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生きるために強くなる ~だってゴブリンに転生しちゃったし~  作者: ミジンコ
最終章 ゴブリンと最終決戦と生きるために強くなる
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101話 海で楽しく遊ぶようです その1

シーツァが壊れたようにも見えますが、これが本来の彼なのです。

 【転移】を終え最初に魔族大陸へと上陸した場所から歩く事1時間弱、ようやく到着した砂浜でシーツァはソーラが【道具作成・改】によって作り出したレジャーシートの上に自らが創り出したトランクスタイプの水着を着たまま座り……現実逃避していた。

 なぜ現実逃避をしているのか、その原因はこの砂浜にあった。

 それはシーツァ達一行がこの砂浜に到着した時に遡る。


「おーようやく着いたな。ここが砂浜か……って……トモエ? あれはいったい何だ?」


「馬鹿ねー暁。海と言ったら海の家に決まってるじゃないの!」


 そうシーツァの視線の先には生前一度だけ行った事のある海で見た、海と言えばこれ『海の家』が砂浜に建っていた。それもご丁寧に看板には日本語で海の家と書かれている。

 他にも海水浴客の安全を見守る監視員の座る高い椅子もあり、一瞬日本にいるのではと錯覚してしまうほどであった。


「で、何でご丁寧に日本語で書かれた海の家がここにあるんだ?」


「何でってそれは昨日イリスちゃんに海に行こうって誘われたから昨日から突貫工事で作らせたのよ。ああ、安心して、ちゃんと海の家で食べられるようなメニューも用意してあるから」


「人員はどこから手配したんだよ……」


「それは(わたくし)から説明させて頂きますわ!」


 声のした方に目を向けるとチャーチが胸を張っている姿が目に映る。

 いくら夜に肌を重ねている間柄とはいえ無防備に強調された胸にシーツァは目のやり場に困りながらなんとか視線をチャーチに固定する。


(わたくし)の配下の中から料理が得意な者をトモエ様曰く海の家という建物で料理をする為に呼び寄せましたの。ああ、因みに全員女性ですわ。それと海の中にも私の配下が控えていますからもし魔物が寄って来たり溺れたとしてもサポートはばっちりですわよ。ああ、こちらも全員女性です」


「まあ全員女性であるというのにはグッジョブだ。他の男にみんなの肌を晒す気なんて毛頭ないからな。トモエ、とりあえず海の家って事は更衣室もちゃんとあるんだろ?」


「モチのロンよ」


「じゃあ、これからみんなに水着を渡すから着替えてきてくれ。因みに袋に入っているからどんな水着かは開けてみてからのお楽しみだ」


 全員に1つづつ水着の入った袋を配っていく。

 それぞれがわくわくしてますと顔に書いてあるのを隠すことなく袋を受け取り楽しそうにお喋りしながら海の家に歩いていく。

 1人残されたシーツァは【土魔法】を使い砂浜の砂を自らの四方を囲う壁のように展開するといそいそと水着のトランクスに履き替えた。

 男ゆえかすぐに着替えが終わり手持ち無沙汰になったシーツァはキョロキョロと周囲を見渡す。

 海の家がぽつんと立っている以外は誰の姿も見えないが、【気配察知】には海の家の中と水中に複数の気配が確認できる。これがさっきチャーチが言っていた配下なのだろう。

 景色だけ見れば地球にいた頃とさほど変わらない風景、しかし監視員席に座っている人間にはありえない魚の下半身を持つ美しい女性に水中でずっと警戒している女性達。

 段々頭が混乱してきたシーツァがとった行動は1つ。何も考えずにただボーッとレジャーシートの上に座るというもの、有体に言えば現実逃避と言うものだった。

 そしてシーツァがボケーッと座り続けてどれだけの時間が経ったのだろうか。

 考えることを止めたシーツァに時間の感覚などあるはずもなく、ソーラ達が着替えに行ってから大凡30分ほどが経過していたのだが、シーツァにはついさっきの様に感じられた。


「おーい!」


 海の家からシーツァに呼びかける女の子の声が聞こえてくる。

 そこには顔に満面の笑みを浮かべた水着姿のトモエが砂浜をシーツァ目掛けて猛然と走ってくる姿が目に映った。

 普段はポニーテールになっている真紅の髪も結び目はそのままでお団子状にまとめられており、いつもと違う魅力を醸し出している。


「おーい暁ぃー!」


 そしてトモエが徐々に近づいてくるにつれてシーツァは自分の背筋に冷たいものが奔るのを覚える。

 シーツァは気が付いた。自分の背筋を凍らせる原因に。

 トモエは笑っている。笑っているのだ。目以外は。

 そしてある程度シーツァとの距離が近づくとトモエは力強く跳躍し、両足の裏を揃えてシーツァへと向けると走ってきた勢いそのままに顔面目掛けてドロップキックを敢行した。


「イベシッ!!」


 ゴキャッ、と顔面から聞こえてはいけない音を出しながらシーツァは勢いよく砂浜の上をきりもみしながら吹き飛んでいく。

 砂浜を吹き飛び転がっていくシーツァは最後顔面を思い切り砂浜に擦り、まるでしゃちほこのような体勢になりようやく止まることができた。


「イタタ……。何するんだよトモエ」


 何とか起き上がり自分の顔面を触り無事である事を確かめながら自分の顔面に綺麗なドロップキックを決めた犯人に問いかける。

 シーツァの恨みがましい視線を平然と受け止めるトモエはズンズンと擬音を立てながらシーツァの前まで近寄ると仁王立ちの姿勢で座り込んでいるシーツァを見下ろす。

 視線を上げたシーツァの目の前にはさっきの目は笑っていないが顔は笑っていたお嫁さんの姿はそこには無く、変わりに般若がシーツァを見下ろしていた。


「何を……ですって……? 暁には心当たりが無いと?」


「あ、いや、あの、その、はい」


 あまりの圧力にしどろもどろになるシーツァ。生前のやり取りから逆らってはいけないと全身が危険信号を発していた。


「そう……じゃあ教えてあげるわ。……なんで」


「え?」


「何で私の水着がスクール水着なのよぉーーーー!!」


 そうシーツァがトモエに渡したのは学校指定の水着、所謂スクール水着だったのである。しかも旧スクというマニアックっぷり。胸元には紺色の布地に栄える白いゼッケンに『6-1 ともえ』と御丁寧に書かれているおまけ付きであった。


「いいじゃないかよく似合ってるぞ。特にそのゼッケンがぜっぺ「ふん!」ギュペッ!」


 いい笑顔でサムズアップするシーツァに対し、くるりと後ろ回し蹴りの要領で回転したトモエの足の裏がシーツァの横顔を強かに打ち付けるとそのまま頭を砂浜に押し付ける。

 それだけでは飽き足らず、トモエはその足をグリグリと動かし追撃を掛けた。

 傍から見たら小学生に手を出そうとして返り討ちにあった変質者の如き光景であるが、まああながち間違っていないのがなんともしがたいものである。


「何で異世界の海に来てまでスク水なんか着なきゃならんのよ! もちっとマシな選択は無かったの!?」


「いいじゃないか! スク水いいじゃないか! トモエみたいなかわいい女の子が着るととてもよく似合う! 発育の良い子じゃ出せない魅力がそこにはあるんだよ!」


「私の肉体年齢が下がって胸が無くなってる事への当てつけかーーーー!!」


 シーツァの頭を掴んで持ち上げると右強パンチで空中へとカチ上げる。トモエは追いかけるようにジャンプし空中で弱パンチ弱パンチ中キック弱パンチ弱パンチ中キックと空中でコンボを決めるとシーツァの頭を掴み地面へと投げつける。


「その煩悩……燃やし尽くしてあげる!」


 空中に浮かんだまま右手を天へと掲げる。すると手の平の先に小さな火の玉が生成され、それはすぐに大きさを増し、最終的に直径10mにまで達した。

 もはや小さな太陽ともいえるそれをトモエは砂浜に叩きつけられボロ雑巾になっているシーツァへ向けて放つ。


「ちょっおまっ! それはダメだろ! それはダメって……――ギャーーーーーース!!」


 ゆっくりとゆっくりとボロ雑巾(シーツァ)との距離を積める火の玉は対象へと到達し着弾した瞬間周辺の砂浜ごとボロ雑巾(シーツァ)を巨大な火柱が包み込み焼き尽くした。


「女の子のコンプレックスを刺激した報いよ。暫くその中で反省しなさい。生きていればね」


 空中から火柱とそれに飲み込まれているボロ雑巾(シーツァ)を見下ろし、まるで格ゲーの勝利台詞の様な言葉を誰に聞かせるでもなく口にする。

 その光景はまさしく魔王としか言いようのないもので、痴話喧嘩かと眺めていたチャーチ配下の人魚はボロ雑巾(シーツァ)が火の玉に呑み込まれている頃には既に自分に被害が及ばないようにと全力で見ないふりをしていた。

シーツァ「作者ぁぁぁぁぁーーーーーー!!」

作者  「なんですかいきなり」

シーツァ「お前の所為でトモエにボコられたじゃねぇか! お前の変態趣味何とかしろよ!」

作者  「何を言うんですか、作者にとって主人公とは分身の様なものですよ? 私の趣味は君の趣味だ」

シーツァ「なん……だと……」

作者  「どちらにせよ君の設定は二次元オタクなのだ。あきらメロン」


はい、本当は100話だけで水着回終わらせるつもりだったのですがまだ続きます。

トモエの攻撃が激しい気がしますが、これは異世界に来る前からのやりとりです。

シーツァもスキンシップだと分かっているので特に気にしていません。まあ、異世界に来て肉体的にも強化されたので激しくはなりましたが……。



ここまでお読みいただきありがとうございます。

ブックマークや評価大変ありがたく思います。

誤字脱字などのご指摘がありましたら遠慮なくお願い致します。

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