弱めに掛けたからね」


「ん……」


 部屋の中で眠る3人娘のうちの誰かの悩ましい声が聞こえる。

 1人が目覚めかけたのを合図にするかのように残りの2人も身じろぎを始め、やがて閉ざされていた瞼がゆっくりと開いていった。


「ここは……」


 頭がはっきりとしないのか、真面目なリジーから普段とは違うぼんやりとした声が聞こえてくる。

 手で片目を覆うように抑えながらゆっくりと体を起こすと焦点の合っていない瞳で周囲を見回し、視線がシーツァ達を捉えるとようやく意識がはっきりとしてきたのか瞳に若干不安げな色があるものの力が戻っていた。


「おはようさん。調子はどうだ? どこも痛くないか?」


「シーツァさん……。いえ、どこも痛くは無いです。それよりも私達の村はどうなったんですか!?」


「それはミルカとアルテラがちゃんと起きてから話すよ」


 リジーが両隣に寝ている2人に気がつき、名前を呼びながらその体を揺する。

 浮上し始めていた意識はリジーに揺すられる事で完全に浮上し、ミルカとアルテラも目を覚ました。


「ミルカとアルテラもおはようさん。体に異常はないか?」


「……いえ」


「大丈夫です」


 リジーもであるが、ミルカとアルテラも始めてみるトモエと意識を失う前に見た燃え盛る村の光景に最後に分かれた時からは考えられないぐらいにシーツァ達に対して警戒心を抱いていた。


「はぁ、そう警戒されると少し悲しくなるな。まあ警戒するなといわれてはいそうですかと警戒を解く奴もいないか」


 さびしそうに溜息を吐くシーツァの姿に若干心が揺れる3人娘だが、それでも最後に見た村の悲惨な光景の所為か警戒心を解けないでいた。


「教えてくださいシーツァさん。私達の村はどうなったんですか?」


 興奮が少し落ち着いたのかリジーがシーツァに猜疑心の篭った瞳で問いかける。他の2人も同じらしく、シーツァ達を疑っているようであった。


「率直に言えばお前さん達の村は全滅した。燃え盛る村で生き残りはリジー、ミルカ、アルテラ、お前さん達だけだ」


「いったい何があったんですか!? もしかしてシーツァさん達がやったんですか!?」


「私達じゃないよリジーさん。私達が村に着いた時にはもう村は燃えていて、ディーナ以外誰1人として生きてなかった」


「俺達はディーナの救援を聞いて急いで村に行ったんだ。そして燃え盛る村で瀕死のディーナを見つけ、その後元凶と戦った。後一歩の所まで俺達が追い詰められてた時お前さん達が村に帰ってきたんだ。それであいつの矛先がお前さん達に向いたからこっちに引き寄せて慌てて逃げてきたんだよ。場所が場所だけに眠ってもらってたがな。ま、信じる信じないは好きにしろ」


 シーツァとソーラの説明にリジー達が息を呑んでいるのが分かる。きっと心のどこかでは自分達が攫われているだけで、村が燃えている夢を見ていただけだと思っていたのだろう。

 しかし今の説明で村は滅びている、自分達が目にしたのは現実だったという事実を告げられ儚い希望は完全に砕かれてしまった。


「では……私達の村は……もう……」


「ああ、もうこの世から無くなった。助けられなくてすまなかった」


 頭を下げるシーツァに倣いソーラ、アイナ、シリルも同じ様に頭を下げる。

 頭を下げた姿勢のまま動かないシーツァ達。その頭の向こうで3人娘達はシーツァの言葉に偽りなど無く、村が滅びたという現実を理解すると互いに身を寄せ合い声を上げて泣き始めた。

 村や近しい人々を失った事による3人娘の泣き声と涙はシーツァの胸をきつく締め付けるのだった。

シーツァ「いきなり地の文使って罵倒してくんなよな!」

作者  「仕方ないだろ、羨ましかったんだから!」

シーツァ「だったらお前も彼女作るなり何なりすればいいだろうが!」

作者  「貴様は今全国の彼女無しの男達を敵に回した! んな事が出来たら苦労せんわっ! 年齢=彼女無しを舐めるなよ!」



はい、少々メタいシーンがありますが気にしないでいただけるとありがたいです。

3人娘は当初自称主人公に慰み者にされている予定でしたが、急遽変更し助かることになりました。

流石に名前をつけたキャラが悲惨な目にあって死ぬのはなんか後味が悪かったんです。ええ、作者の我侭ですすみません。

彼女達は次回2つの選択を迫られます。どういった選択かは恐らくここまで読んでくださっている方々には分かると思います。まあ、お嫁さんにはなりませんが……。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

ブックマークが増えて大変嬉しいです。

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