103話 海で楽しく遊ぶようです その3
海の浅瀬でトモエとイリスが互いに水を掛け合いながらはしゃいでいる。
一見普通に海水を掛け合っている光景に見えるがトモエの視線はイリスの肢体に向いており、今にも涎を垂らさんばかりになっていた。
暁の事が大好きなトモエでだがそれと同時に可愛い女の子も好きと言う性癖の持ち主であり、これからどの様な事故を装ってイリスに抱き着き体を弄ろうかと考えを巡らせていた。
「いやー、海で遊ぶなんて高校の時に沖縄に行って以来だな。流石に疲れた。よくトモエもイリスも体力が持つな」
「だね。私は海で遊ぶのなんて初めてだからちょっとはしゃぎ過ぎて疲れちゃった」
「大丈夫か?」
「うん、日本にいた頃の病弱だった体と違ってこの体は強いからね。肉体的はまだ行けるんだけど、初めての海遊びで興奮しすぎちゃって精神的に疲れただけだから」
「そうか。大丈夫ならいいんだ」
ソーラが【道具作成・改】によって作り出したビーチパラソルの陰に敷いたレジャーシートに座りながら2人で休憩しながらトモエ達を眺める。
のんびりとした時間を2人で過ごしているとそれを打ち破るようにチャーチの悲鳴が聞こえてきた。
悲鳴の方向に顔を向けるとそこには砂浜に寝転がっていたチャーチの上にどんどん砂を載せて小さな山を作っているシリルとアイナの姿だった。
「ちょ、ちょっとお2人とも! そろそろやめて下さいまし! 重い! 重いですわ!」
「大丈夫よ~、チャーチちゃんだったら耐えられるわ~」
「がぅ、もっと大きな砂山作るぞ」
チャーチの必死の懇願も空しく徐々に大きくなっていく砂の山。すでにシーツァの身長よりも高くなっているそれはいったいどれだけの重量となってチャーチに圧し掛かっているのか経験した事のないシーツァには想像もつかなかった。
唯一動かせる首を必死の表情で左右に振っているチャーチだが徐々にその勢いも弱くなっていき、やがて口からエクトプラズムの様なものを漂わせながら動かなくなった。……恍惚とした表情で。
「そうだシーツァ。私恋人や旦那様と海に行くことが有ったらやってみたいことがあったんだけど……聞いてくれる?」
「あ、ああ、俺が断るわけないだろ?」
上目づかいで聞いてくるソーラの可愛さに思わずドキッとさせられながら答えるシーツァ。
そんなシーツァの返事を聞いて嬉しそうにしているソーラは手の平にとあるアイテムを作り出した。
そう、夏の海の定番アイテムであるサンオイルを。
「こ……これをね、塗って欲しいの。いい?」
これから行われる行為を想像したのかサンオイルを手に顔を耳まで真っ赤にするソーラ。
シーツァがサンオイルを受け取ると恥ずかしそうに肩からゆっくりと白スクを脱ぎ、生まれたままの姿になってレジャーシートにうつ伏せになって寝ころぶ。
「そ、それじゃあお願いね」
長い髪を顔の横に持っていきうなじを露出させると、羞恥の為か青白い肌はうなじまで朱に染まっているのが良くわかる。
シーツァはサンオイルを手に持ちながら目の前の光景――生まれたままの姿と妙に色気を醸し出すうなじにゴクリと生唾を飲み込んだ。
「よ、よし、それじゃあいくぞ」
「う、うん」
手にサンオイルを垂らし、それを両手に馴染ませる様にしてからゆっくりとソーラの背中にオイルまみれの手を乗せる。
「ひゃう!? 冷たい!?」
「ゴ、ゴメン」
「ううん大丈夫。ちょっと驚いただけだから。続けて?」
ソーラの背中、きめ細かな肌に両手を這わせてまんべんなくオイルを塗り込む。
2次元の中でしか見た事のないシチュエーションにシーツァの中の興奮は留まるところを知らず、今は必死に鼻血を出すのを我慢している現状だった。
「ん、次は下半身もね」
横に向けた顔から濡れた瞳で紡がれる言葉にシーツァは必至に興奮を抑えながら背中からお尻へと手を這わせていく。
ソーラのやわらかくも張りのあるお尻の感触がシーツァの理性を徐々に決壊させていった。
「あ、んんっ」
時折ソーラから漏れる艶めかしい喘ぎ声とも取れる声がシーツァの耳朶を震わせ、理性決壊のタイムリミットをどんどん早めていく。
お尻から脚へと徐々に下がっていきシーツァの両手がソーラの脚にオイルを塗り終わるとゆっくりとソーラが起き上がる。
「こ、今度は前もおね――」
「あー! ソーラちゃんずるいわ! 暁にサンオイル塗ってもらうなんて、なんてうらやましいシチュエーション! 私も塗って欲しいし私もソーラちゃんに塗りたかったわ!」
勇気を振り絞ってシーツァに前も塗ってと言おうとした時、先程までイリスと浅瀬で戯れていたトモエが目ざとくシーツァとソーラの行為を見つけたかと思うと一瞬のうちに姿を現した。
対してイリスは突如いなくなったトモエを探して右往左往しているがトモエが気にしている様子はない。
「さあ暁! 私にもオイルを塗りなさい! 前も後ろもね!」
見た目は可憐な小学生のような体型をしているトモエだが、実に男らしく水着を脱ぎこれまた生まれたままの姿になると、先程のソーラと同じようにうつ伏せになる。
幼馴染のいつも通りの行動に溜息を吐きながら笑いそのスベスベの背中にオイルを塗ろうと手を伸ばすと不意にシーツァの背中にふんわりとした幸せの感触がやってきた。
「シーちゃん~、それぇ~、私達にも~、やって欲しいわ~?」
「がぅ、私も頼むぞ」
「わ、私もお願いするね旦那様!」
背中の感触と声に反応してシーツァが振り返ると、そこにはシーツァの背中に大きな胸を押し付け若干頬を染めながら甘い声で話しかけてくるアイナ。その後ろにはシリルとやや緊張気味のイリスが立っていた。
「わかったから順番にな。それとソーラ、流石に前は恥ずかしいというかなんというか……、俺の理性が耐えられる気がしない」
「残念」
残念そうにしながらもどこかほっとしたかのような息を吐くソーラ。
そんなソーラにもう一度謝るとシーツァはトモエ達にサンオイルを塗り始めた。
それぞれが、シリルでさえシーツァが背中やお尻、脚にサンオイルを塗ると気持ちがいいのか艶めかしい喘ぎ声を上げシーツァの理性をガリガリと削っていく。
シーツァが心の中で何回念仏を唱えたのか分からなくなった時ようやく最後のイリスにまで塗り終わる事が出来た。
「危なかった……、危うく理性が完全崩壊する所だった……」
「私はそれでも良かったんだけどね」
心の中で何とか耐えきった自分を褒めているシーツァの横でトモエが自分の胸などサンオイルの塗られていない場所に丹念に塗り込みながら呟く。
トモエの言葉が聞こえたのかソーラとイリスは顔を赤くして俯き、アイナは頬に手を当てやはり少し顔を赤くしながら「あらあら」と笑い、シリルは頷いていた。
「他の人の視線もあるんだから勘弁してくれ……。それはそうとチャー――ん?」
溜息を吐きながらぼやくシーツァが何かを言おうとした時、突如大きい反応が【気配察知】に引っかかった。
砂浜に近づいているにも拘らず減速の様子が見えないそれはどんどん迫ってくる。
途中海中で警戒に当たっていた者達が止めようとしているみたいだが実力の差か大きさの差かあえなく弾かれているのが分かる。
シーツァがソーラ達に警戒を促し自らも警戒レベルを上げ迫りくる何かを待ち構えていると突如海面が大きく膨らんで弾けると、そこから巨大なクジラらしき魔物がその巨大な口を大きく開けシーツァ達へと跳びかかってきた。
「でかぁ!? 何だあれ!」
「あれはおそらくホエールシャークね。エサが魔力だからか地球にいたサメと違って魔力探知に優れているの。多分海で遊んでいた私達の巨大な魔力に引き寄せられてやってきたんだと思うわ」
「へぇ~なるほど。とりあえず【看破】してスキル確認するか。良いスキル持ってたら俺が殺して――」
とシーツァがいい終わる前に横から白銀の輝きが駆け抜ける。
白銀の輝きの正体であるシリルは大きく跳躍すると右手にシーツァお手製のガントレットを装備し構え魔力を込めた。
すると右手に装備された魔法銀のガントレットがシーツァによって付与された【体積変化】の能力でその大きさを何倍にも巨大にしていく。
「お肉!!」
シリルの気合の一言によって振り下ろされた巨大な拳はホエールシャークの頭をいとも簡単に粉砕し、頭を砕かれたホエールシャークは空中でその巨体に見合った量の血飛沫を撒き散らして跳びかかってきた勢いごと砂浜に墜落し、大量の砂を巻き上げる。
視界が元に戻る頃には砂浜に横たわる巨大な死体と、その上で仁王立ちして戦果をアピールするシリルの姿があった。
「がぅ、シーツァお腹減った。ご飯にしよう」
「あ、ああそうだな。それじゃちょっと早いけど飯にするか」
ソーラが複数のバーベキューセットを作り出し砂浜に設置する。その間シーツァがホエールシャークを解体し、ある程度の大きさに切りだすとそれを【異次元収納】に入れていく。
10分ほどでホエールシャークはきれいな骨のみの姿に変わり、【異次元収納】へと収納された。
「よーし早速焼いていきますか。おーい! お前達も全員集まってくれ! みんなで食べよう」
シーツァの声に海の家や海中で警戒にあたっていた者達が集まってくる。海の家にいた者達は調味料を、海中で警戒にあたっていた者達は魚や貝などをそれぞれ持ち寄った。
そのおかげでシーツァ達の周りには様々な匂いが広がり、その香りが食欲を刺激して口の周りから大量の涎を垂れ流しながらシリルが今か今かと肉が焼けるのを待っている。
「よーし焼けたぞー」
「がぅ、いただきます!」
シーツァの言葉が終わるや否や電光石火の速さでシリルが網の上に乗っているホエールシャークの肉を取り口に入れる。
その様子をその場にいる全員が微笑ましそうに見ながら網の上の肉を口に運んだ。
口の中に入れた瞬間肉の旨味が口いっぱいに広がる。肉を噛むと何の抵抗もなく肉が噛み切れ、その断面から更に肉汁と旨味が口の中を満たす。
濃厚にも関わらずしつこくないその旨味は飲み込んだ肉と共に体中へと浸透し力へと変換されるような錯覚をシーツァ達に覚えさせる。
全員がその味に驚き、夢中になって食べているうちにシーツァの【異次元収納】に収納されているホエールシャークの肉はみるみる内に無くなり、残り1ブロックといった所でようやく全員が満腹になり砂浜に寝転んだ。
「はぁ~美味かった。ホエールシャークってのはあんなに美味いのか?」
「いいえ、確かにおいしい事は美味しいんだけどあそこまで美味しくはなかったわね。流石に理由はわかんないわ」
そしてしばらく全員が砂浜で寝転びながら談笑し、ようやく落ち着いてきた頃にはとっぷりと日が暮れ、赤い夕陽がシーツァ達を照らしていた。
「よし、腹ん中の者もだいぶ消化できたし帰るか」
「また来ようね」
「今日は~、楽しかったものねぇ~」
「がぅ、またあの肉食べたいぞ」
「今度は暁もスク水以外の水着を用意してよね」
「海がこんなに楽しいとは思わなかったよ。また来たいね」
ソーラ達の感想を聞きながらレジャーシート等を片付ける。その間にトモエが【時空間魔法】を海の家に掛けその時間を停止させると全員でシーツァの【転移】によって魔王城へと帰還した。
そして夜。今夜は水着姿で愛し合おうとシーツァ達の部屋のベッドに集まり、いざこれからといった時にシーツァは大変な忘れ者に気が付いた。
「あ、チャーチの事すっかり忘れてた……」
一方砂浜で大きな砂山に埋められていたチャーチが目を覚ました時には周囲は完全に暗くなっており、辺りに人影は1つも見当たらなかった。
「もしかして私……忘れられてますの……?」
チャーチが目を覚ましてしばらくしてようやく迎えに来たシーツァによって救出されたチャーチは部屋に戻った後猛烈にシーツァを求めたのであった。
シーツァ「いやー、日本にいた頃は海なんか何が楽しいのかとか思ってたけどソーラ達がいたから楽しかったな!」
作者 「……」
シーツァ「どうした作者?」
作者 「こんのリア充めが! 俺は彼女いない歴=年齢で絶賛更新中だというのに!」
シーツァ「いや、書いてるのあんた――」
作者 「こうなったら次回はお前に酷い目に合わせてやるからな!」
シーツァ「ちょっ!?」
ようやくバカンスが終了しました。もうちょっと文字数のバランス考えろよと自分でも思います。
上記のやりとり通り次回はシーツァが酷い目に合います。というか合わせます。
燃え上がれ嫉妬の炎!
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